ANALYSIS

米国のウクライナ支援、16.8兆円の資金の行方は

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訪米したゼレンスキー氏(左)をホワイトハウスの南側の柱廊前で出迎えるバイデン氏/Saul Loeb/AFP/Getty Images

訪米したゼレンスキー氏(左)をホワイトハウスの南側の柱廊前で出迎えるバイデン氏/Saul Loeb/AFP/Getty Images

(CNN) ジョー・バイデン米大統領がロシアと戦うウクライナへの揺るぎない支援を宣言してから数日後、米国内では政治的対立が資金援助を脅かしている。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領を迎えた米国議会の共和党指導部も、あまり歓迎ムードではなかった。

同じ週にはポーランドも隣国ウクライナへの武器供与を停止する意向を発表した。ポーランドがまもなく総選挙を控えていること、ウクライナ産穀物の供給を巡って欧州連合(EU)と意見が対立していることが原因だ。

米国に話を戻すと、共和党のマッカーシー下院議長が少数党院内総務だった2022年3月、ゼレンスキー大統領は米両院合同会議にリモートで参加して演説を行った。同年12月には対面で全議員を前に演説。一方のマッカーシー氏は今年3月、「ウクライナが防衛に必要な武器を供与する」ことで下院の意見は一致していると発言していた。

ところが年度内に度重なるウクライナ支援が議会承認された後、中間選挙で下院議長の座に上り詰めたマッカーシー氏は、ここへきて資金援助の是非と追加支援に疑問を呈している。

マッカーシー氏は両院合同会議を開いてゼレンスキー氏に再度発言の場を与える代わりに、非公開の会合を行った。こうした視覚効果(あるいはその欠如)は重要な意味を持つ。

議会の目下の最大争点は予算

米国政府の予算は底をつく寸前で、政府閉鎖の可能性も間近に迫っている。

今年8月、ホワイトハウスは国内の災害救済金を含む追加予算の一環で、240億ドル(現在のレートで約3兆5760億円)のウクライナ追加支援の承認を議会に求めた。国防総省がウクライナに供与する武器在庫の補填(ほてん)など、用途は多岐にわたる。

共和党が推し進めている最新の短期予算案には、災害救済金もウクライナ支援金も盛り込まれていない。だが現在も交渉は続いている。

22年の1年間に承認された一連の予算案でウクライナ支援金が承認されてきたが、いずれも共和党が下院で議席の過半数を獲得する前の話だ。その後現在まで、バイデン政権下で複数の用途に使われている。

ウクライナ支援額トップの米国

米国からウクライナに提供された資金援助の総額は、他のどの国をも大きく引き離している。

だが米国はウクライナの周辺国よりもずっと裕福なので、実際には他の国々の方がそれぞれの経済規模との比較でより大きな額を拠出している可能性も示唆される。

これまでに議会が承認したウクライナ資金援助額

国務省の監察総監室(OIG)および超党派の民間団体「責任ある連邦財政のための委員会(CRFB)」が算出した数字によると、これまで米国議会が承認したウクライナへの資金援助は総額およそ1130億ドル(約16兆8360億円)。

内訳としては国防総省経由が620億ドル(9兆2370億円)以上、国務省および国際開発庁経由が460億ドル(6兆8530億円)以上だ。

政府予算における1130億ドルという数字

22年に議会で承認された1130億ドルのウクライナ資金援助を政府の公式統計にもとづいて分かりやすく説明すると、内務省の年間予算よりもやや上回る額、あるいは商務省の年間予算をやや下回る額になる。

来年度は国防総省の予算増額が承認され、金額にして8860億ドル(約13兆2000億円)。また社会保障やメディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険)といったセーフティーネット制度の予算は毎年数兆ドル相当にのぼっている。

ウクライナへの直接軍事支援も過去最多

22年2月にロシアがウクライナに侵攻して以来、米国はウクライナへの安全保障支援として実にのべ430億ドル強(約6兆4070億円)を拠出している。

国務省によると、バイデン政権誕生から計算すれば440億ドル(約6兆5600億円)、14年にロシアが最初にウクライナの領土を占領してから数えれば460億ドル(約6兆8500億円)にのぼる。

軍事支援の具体的な使い道

3億発の弾薬や数百万発の砲弾をはじめ、大量の武器が供与されている。

国防総省と国務省は、バイデン政権下で米国が提供してきた数十億ドルの軍事支援の内訳を公開している。

具体的には、榴弾(りゅうだん)砲が198、エイブラムス戦車が31、さらに歩兵戦闘車両ブラッドレーと装甲車両がそれぞれ数百ずつ。その他ジャベリンなどの対戦車砲、最新型地対空ミサイルシステムNASAMS、防空システムHAWK、沿岸警備船舶、医療備品、暗視装置、防寒具、スペアパーツなどだ。

他国から供与されているF16戦闘機以外、ほぼすべて提供されると言っていいだろう。

非軍事的支援金の用途

CRFBの報告書によると、食糧安全対策やウクライナのインフラ修復まで非常に多岐にわたる。

資金は本来向かうべきところに向かっているのか

これまでにも汚職を示唆する声は上がっている。例えばゼレンスキー氏も、国連演説とホワイトハウスでのバイデン氏との会見に向けて訪米する直前、国防相を更迭した。

CNNのファリード・ザカリア氏とのインタビューで汚職撲滅の具体案を問われたゼレンスキー氏は、米国をはじめとするパートナー国からの資金提供と国防相の更迭は無関係だと主張した。とはいえ、こうした答えで使途のさらなる透明性と説明責任を求める米国内の声が収まることはないだろう。

資金援助の効果はあったのか

ロシアはウクライナ政府の転覆に失敗し、ウクライナもロシアから領土を奪還すべく反転攻勢を仕掛けている。進展は遅いものの、ウクライナは先週も新たに進軍し、ロシア撃退を試みている。

資金援助が途絶えれば、ウクライナが今後ロシアに対抗するのは難しくなるだろうというのが専門家の見方だ。

世論の意見は

最近行われた多くの世論調査によると、共和党はウクライナ支援の縮小を望んでいる。

全体として見れば、国民の大半はいまもなお、ロシアへの制裁やウクライナへの情報収集協力などの対応に好意的だ。

CNNがこの夏公表した世論調査によると、共和党の間でウクライナ支援に反対する声が高まっていることが判明した。議会がウクライナ追加援助を承認することに反対する意見は国民全体で見ると55%だが、共和党支持者の間では71%に跳ね上がる。もっとも国民の大多数は特定の援助には好意的で、63%が情報収集協力に、53%が軍事演習に賛成している。

この秋にその他機関が行った世論調査からも、こうした世論の変化がうかがえる。

共和党内の意見対立

今月20日に発表されたCNNとニューハンプシャー大学の共同世論調査は、ウクライナ支援に対する共和党内の意見対立を如実に物語っている。

予備選挙で共和党に票を投じると答えたニューハンプシャー州の有権者のうち、ウクライナへの軍事支援を完全に停止するべきだと答えた人は59%にのぼった一方、完全停止に反対、またはどちらでもないという回答は29%だった。共和党内で見ると、予備選挙でドナルド・トランプ前大統領を支持すると答えた有権者では、大多数にあたる84%がウクライナ支援の停止に賛成している。それ以外の共和党有権者の場合は39%で、大きな開きが見られる。

本稿はCNNのザカリー・B・ウルフ記者の分析記事です。

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