金総書記が激怒の新造駆逐艦損傷、造船所の主任技師ら3人を拘束

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進水式で転覆したとみられる北朝鮮の新造駆逐艦の衛星画像=22日/Airbus

進水式で転覆したとみられる北朝鮮の新造駆逐艦の衛星画像=22日/Airbus

ソウル(CNN) 北朝鮮の最新鋭の軍艦が進水式で著しく損傷したことを受け、金正恩(キムジョンウン)総書記が事故の責任が認められた人物を処罰する意向を示した件で、法執行機関が捜査のため造船所の主任技師ら3人を拘束した。朝鮮中央通信(KCNA)が報じた。

北朝鮮が今回のような不手際を認めるのは異例。KCNAによれば、21日に行われた進水式では、進水機構の不具合で5000トン級の駆逐艦の船尾が想定より早く水中に入り、船体の一部が破損して、船首が船台に残ったままになった。

金氏は進水の失敗を「犯罪行為」と糾弾。複数の国家機関による「完全な不注意」並びに「無責任」が原因だと非難した。そこには軍需工業部や金策工業総合大学、中央船舶設計局といった機関が含まれる。

衛星画像には、船体が横倒しになり、船尾が水中に沈む一方、船首がまだ陸上にある様子が捉えられていた。国営メディアは、事故の画像をすぐに公開しなかった。

海軍の専門家は、このような進水時の不具合が船舶にもたらす損傷は「壊滅的」なものになる可能性があると指摘した。

米キャンベル大学のサル・メルコリアーノ教授はCNNの取材に対し、「船が一緒に動かなければ、応力で船体が引き裂かれてしまう」と述べた。

進水式数日前の新造駆逐艦の衛星画像=18日/Maxar Technologies
進水式数日前の新造駆逐艦の衛星画像=18日/Maxar Technologies

専門家のカール・シュスター氏は、KCNAの説明を検証した後の見解として、圧力がかかって「船体がたわみ、亀裂が生じる。(ことによると)竜骨も折れるはず」と指摘。どの部位に最大の圧力がかかるかによって被害は異なるとした。

専門家は北朝鮮が過去数十年間で最も野心的な海軍の刷新に取り組んでいるとみているが、今回の進水の失敗はそうした取り組みにとっての後退を意味する。

北朝鮮は先月にも、数十年ぶりとなる新造の駆逐艦「崔賢(チェヒョン)」をお披露目していた。金氏はさらに多くの駆逐艦、巡洋艦、フリゲート艦を建造する意欲を表明していた。

米韓からの脅威が高まるなか、「新世代」の軍艦とされる崔賢は海軍の即応態勢を強化するとして国営メディアが大々的に宣伝していた。

西側の専門家からは、崔賢について、北朝鮮海軍の多くを占めている老朽化した旧ソ連時代の艦艇からの脱却を象徴するものだとの見方が出ている。詳細は判明していないものの、衛星画像や映像からは、崔賢がロシア海軍の類似の艦艇と設計の要素を共有している可能性が示唆されている。

進水式での失敗は、北朝鮮の海軍力増強の能力に疑問を投げかける可能性がある。金氏は、今回の駆逐艦損傷について、技術的な修復だけでなく、政治的な説明責任を通じても解決されると述べた。

金氏は国家の名誉に関わる問題だとし、6月下旬に開催される朝鮮労働党の中央委員会総会までに駆逐艦の修復を命じた。

KCNAは、駆逐艦の損傷が当初の想定よりも軽微だと報じた。右舷の船体に傷がついたものの、船体に穴は開いていない。一定量の海水が船尾部に流入したという。修復には10日ほどかかるとみられるという。

専門家からは、損傷の規模を考えると、金氏が定めた6月下旬の期限までに修復を終わらせるのはほぼ不可能だとの見方が出ている。

5月12日に撮影された新造駆逐艦の衛星画像/Airbus
5月12日に撮影された新造駆逐艦の衛星画像/Airbus
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