ANALYSIS

アフリカ諸国の一部がプーチン氏非難をためらう理由は

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ロシアのプーチン大統領(左)と南アフリカのラマポーザ大統領=2019年10月、ロシア・ソチ/Sergei Chirikov/Pool/AP

ロシアのプーチン大統領(左)と南アフリカのラマポーザ大統領=2019年10月、ロシア・ソチ/Sergei Chirikov/Pool/AP

ナイジェリア・ラゴス(CNN) 故ネルソン・マンデラ氏はかつて、西側がテロリストと見るキューバの故フィデロ・カストロ氏やパレスチナの故ヤセル・アラファト氏との関係を維持する理由を問われたとき、こう答えた。「彼らの敵が我々の敵のはずだと考えること」は誤りだと――。

この姿勢はロシアとウクライナの戦争に対するアフリカ諸国の一部の反応をおおむね象徴するものとなっている。アフリカ大陸の各地で、紛争の一方の当事者に肩入れすることで、自国の安全保障や外国投資、貿易に脅威が及ぶのをためらう国が多いように見える。

ガーナやナイジェリア、ケニアなど、ウクライナ市民や戦地を逃れる自国市民に対する攻撃を非難する国が多い一方で、一部のアフリカの重要国ははるかに抑制した対応を示している。

英イングランドのヨーク大学准講師、レミ・アデコヤ氏は、アフリカには自国が微妙な立場にあり、代理戦争に巻き込まれたくないと考えている国があると指摘する。

「アフリカ諸国が不干渉の原則を維持し、東西間の代理戦争に巻き込まれるべきではないとの強い考え方がアフリカ外交には存在している。冷戦中に代理戦争に巻き込まれたいくつかの国の例があった」(アデコヤ氏)

ロシアのプーチン大統領を敵視しない姿勢を明確にした影響力の強い人物に、南アフリカのラマポーザ大統領がいる。17日の議会演説では「我々の姿勢は非常に明確だ。我々がロシアに対して敵対的な姿勢を取るべきだと主張する人々もいるが、我々が選んだアプローチは対話を行うべきと主張していくことだ」と述べた。

南アフリカは当初、ロシアにウクライナからの軍の即時撤退を求める声明を発表したが、その後戦争の責任について、北大西洋条約機構(NATO)が玄関先でウクライナ加盟を検討したことにあるとしている。ロシアはウクライナのNATO加盟に反対している。

ラマポーザ氏は「もしNATOが、東方への拡大がより大きな地域の不安定を招くとの内部の指導者や当局者からの長年にわたる警告に耳を傾けていれば、この戦争は回避できたはずだ」と語った。

同国のズマ前大統領も先ごろ、ロシアは「挑発を受けたと感じた」との声明を発表した。

ズマ氏は同氏の財団が発表した今月6日の声明で、「プーチン氏は西側の軍に非常に忍耐強く耐えてきた。彼はNATOのウクライナへの東方拡大への反対を鮮明にし、西側の軍の存在からロシアが受ける軍事的脅威について公言してきた。ロシアが挑発を受けたと感じたことはもっともなように見える」と述べた。

南アフリカはロシアと強い結びつきがある。ラマポーザ氏は同国が新興5カ国(BRICS)のメンバーであることから、戦争の仲介役となる打診を受けたことを書面で明らかにした。BRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカからなる。

ロシアと南アフリカの関係はアパルトヘイト(人種隔離)時代にさかのぼる。当時は旧ソ連が南アフリカやアフリカ民族会議の解放闘争を支援していた。前述のアデコヤ氏は「こうした好意は忘れられていない」と語る。

南アフリカはロシアのウクライナからの即時撤退を求める3月2日の国連決議を棄権したアフリカ17カ国の一つで、プーチン政権による2014年のクリミア半島併合時も同様の姿勢を取った。

ナイジェリアやエジプトなどアフリカの28カ国は非難決議に賛成し、8カ国は無投票だった。エリトリアは決議に反対したアフリカで唯一の国となった。

ジンバブエ外務省は、国連決議が対話に向けたものではなく「火に油を注いで、事態を複雑化させるもの」との声明を発表した。

「独裁者のリーダーシップ」

国連決議で棄権した国の多くが独裁政権だ。ニューヨーク州立大学ファーミングデール校の政治学者、イェタンデ・オダグベサンオムド教授は、そうした国々はウクライナ侵攻を決めたプーチン氏の一方的な決断を実力や自負心の誇示と捉え、称賛し協調できるものと考えていると語る。

