母国から呼んだ13人に強制労働、サモア人の「首長」に禁錮11年 NZ
(CNN) 南太平洋の島国サモアから出稼ぎ目的でニュージーランドに来た若者などの自由を奪い、強制的に働かせたとして、ニュージーランドの裁判所がサモア人の男に有罪判決を言い渡した。
13人の被害者は、家族の生活を支えるためにサモアを離れ、ニュージーランドで働いて得た収入を家族に仕送りするはずだった。
ところがニュージーランドに到着するとパスポートを取り上げられ、高い有刺鉄線のフェンスに囲まれた施設に収容された。許可を得て家族と連絡を取る時以外に外出することはできず、規則を破ると暴行を受け、傷痕が残るほど暴行されることもあった。ラジオニュージーランドによると、脱走しようとした10代の少女は、両手を縛られて車で連れ戻された。
ほとんどは果樹園で長時間、果実摘みの仕事をさせられたが、対価は支払われなかった。それを受け取っていたのが、被害者を直接的・間接的にニュージーランドに呼び寄せたサモア人の男、ジョセフ・マタマタ被告だった。
マタマタ被告は27日、人身売買や奴隷関連の罪で有罪判決を受け、禁錮11年の実刑を言い渡された。ニュージーランドで人身売買と奴隷関連の罪の両方で有罪を宣告されたのは、同被告が初めてだった。
マタマタ被告の一家は犯行を通じて30万ニュージーランド・ドル(約2100万円)の収入を得ていたとされ、被害者に対して18万3000ドルの賠償金支払いを命じられた。
サモアでは一族の首長は「マタイ」と呼ばれ、マタマタ被告もその地位にあった。自分の立場を利用して、1994年以来、家族や村の人たちをニュージーランドに呼び寄せていたとされる。
今回の事件で明るみに出た人身売買や奴隷扱いの実態は、氷山の一角にすぎないと専門家は指摘する。こうした被害は予想以上に広がっており、新型コロナウイルスの影響で職を失い、劣悪な労働条件の仕事を手にせざるを得ない人々がさらに増える可能性もあると予想している。