ガザが飢餓に近づく、イスラエルによる完全封鎖は３カ月目に

エルサレム（ＣＮＮ） イマン・ラジャブさんは、パレスチナ自治区ガザ地区ガザ市にあるハエだらけのテントの中に座り、何度も何度も、小麦粉をふるいにかけていた。

ごみ箱で、半分残った小麦粉の袋を見つけた。虫がわき、明らかに汚染の痕跡が残っていた。それでもラジャブさんにとっては６人の子どもに食事を与え、生き延びさせるための最大の希望は小麦粉だった。そこで、ラジャブさんはパンを焼くために、もう一度、小麦粉をふるいにかけた。

「子どもたちはこれを食べた後、吐いてしまう。においがひどいから。でも、ほかに私に何ができる。これでなければ、子どもたちに何を食べさせればいいのか」（ラジャブさん）

戦闘で荒廃したガザが本格的な、そして完全に人為的な飢饉（ききん）へと突き進むなか、子どもたちに食事を与えることに苦慮している親が何十万人もいる。ラジャブさんもそのうちの一人だ。

イスラエルは２カ月近くにわたってガザを全面的に封鎖し、人道支援物資や商業貨物を積んだトラックを１台も中に入れさせていない。イスラエルがこうした全面的な封鎖を実施した期間としては最長のものとなっている。

イスラエルは、イスラム組織ハマスに対して人質の解放を迫るため、人道支援物資の流入を阻止したと主張している。だが、国際機関はイスラエルの行動について国際法に違反していると批判している。イスラエルが飢餓を戦争の武器として利用しており、戦争犯罪に相当すると非難する声もある。

影響は明らかだ。国連世界食糧計画（ＷＦＰ）は今週に入り、倉庫が空になったと発表した。現在も炊き出しが行われている場所では、最後の備蓄を厳しく制限している。ガザの市場に残るわずかな食料は、ほとんどの人が買えない法外な値段で販売されている。複数の人々がＣＮＮの取材に対し、小麦粉１袋が１００ドル（約１万４０００円）近い値段になっていると明らかにした。

子どもの急性栄養失調の症例も急増している。これは差し迫った飢餓の兆候のひとつだ。国連によれば、３月に栄養失調と診断された子どもは約３７００人となり、２月から８２％増加した。

５歳のウサマ・ラカブくんは３月に約３．６キロ体重が減り、現在の体重はわずか９キロだという。母親が明らかにした。世界保健機関（ＷＨＯ）によれば、健康な５歳児の平均体重は約１８キロ。

ラカブくんは膵臓（すいぞう）や呼吸器に疾患を抱えており、健康を維持するには脂肪とたんぱく質を豊富に含む食事を取る必要がある。イスラエルによるガザ封鎖が３カ月目に近づくにつれて、そうした食べ物は、ほぼ完全に入手できなくなっている。

慈善団体の食料配給に列を作るパレスチナの人々＝４月２６日、パレスチナ自治区ガザ地区ガザ市/Mahmoud Abu Hamda/Anadolu/Getty Images

食料の搬送はガザのすぐ外で停止

約１年７カ月におよぶ戦争の間、ガザの食料危機に対する答えともなっていた支援団体も今では答えを見つけられずにいる。

ＷＦＰの緊急調整官は空っぽの倉庫に立ち、物資が「枯渇した」と語った。約４０万人の人々にとって最後の命綱だった炊き出しをＷＦＰが行っていたが、それも現在停止した状況にあるという。

ＷＦＰは、イスラエルがガザへの門を開くだけで、ガザの住民全員を最大２カ月間養えるだけの支援物資を搬入する準備ができていると訴える。国連パレスチナ難民救済事業機関（ＵＮＲＷＡ）によれば、支援物資を搭載したトラック約３０００台がガザ入りを待っている。ＷＦＰもＵＮＲＷＡも支援物資の搬入にはイスラエルによる封鎖の解除を必要としている。

ガザの状況が悪化するなか、イスラエルは今のところ、全面的な飢餓を回避するための何らかの行動を計画している兆候を見せていない。

フランスやドイツ、英国など欧州の同盟国は人道支援の搬入を認めるようイスラエルに対して呼び掛けを強めている。だが、トランプ米大統領はイスラエルによるガザ封鎖を支持している。

調理された食事を受け取るために集まったパレスチナの人々＝４月２４日、パレスチナ自治区ガザ地区北部/Mahmoud Issa/Reuters