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戦勝記念日で権力誇示図ったプーチン氏、孤立が浮き彫りになるばかり

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戦勝記念日、プーチン大統領が演説

(CNN) ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にとって、赤の広場で行われた今年の戦勝記念日のパレードは、歴史をかけた戦争を継続させるチャンスだった。だが結局は、地政学上の孤立を強調しただけだった。

集められた軍隊の前で演説したプーチン大統領は、ウクライナ侵攻と第2次世界大戦で払った犠牲を直接結び付けた。ロシアでは今なお「大祖国戦争」と呼ばれる戦争を生き延びた退役軍人に囲まれながら、大統領は自分こそが西側諸国の「グローバル主義のエリート集団」に包囲されたロシアを救う救世主で、庇護(ひご)者だと位置づけた。

「今日、文明社会は再び分岐点に立たされている」とプーチン氏は演説した。「またもや我が祖国に対して、真の戦いの火ぶたが切って落とされた」

ロシアには「東西いずれにも敵国はいない」としながらも、プーチン氏は闇の勢力がロシア政府に陰謀を企てているとほのめかした。

「欧米グローバル主義のエリート集団はいまだに例外論をぶち、人々を互いに反目させて社会を分断している。血なまぐさい紛争やクーデターを扇動し、憎悪やロシア嫌悪、好戦的ナショナリズムを植え付けている」「ウクライナ国民は、西側の支配者に操られた犯罪政権が引き起こしたクーデターの人質にされた。彼らの残忍で身勝手な計画の駒にされてしまった」(プーチン氏)

堂々たる軍事パレードとは対照的に、プーチン氏の孤立は深まる一方だ/Dmitry Astakhov/Sputnik/AP
堂々たる軍事パレードとは対照的に、プーチン氏の孤立は深まる一方だ/Dmitry Astakhov/Sputnik/AP

ここで説明しておいたほうがいいだろう。プーチン氏は以前から、ウクライナが正当な国家ではないという見方をしてきた――ウクライナ人とロシア人は「ひとつの民族」で、ウクライナ国家は人工国家だというのが同氏の意見だ。同氏の陰謀論的な世界観では、ウクライナをはじめとする国家は単なる属国で、米国政府が支配していることになる。もし世界的な秘密結社がウクライナ政府を裏で操っているのであれば、ウクライナにおけるロシアの「特別軍事作戦」も正当化される。

だが思い出してもらいたい。2014年、ウクライナの欧州連合(EU)加盟を支持する群衆がキーウ市内の独立広場に押し寄せ、親ロシア派の大統領を追放した暴動は紛れもなく民衆によるもので、米中央情報局(CIA)やジョージ・ソロス氏の差し金ではなかった。現在もロシア語を話すウクライナ人や、時にはロシア国籍を持つ人々さえも、ウクライナ側について戦い、命を落としている。

だが、こうした事実確認もプーチン氏には馬の耳に念仏だ。ロシアにとって、国を挙げて第2次世界大戦をしのぶことは国家宗教に限りなく近く、5月9日――1945年にロシアがナチス・ドイツに勝利した記念日――は最も聖なる日とされている。国内の群衆にとって戦勝記念日のパレードは、78年前に終わった戦争の退役軍人と現在ウクライナで行われている戦争の参加者との視覚的な類似性をもたらすものとなる。

今年のパレードの規模は例年よりも縮小された/Contributor/Getty Images
今年のパレードの規模は例年よりも縮小された/Contributor/Getty Images

国営メディアによると、9日に赤の広場で行われたパレードにはウクライナでのロシアの「特別軍事作戦」に参戦した兵士も500人以上が参加した。またプーチン氏も演説の中で、参戦者を大祖国戦争の勝利の末裔(まつえい)だとたたえた。当然ながら、ウクライナ側はこうした歴史認識の刷り込みに反論している。

ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は動画の中で、公式な戦勝記念日を5月9日から8日に変更する法案をウウクライナ議会「ベルホーブナ・ラーダ」に提出したと発言した。またロシアの攻撃を、ヒトラー時代のドイツになぞらえた。

