ANALYSIS

アジアの軍拡競争、制御不能に陥る危険性がある理由

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朝鮮中央通信が2022年11月19日に公表した大陸間弾道ミサイル(ICBM)とそれを視察する金正恩氏/KCNA/Reuters

朝鮮中央通信が2022年11月19日に公表した大陸間弾道ミサイル(ICBM)とそれを視察する金正恩氏/KCNA/Reuters

北朝鮮が核能力を拡大

台湾から北へ数千キロ離れた朝鮮半島では、協力に関する交渉の望みはもはや薄く、消えかかっている。

北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記は、23年から国内の核兵器保有数を「飛躍的に増加させる」よう求め、核弾頭を韓国のあらゆる場所に命中できる「超大型」移動式ロケット発射装置の部隊編成を進めている。

韓国国防研究院(KIDA)は12日に報告書を発表し、金総書記の計画は数年のうちに300基の兵器投入という形で現れるだろうと述べた。

この数字は22年からの大幅増だ。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は昨年時点で、北朝鮮が組み立て済みの核兵器22基を所有しており、さらに最大55基の核兵器を製造できる核分裂物質を持っていると推定していた。

もし300基の核弾頭を確保したら、北朝鮮はSIPRIの核兵器保有数ランキングで従来からの核保有国であるフランスと英国を抜き、ロシア、米国、中国に次ぐ第4位に浮上することになる。

こうしたことを見据え、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領も軍事力強化を宣言した。

「攻撃されても100倍あるいは1000倍の反撃を可能にする(軍事的)能力をしっかり整備しておくことが、攻撃を防ぐ上でもっとも重要な方策だ」。最近の尹大統領のこうした発言を聯合ニュースが伝えた。

大統領は韓国の核兵器保有を視野に入れた発言まで行い、韓国が「戦術核兵器を配備したり自国の核兵器を保有する」可能性を示唆した。

朝鮮半島がさらに多くの核兵器を持つことは、米国上層部が深く懸念している点だ――たとえそうした兵器が同盟国のものだとしてもだ。

核を開発すれば、韓国は1992年の「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」を順守してきたという道徳的優位性をいくらか失うことになる。一方、北朝鮮は繰り返し違反している。

米国は同盟国を安心させるべく、韓国への支援が「鉄壁」だとした上で、米軍のあらゆる軍事資産を駆使して韓国を守ると明言した。

「米国は(韓国に対する)広範な抑止力の約束を果たす上で、あらゆる防衛能力の行使もいとわない。これには核、通常兵器、ミサイルでの防衛が含まれる」。12日にオンラインで行われた米韓研究所(ICAS)のフォーラムで、米海軍作戦部長のマイク・ギルデイ大将はこう語った。

ギルデイ大将は米国の対韓支援の例として、昨年韓国の釜山港に米軍の航空母艦が寄港したことを挙げた。だが、こうした米国最強の軍艦の存在を北朝鮮の裏庭で示す行為自体が、北朝鮮からは脅威とみなされる。

こうして連鎖は続く。

とはいえ、アジアの軍拡競争が加速する中でひとつだけ確かなことがある。米国、日本、韓国はバラバラに動くのではなく、結束して関与していくだろうということだ。

岸田首相や日本の閣僚が今月ワシントンに姿を見せたことで、それは目に見える形で表れた。

「連携が密になればなるほど、我々はよりいっそう強くなる」とギルデイ大将もICASでの演説で3国の協力体制について述べた。「(これによって)潜在的な敵国が、事を起こすのは得策ではないと納得することを願う」

敵からの容赦ない圧力の前では、粘り強さが必要だと大将は続けた。

「ひるんではならない。我々全員の結束が必要な場面で、怖気(おじけ)づいてはならない」

本稿はCNNのブラッド・レンドン記者による分析記事です。

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