まるで「ビックリ箱」、ウクライナで戦うロシア軍の戦車が抱える設計上の欠陥とは

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東部ドネツク州の村の路上に佇むロシア軍の戦車の残骸/Alex Chan Tsz Yuk/SOPA Images/Sipa/Reuters

東部ドネツク州の村の路上に佇むロシア軍の戦車の残骸/Alex Chan Tsz Yuk/SOPA Images/Sipa/Reuters

「ビックリ箱」効果

ドラモンド氏によると、弾薬の爆発はロシアが現在ウクライナで使用するほぼすべての装甲車両で問題を引き起こしている。特に搭乗員3人に加えて兵士5人を輸送する歩兵戦闘車「BМD4」は、同氏に言わせると「動く棺桶(かんおけ)」であり、ロケット弾が命中すれば「全滅する」。

こうした欠陥について、西側の軍隊は1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争を通じて察知していた。当時イラク軍が配備したロシア製の「T72」戦車の多くは前述のような末路をたどった。対戦車ミサイルが命中すると、砲塔は車体から吹き飛んだ。

ロシアがT72の後継型として1992年に投入した「T90」は、装甲こそアップグレードされたものの、砲弾の装填(そうてん)システムは従来型を踏襲したため、弱点はそのまま残ったという。同じくロシア軍がウクライナ侵攻に使用する「T80」戦車も、同様の装填システムを採用している。

キーウ州の村の路上で破壊されたロシア軍の戦車を見つめるウクライナ軍の兵士/Genya Savilov/AFP/Getty Images
キーウ州の村の路上で破壊されたロシア軍の戦車を見つめるウクライナ軍の兵士/Genya Savilov/AFP/Getty Images

CNASのベンデット氏によると、上記のシステムにもスペースを節約し、戦車の車高を低くできるという利点はあった。

それでも西側の軍隊は、イラクでのT72の惨状を見てすぐに行動に移した。ドラモンド氏によると、弾薬を区分しておく重要性を学んだという。

湾岸戦争後に開発された米軍のストライカー歩兵戦闘車は、砲塔部分に乗員室がない。同氏によると、砲塔は車両の一番上に載り、すべての弾薬がその内部にあるが、もし砲塔が被弾し吹き飛んでも下部の乗員は安全という「とても賢い設計」になっているという。

米国および一部の同盟国の軍隊が使用する戦車「М1エイブラムス」はより大型で、カルーセル式の装塡を採用していない。4人目の搭乗員が壁で隔てられた弾薬庫から砲弾を取り出し、主砲へ装填する。弾薬庫にはドアが設置され、搭乗員はそのドアを開閉しながら個々の砲弾を発射していく。つまりたとえ戦車が被弾しても、砲塔内でむき出しになっている砲弾は1発のみとなる公算が大きい。

「敵弾が正確に命中すれば戦車は損傷するが、必然的に搭乗員まで死亡するわけではない」(ベンデット氏)

また打ち込まれるミサイルから生じる高温で砲弾が燃えることはあっても、爆発はしないという。

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