「世界でもほとんどの国が、ナチスに対する大勝利の記念日は5月8日だ」「反ヒトラー連合が共同でもたらした勝利の悪用は決して認めない。連合国が関与せずとも勝利がもたらされたかのような嘘(うそ)を認めるわけにはいかない」(ゼレンスキー大統領)

プーチン氏が戦勝記念日のパレードを祝った同じ日、ゼレンスキー大統領は重要な来賓をキーウで出迎えた。欧州はウクライナに今後も支援を継続するという約束を引っ提げて訪れた、欧州委員会のウルスラ・フォンデアライエン委員長だ。

「ウクライナは我々欧州の価値観すべてを守るため、最前線に立っている。すなわち自由、民主主義、思想や言論の自由だ」「現代人が享受する欧州の理想のために、ウクライナは果敢に戦っている。ロシアではプーチン政権がこうした価値観を消滅させてしまった。そして今、ここウクライナでも壊しにかかっている。ウクライナが体現する成功、ウクライナが示す規範、ウクライナのEU加盟を恐れているからだ」(フォンデアライエン委員長)

ゼレンスキー大統領はフォンデアライエン委員長との共同記者会見でプーチン氏の戦勝記念日パレードに少々水を差し、金ばかりかかってなかなか進まないロシアの戦況についてふれた。

行列を先導する戦車は旧ソ連時代の戦車「T34」1両のみ/Contributor/Getty Images
行列を先導する戦車は旧ソ連時代の戦車「T34」1両のみ/Contributor/Getty Images

「(ロシア軍は)バフムートを占領できなかった」。苦戦を強いられ、広い範囲で損害を負った東部ウクライナの街についてゼレンスキー大統領はこう述べた。「ここはロシアが5月9日までに達成しようとしていた軍事作戦の最後の要衝だった。残念ながら、街はもう存在しない。すべてが完全に破壊されてしまった……だからロシアは勝利として提示できる何らかの情報を必要としている。どこかの街でも奪い取りたいところだが、それを果たせずにいる」

ロシアで毎年行われる戦勝記念日の祝典は、国威発揚も兼ねた大規模な公開行事になっている。今年のパレードではロシアの軍事力の一部が披露されたものの――S400防空システムや大陸間弾道ミサイル「ヤルス」など核兵器の一部が公開された――ロシア軍が誇る近代戦車の大行列の不在が際立っていた。

フォンデアライエン委員長のキーウ訪問で、プーチン氏が欧州や西側から孤立していることが浮き彫りになった。ロシアの戦勝記念日祝典の来賓席は、EUの制裁対象となっている大統領(ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ氏)、中央アジアの独裁者(タジキスタンのエモマリ・ラフモン大統領)、産油国の世襲君主(トルクメニスタンのセルダル・ベルディムハメドフ大統領)の姿があった。

数カ月かけてもロシアはバフムートを占領できていないとゼレンスキー氏は主張する/Adam Tactic Group/Handout/Reuters
数カ月かけてもロシアはバフムートを占領できていないとゼレンスキー氏は主張する/Adam Tactic Group/Handout/Reuters

ウクライナの戦場では、壊滅状態のバフムートでロシア軍との攻防が続いており、赤の広場での堂々たる式典とはこれ以上ないほどの対照を成している。

そうした事実は、ロシアの民間軍事組織「ワグネル」を率いるエフゲニー・プリゴジン氏の発言からもひしひしと感じられた。同氏はソーシャルメディアで、ロシアの軍指導部を痛烈に非難した。

「現在彼ら(ウクライナ軍)は、アルチェモフスク(訳注:バフムートのロシア語での呼称)方面で陣形の側面を突破し、ザポリージャで軍を再編成している。反転攻勢が間もなく始まろうとしている」。同氏は9日、ソーシャルメディアで発言した。「反転攻勢はテレビ画面上ではなく、現場で行われるときっぱり明言している」

戦勝記念日は過去の世代のものだとプリゴジン氏は続けた。

「戦勝記念日で祝うのは祖父の代の勝利だ」と同氏。「我々はまだ1ミリも勝利を獲得していない」

本稿はCNNのネーサン・ホッジ記者の分析記事です。

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