古代仏教遺跡、中国企業の鉱山開発で破壊迫る アフガン

鉱山を見下ろす仏像。年内に始まる開発で破壊の危機にある=ブレント・ハフマン教授提供

2012.09.24 Mon posted at 13:08 JST

(CNN) アフガニスタン中部にある仏像や寺院などの貴重な遺跡が、中国企業による鉱山開発で破壊されようとしているとして、米国の専門家が遺跡の保護を訴えている。

米ノースウェスタン大学教授のブレント・ハフマン教授は、ロガール州にあるメス・アイナク遺跡のことを世界に知ってもらいたいとの思いから、2011年に同遺跡についてのドキュメンタリー映画制作に着手した。

ハフマン氏によると、メス・アイナクは巨大な壁に囲まれた仏教都市で、略奪や旧支配勢力タリバーンによる破壊を免れ、幾つもの巨大な寺院や数千体もの仏像が残っている。古代都市を見下ろす巨大な仏像の多くは金箔で覆われ、見る者を圧倒する。同地はシルクロードの重要な町として、かつてはアジアの貿易や巡礼の拠点でもあったという。

日常生活について記した未発掘の写本も大量に存在するほか、仏教建築の下には青銅器時代の遺跡が眠っているとみられることも、ここ数年の考古学調査で判明した。

しかし同地は07年に行われた入札で、中国国有の資源大手、中国冶金科工集団(MCC)が30億ドル(約2300億円)で30年間のリース権を獲得。12年12月末から開始される銅山開発により、メス・アイナクの遺跡は寺院や仏像なども含めて破壊されるという。

ユネスコの世界遺産として保護されている南米ペルーのマチュピチュ遺跡とは異なり、2600年前にさかのぼる歴史を持つ同地域には危機が迫っている。

遺跡で見つかった黄金の板で作られたブッダの頭像=ブレント・ハフマン教授提供

MCCは1000億ドル相当の銅を産出する計画で、契約を締結するまで遺跡の存在は知らなかったと説明。国際社会からの圧力を受けて09年に、発掘のため3年間の猶予期間を設けると表明したが、専門家によれば、すべてを発掘しようとすれば30年はかかる見通しだ。

残された時間はあと4カ月を切り、地元の考古学者や各国の専門家が遺跡の発掘や保護活動に当たっているが、発掘作業中に地雷が爆発したりするなど、身の危険にさらされる日々が続く。

メス・アイナク遺跡に魅了されたというハフマン氏は、「バーミヤンの仏教遺跡が破壊されたのと同様に、間もなくこの遺跡も破壊されると考えると、ひどく心が痛む。これは文化にも宗教にも一切の敬意を払わない冒とくだ」と批判。MCCも世界銀行もアフガニスタン政府も、できるだけ早く鉱山開発に着手することばかり望んでいると嘆く。

さらに同氏は、腐敗が蔓延(まんえん)しているアフガニスタンで鉱山開発によって利益を手にするのはほんの一握りの特権階級のみであり、国民が得るものは何もないと指摘。開発を阻止するための手を打たない限り、メス・アイナクは壮大な遺跡が根こそぎ破壊され、巨大な穴だらけの有害物質にまみれた地になってしまうと訴えている。

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