トランプ氏が習氏と電話会談か、今まで実現できなかった理由
(CNN) トランプ米大統領は何カ月も前から、中国との貿易戦争について、習近平(シーチンピン)国家主席との個人的な関係で事態を打開できるとの考えを示してきた。
だが今のところ、習氏との電話会談は実現できていない。
少なくとも米ホワイトハウスによれば、両首脳の間で続いているこの沈黙は今週中に破られそうだ。早ければ5日にも電話会談が開かれるとの見通しを、複数の米当局者が示している。ただし、中国側は口を閉ざしたままだ。
在米中国大使館の報道官は会談の予定についての質問に、「現時点で何もコメントすることはない」と答えた。
電話会談の予定をめぐる食い違いは、米中間で深まる溝を浮き彫りにしている。ただ双方とも、会談がいつ実現してもおかしくないとの見方では一致しているようだ。溝の原因は関税や重要鉱物、ジェットエンジン部品、半導体をめぐる争いだけではない。両首脳の流儀が大きく異なるという問題もある。
トランプ氏は自身の取引戦術を、習氏に対して直接発揮したがっている。だが首脳同士が駆け引きするという同氏のモデルは、中国当局者らによる国際交渉の進め方と正反対だ。
トランプ氏はこの春、習氏と近々話をする予定だと何度も発言していた。だが事情に詳しい関係者らによれば、中国側はトランプ氏の予測不能な動きや、外国首脳らに気まずい思いをさせたり恥をかかせたりしてきた前歴を強く警戒し、電話会談を先延ばしにしていた。
中国当局者らは、最近ホワイトハウスを訪れたゼレンスキー・ウクライナ大統領やラマポーザ・南アフリカ大統領に対し、トランプ氏が「奇襲」を仕掛けた行動にも注目。こういう類いの事態は、たとえ非公開の会話の中でも避けたいと考えた。
バイデン前政権や第1次トランプ政権の元当局者らは、習氏との会談や通話には詳細な台本があったと口をそろえる。成り行きまかせの部分はほとんどなく、タイミングや通訳などの細かい点も事前にスタッフ間で綿密にすり合わせるという。バイデン前大統領が2年前、米サンフランシスコ郊外で習氏と会談した時も、テーブルに置かれる花の種類まで双方が入念に話し合った。
米大統領との電話会談では事前に用意された論点の原稿を読み上げ、それまでの発言を一字一句繰り返すことが多いという。
この形式では、事前の合意がない項目を掘り下げることはほぼ不可能だ。実際の貿易交渉や共同声明文の作成はたいてい数週間、あるいは数カ月前にスタッフが済ませている。
これはトランプ氏が好むやり方ではない。大統領報道官が今週語ったように、同氏の好みはトップダウン方式で、政策議論は大統領専用デスクから始まるという。
当局者によれば、中国に関しては特にその傾向が強い。トランプ氏にとって、中国との間で新たな合意を成立させることは、貿易政策全般の中で重要な要素であり、政権1期目にやり残してぜひともフォローアップしたい案件でもある。1期目に第1段階の合意が成立した通商協定は、新型コロナウイルス感染拡大でとん挫していた。
トランプ氏は習氏との関係を個人的な側面からとらえている。1期目の就任からわずか76日後には、習氏がフロリダ州の別荘「マールアラーゴ」を訪れ、丁重なもてなしを受けた。
だが政権2期目になると、習氏はフロリダ州に駆け付けることもなく、つれない対応が目立ってトランプ氏をいら立たせた。トランプ氏が最後に習氏と言葉を交わしたのは、就任式前の1月17日とされる。
トランプ氏は当時、「習氏とともに多くの問題を解決していくつもりだ。ただちに取り掛かる」と述べたものの、問題解決はすぐには始まらなかった。
むしろトランプ氏の新たな関税で米中関係は急激に悪化し、報復の応酬が続いてきた。
両国は先月のジュネーブ合意で関税の大幅引き下げを約束したが、貿易戦争はその後も拡大。緊張は激化の一途をたどり、両首脳は今こそ直接対話する必要があるとの見方が強まった。
ホワイトハウスのある高官は電話会談について、「双方の通商チームが、これはトップに上げるべきとの判断を下した」と話す。
トランプ氏は会談で、中国がジュネーブ合意で約束した重要鉱物の輸出を意図的に遅らせているとの疑念に言及する見通しだという。別の当局者によれば、トランプ氏は会談で意識合わせを図るとも予想される。同氏はこれまで、貿易合意がなくて困るのは中国だと公言してきた。政権当局者の多くがそう考え、交渉では米国が有利な立場にあるとみている。
トランプ氏本人も、まもなく開かれる電話会談に向けて心の準備をしているようだ。
同氏は4日午前2時17分、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」にこう書き込んだ。「私は中国の習主席が好きだし、今後も好きでい続けるだろう。だが習氏はとても手ごわく、取引をまとめるのが非常に難しい相手だ」