(CNN) リオデジャネイロ五輪最終日の21日に行われた男子マラソンで、エチオピアのフェイサ・リレサ選手が民族弾圧に抗議するポーズでゴールインして銀メダルを獲得し、これで帰国できなくなったとして政治亡命の意向を示した。
リレサ選手はエチオピアの最大民族オロモ族の出身。この日はオロモ族の団結を象徴する両腕を交差させたポーズでゴールインした。
競技後のインタビューでもこのポーズを繰り返し、オロモ族に対するエチオピア政府の弾圧に注目を集めたかったと説明。公の場でこの問題について発言したことで「私は殺されると思う」と話し、殺害や投獄の危険があるため帰国はできなくなったと語った。
既に投獄された親族もいるといい、妻と2人の子どもの身の安全が心配だと話している。
亡命先については、ビザが発給されるかどうかによって、このままブラジルにとどまるか、ケニアまたは米国へ行く可能性があるとした。
過去の五輪では1968年の大会で米陸上短距離のトミー・スミス、ジョン・カーロスの両選手が、表彰台で黒人差別に抗議するパフォーマンスを行ってメダルを剥奪(はくだつ)されたこともある。リレサ選手のメダルがどうなるかは不明だ。
オロモ族はエチオピアの人口約1億人の3分の1以上を占めていながら、長年にわたって冷遇され、最近では政府がオロモ族の農地を接収して開発を進めたことから緊張が高まっていた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体によると、全土で大規模な抗議運動を展開するオロモ族を治安部隊が武力で制圧。昨年11月以来、400人以上が殺害され、数万人が逮捕されたり投獄されたりしているという。
リレサ選手は「9カ月で1000人以上が殺害された」と訴えている。