(CNN) 米首都ワシントンの文化施設ジョン・F・ケネディ舞台芸術センターで、ドナルド・トランプ大統領が観覧を予定している6月11日に合わせ、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の出演者がボイコットを予定している。
関係者によると、トランプ氏が観覧する6月11日の公演は、少なくとも10~12人の出演者がボイコットする予定。出演者にはこの夜の公演に出演しない選択肢が与えられており、ボイコットする俳優には主役級やその他大勢役が含まれるという。
今回のボイコットは、トランプ政権と同センターの摩擦を浮き彫りにしている。トランプ大統領が同センターの再編を強行する中で、同センターは文化戦争の渦中にある。
トランプ政権が米国の文化施設や法務機関、教育機関などを大統領の意に沿う形でゆがめようとする一貫として、トランプ大統領は事実上、ケネディセンターの支配権を握った。
就任から1カ月もたたないうちに、民主党政権下で任命された複数の理事を入れ替えて理事会を刷新し、自身が同センターの理事長に就任。トランプ政権で複数ポストを兼任している側近のリチャード・グレネル氏を館長に据えた。
レ・ミゼラブルを観覧する当日には、ケネディセンターのための資金集めイベントも主催する。
トランプ氏は2016年の大統領選挙期間中、レ・ミゼラブルの音楽を選挙運動に利用していた。英紙ガーディアンによれば、ミュージカルの共同制作者は音楽の使用に反対していた。
グレネル氏はケネディセンター館長の名でCNNに寄せた声明でこう述べている。「あらゆる背景をもつ観客のために演技できるだけのプロ意識がない役者は歓迎されない」「そうしたやる気のない不寛容なアーティストは追い出して、雇うべきでない人物が誰かをプロデューサーに知らしめる必要がある。どの公演で観客が政治的に色分けされているのかを一般の人に知ってもらうことも重要だ。ケネディセンターはあらゆる政治的立場の人々が隣り合って座り、誰に投票したのかを尋ねることなく一緒に公演を楽しんでもらえる場にしたい」
ケネディセンターについてトランプ氏は、公の場でも個人的にも不満を口にしていた。
同センターでは運営体制の変更を受けてイッサ・レイ氏、ションダ・ライムズ氏、ベン・フォールズ氏といったアーティストが役職を辞任したり、同センターでのイベントを中止したりしていた。同センターの子ども向けミュージカル「フィン」のツアーなども中止になった。
「ハミルトン」のような人気ミュージカルも、トランプ体制になったことを受け、同センターで予定していた公演がキャンセルされた。
同作品は米国の建国期を描き、さまざまな人種や民族の出演者で構成されている。トランプ氏は3月に同センターを訪れた際、「ハミルトンは気に入らない」と同作品を批判。「だがいずれ大幅に改善して、素晴らしい公演をやるつもりだ」「うまくいくのはブロードウェーのヒット作だ」と語っていた。