ANALYSIS

【分析】米国の祝日を覆そうとするトランプ氏

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戦没将兵追悼記念日を前に星条旗を飾る米兵=2024年5月23日、バージニア州アーリントン墓地/Kent Nishimura/Getty Images

戦没将兵追悼記念日を前に星条旗を飾る米兵=2024年5月23日、バージニア州アーリントン墓地/Kent Nishimura/Getty Images

(CNN) 兵役を果たさなかったトランプ米大統領が、退役軍人よりも戦勝を祝おうとすることに驚きはないかもしれない。

トランプ氏は今月に入り、SNSに、11月11日を第1次世界大戦の戦勝記念日と宣言すると複数回にわたり書き込んだ。一方でこの日がすでに連邦の祝日である「退役軍人の日」であることには触れなかった。

トランプ氏は同様に、6月14日に米陸軍創設250年を祝うため、数千万ドルを投じる軍事パレードの開催も望んでいる。14日は偶然にも同氏の誕生日と重なる。さらに、この日は米国議会が星条旗を国旗として定めた「フラッグ・デー」でもある。

トランプ氏は最近行われたNBCニュースのインタビューで、「私はこの日をフラッグ・デーと捉えており、必ずしも自分の誕生日とは考えていない。誰かが一緒にしたのだ」と語った。

これは、国防総省が開発中の高額な新型戦闘機が「F47」でトランプ氏が第47代大統領であることと同じような偶然の一致かもしれない。

トランプ氏が第2次世界大戦の戦勝記念日として祝おうとしている5月8日(ドイツが欧州で降伏した日)が、この大戦の終結日ではないことを理解している人はホワイトハウスにいないようだ。米国が日本の広島と長崎に原爆を投下する8月まで、米国民は太平洋戦区で戦い、命を落とし続けた。

トランプ氏は、米国がこうした日を祝うことは重要だと述べた。これはロシアの戦勝記念日と酷似しており、米政府をロシア政府と同列にしたくない人にとっては、不快な発想だ。しかし一方で、同氏は完全な連邦祝日の制定を求めているわけではない。祝日は今でも多すぎると同氏は発言している(議会の法案も必要になるだろう)。

退役軍人よりも戦勝を祝うという、この修辞的な発想は注目に値する。

第1次大戦終結の翌年である1919年にウィルソン大統領(当時)が初めて式典を行った休戦記念日からは大きな変化だ。

「米国にいる我々は休戦記念日を内省することで、国のために命を落とした人々の英雄的行為に対する厳粛な誇りと、この勝利への感謝で満たされるだろう。それは、この勝利が私たちを解放し、国際連盟において米国が平和と正義への共感を示す機会を与えてくれたからだ」(ウィルソン氏)

それから数年後の23年、死の間際で衰弱していたウィルソン氏は休戦記念日のラジオ演説で、米国民が孤立主義に傾倒し、国際連盟に加盟しないことを厳しく非難した。この言葉は、トランプ氏が第2次大戦後の経済・外交秩序を混乱させている今日でも、依然として色あせない。

第2次大戦後の秩序と最も結びつきの強い大統領、ドワイト・アイゼンハワー氏は、休戦記念日を「退役軍人の日」にすべきだと宣言した人物でもある。

「自由という遺産を守るため、海上、空中、そして外国の土地で勇敢に戦ったすべての人々の犠牲を厳粛に思い起こし、彼らの努力を無にしないよう、永続的な平和を促進するという使命に改めて身を捧げよう」とアイゼンハワー氏は記した。

アイゼンハワー氏については、軍産複合体への警告を発した退任演説のほうが記憶にあるかもしれない。その内容は、アイゼンハワー氏とは異なり、トランプ氏が首都ワシントンで兵器を誇示しようとしている今だからこそ響き渡るものがある。

「我々は世界最高のミサイルを持っている」とトランプ氏はNBCに語った。「世界最高の潜水艦や戦車、武器も持っている。我々はそれを祝うつもりだ」

本稿はCNNのザッカリー・ウルフ記者による分析記事です。

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