米中貿易協議、トランプ大統領はいかにして切望していた勝利を手にしたのか
(CNN) トランプ米大統領による衝撃的な関税政策は、世界の金融システムを崩壊させ、米経済を不況に陥れる恐れがあった。店舗の棚が空になり、インフレが再燃するという見通しに神経をとがらせていたトランプ氏は、勝利を勝ち取るために、冷静かつプロフェッショナルな交渉人をスイス・ジュネーブに送り込んだ。
中国との間の予想していないかった劇的な緊張緩和は、米国の貿易赤字削減に向けた、十分とはいえないまでも、早急な二国間協定を生み出す可能性のある一連の貿易協議の基盤を築いた。
経済政策を助言する米国家経済会議(NEC)のハセット委員長はCNNの取材に対し、「我々は中国と事実上、新たなスタートを切った。これが今回の交渉を考えるうえで重要な視点だ」と述べた。
米中両国が2日間の協議の末、極めて高水準だった関税の税率を115パーセントポイント引き下げるという決定を下したことは、これまでの最大主義的かつ混乱を伴った政策において、最も重要な進展となった。世界の2大経済大国による事実上の禁輸措置は国内と世界経済を惨事に追い込むほどの圧力を加えていた。
今回の緊張緩和を受け、12日に世界の株式市場は急騰した。これは、トランプ政権が大幅に高い関税を維持しつつ、最大の貿易相手国に対して、提案を持って交渉の席に着くよう促す戦略をとっていることが明らかになったためだ。
今回の交渉にあたり、トランプ氏は、ベッセント財務長官とグリア通商代表部代表を交渉の責任者として派遣した。2人は市場や中国側から真剣かつ冷静で、権限が与えられた交渉人とみなされている。
こうした協議が本格化するなか、20カ国以上との合意成立に向けた継続的な取り組みは先週、英国との小規模な合意によって弾みがついた。二国間協議に関与する複数の外交筋によれば、米国との合意をまとめようと奔走するなか、英国との合意はトランプ氏が何を望んでいるのかを示すモデルになったという。
今後3カ月の交渉を左右する担当者や交渉条件、双方の明確に真剣な姿勢は、トランプ氏の顧問にとって、いずれも前向きな兆候と捉えられている。これらが実質的な成果にむすびつくかどうかは依然として不透明だが、顧問のひとりはCNNの取材に対し、「これは双方が直面していた代替案よりも、はるかに良いものだ」と語った。
結局、トランプ政権は、世界全体での10%の広範な関税と、ほぼ手つかずのままのセクター別関税という、劇的に高い関税率を何とか維持することに成功した。そして、関税がゼロに戻ることはないことを認識しつつも、貿易相手国は引き続き米国との合意を目指して準備を進めている。