プーチン氏支持を明確にする人物の一人がウガンダのムセベニ大統領(78)の息子であるムフージ・カイネルガバ中将だ。

ムセベニ氏は36年にわたりウガンダを圧制で統治している。カイネルガバ氏は、父親が退任する際に後継者になる意思があると目されている。

カイネルガバ氏は「(非白人の)人類の大半がウクライナでのロシアの立場を支持している。プーチン氏は完全に正しい!」とツイートした。

アフリカの一部の国々もロシアを非難するのをためらっている。「もし将来、自国で存続上の脅威や革命のような事態に直面した場合に、選択肢を残して」おきたいからだとアデコヤ氏は指摘する。

「こうした国々はプーチン氏がアサド氏をシリアの権力の座に維持している状況を目の当たりにしている。もしロシアの介入がなければ、アサド政権ははるか昔に崩壊していた」(アデコヤ氏)

アデコヤ氏はさらに、こうした国々の抑制した対応は一部、西側の偽善と受け止められるものが要因となっているとも指摘する。

国連安全保障理事会でケニア代表のマーティン・キマニ氏は、ロシアのウクライナ侵攻の直前に強烈な演説を行った。

キマニ氏はソビエト崩壊後に独立国家として登場したウクライナと、植民地独立後のアフリカ諸国の経験を比較。プーチン氏が軍を増強し、ドネツクとルガンスクの分離国家を承認してウクライナ国境の引き直しを支持している姿勢を批判した。

キマニ氏は「ケニアは力で追求するこうした切望を拒絶する」と述べ、ロシアが2地域を独立国家として承認したことに言及。「我々は死に絶えた帝国の残り火からの我々の復興を完成させなければいけない。我々を再び支配と抑圧の新形態へと押し戻すものではない方法によってだ」と語った。

キマニ氏はさらに、安保理には国際法に違反しながら何の制裁も受けていない他の国がいるとも発言した。アデコヤ氏は「彼は名指しで言わなかったが、03年にイラクに侵攻し、一度も実際にはその責任を問われていない米国と英国のことを話していた」と語る。

「世界の多くの地域で、多くの人々が、他の地域が力を得ていくことを望み、西側が世界秩序を支配する状況が終わることを望んでいる。もちろん、アフリカや世界の他の地域でまともな考えを持つ人は、ウクライナで起きていることを見ていいことだとは思っていない。だが、多くの人々はこうした偽善を目にしている」(アデコヤ氏)

結びつきを強める

近年、ロシアはアフリカの最も価値ある貿易相手国の一つとして地位を確立してきた。ナイジェリアやリビア、エチオピア、マリといった重要な提携国では軍事物資の主要な供給国となっていた。

スウェーデンのシンクタンク、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、アフリカは16~20年にロシアの武器輸出の18%を占めた。

一部の専門家からは、ロシアを支持する姿勢や、非難しないという姿勢は、西側の政治姿勢がいつも自国の思い通りに働くわけではないという、アフリカ諸国の一部にある感覚の証左だとの声が出ている。

英シンクタンクの王立国際問題研究所でロシア・アフリカ間の関係を分析するアーヌ・アデオイエ氏は「ロシアが打ち出すメッセージは、もしあなたの国が西側が近づいてくる際の温情主義的な方法に飽き飽きしたら、我々があなたの安全保障上のパートナーになろうというものだ。それは対等な関係になる」と語る。

多くの欧州諸国と異なり、ロシアはアフリカで旧宗主国ではないため、アフリカで西側の支配に挑戦しようとするソフトな力の誇示をするより広い機会を得ている。

冷戦時代、旧ソ連は多くのアフリカ諸国と顧客の関係にあった。現ロシア政府はそうした結びつきを一部復活させようと狙っている。

ロシア国営メディアのRTは侵攻前、ケニアに新しい拠点を立ち上げる計画を発表した。求人広告には、他の機関では見過ごされていた話やアフリカに対する社会通念に挑戦する話をカバーしていきたいとの記載があった。

だが、アフリカは米国や中国、ロシアといった地政学的に重要なプレーヤーの勢力争いの中心地となってきた。

アフリカ諸国の中には、こうした状況を様々な方法で利用しようとする国もある。

オダグベサンオムド氏は、タンザニアは現在の状況を自国のエネルギー産業が利益を得るチャンスだと捉えていると説明する。「タンザニアのサミア・スルフ・ハッサン大統領は、これを天然ガス輸出の市場を探す機会だと見ている。タンザニアはアフリカで6番目に多い天然ガス埋蔵量がある。アフリカの一部の国がロシアとウクライナの戦闘から経済的な影響を受けている中、新たに利益を得る方法を見つけてこの嵐を乗り切ろうとする国もある」という。

本稿はCNNのステファニー・ブサリ記者の分析記事です。

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