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2024年、米国は望まない大統領選を迎えるかもしれない

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バイデン大統領/Evan Vucci/AP

バイデン大統領/Evan Vucci/AP

バイデン政権の陰り

昨年夏に混乱と流血の中で米軍をアフガニスタンから撤退させ、1年前の7月4日には新型コロナウイルスのパンデミックがほぼ終息したと宣言してから、バイデン政権は1年近く下降線をたどる一方だった。いずれの出来事も、米国の問題を解決する仕事人を自認していたバイデン氏の能力に影をさした。

バイデン氏への信頼を失ったのは無党派層やバイデン氏に票を投じた共和党員だけではない。ニューヨーク・タイムズの世論調査によれば民主党内の支持も落ち込んでおり、24年に別の候補者擁立を望む民主党員は60%を超えている。変化を望む人々は、バイデン氏の年齢と手腕の2つを主な理由に挙げている。大統領にとっては危険信号だ。

民主党が中間選挙で悪い結果となれば(下院は過半数を割るというのが大方の予想だが、上院は持ちこたえる可能性がある)、24年の大統領候補に新たな顔を求める声は間違いなく高まるだろう。この数日間、CNNのエドワード・アイザック・ドベア記者が大統領に対する民主党内の懸念をまとめたところ、党内の重要人物はそろって、反バイデンの動きは24年の大統領選で共和党に勝利をもたらしかねないと警告していることがわかった。1980年、エドワード・ケネディ上院議員の出馬がジミー・カーター大統領――バイデン氏の比較対象とされつつある1期で終えた前任者――にとって致命傷となり、その後12年も共和党政権が続いたことは、改めて言う必要もないだろう。だが中間選挙で天変地異が起これば、バイデン大統領に対する圧力も爆発的に増すだろう。

ホワイトハウスは再選出馬への疑念をメディアの臆測として一蹴しているが、民主党有権者やより大勢の国民の間では、バイデン氏の年齢と見通しに関する話題が日増しに高まっている。バイデン氏が就任時に最高齢の大統領だったことからも、年齢の問題は常に頭をもたげてきた。おそらくは政治的トラブルもこうした話題に拍車をかけた。ごく最近もバイデン氏が自転車から転落したが、こうした出来事はどの大統領にも起こりうるものの、年齢ゆえに余計に大きく取り沙汰されている。それにバイデン氏が副大統領時代から、快活ではつらつとした典型的な政治家ではないことも否めない。在職中も年を取っている様子が見えた。定期的に運動し、医師からも公務に支障はないと診断されているにもかかわらず、絶えず世間の詮索(せんさく)に耐えなくてはならない。だが、それもこの仕事にはつきものだ。

民主党戦略担当者のジェームズ・カービル氏は11日、バイデン氏の今後の計画に絶えず疑問が投げかけられることをホワイトハウスも覚悟しなくてはならないとCNNの番組司会者エリン・バーネット氏に語った。1992年、ビル・クリントン氏に勝利をもたらしたカービル氏は、「これが収まることはない。ホワイトハウスはこうした話題を好んでいないだろうが、それでも対処しなければならない」と発言した。

ホワイトハウスのカリーン・ジャンピエール報道官は11日、バイデン氏は未来ではなく現在に集中しているのだと強調した。「世論調査では支持率が上がることもあれば、下がることもある」とした上で、「我々は世論調査にばかり注目しているわけではない」と述べた。

バイデン氏の形勢逆転のシナリオ

民主党有権者の間でささやかれるバイデン氏への懸念は、党、そして2020年大統領選挙の自身の勝利の中に潜んでいた分断の写し鏡とも言える。民主党予備選挙でバイデン氏が勝利をものにしたのは、穏健派のサイレント・マジョリティー(声なき多数派)と若く進歩主義的な基盤、双方の政治的代弁者として出馬したためだ。

だがこうした選挙で成功した連立は、多くの場合で統治上の責任となって表れてきている。大規模な新型コロナウイルス救済法の可決、子どもの貧困の減少、党派を超えたインフラ法案の成立など、初期には様々な功績を成し遂げたにもかかわらず、リンドン・ジョンソン時代のような前衛的改革を期待する声は、ウェストバージニアのジョー・マンチン議員をはじめとする穏健派の上院議員がバイデン氏の政策を骨抜きにしたという革新派の下院議員の激しい不満に取って代わった。可能性は少ないが、今後社会政策や気候対策政策の予算案など、中間選挙までに土壇場で大勝利をものにしようとする試みは、民主党有権者を熱狂させ、バイデン氏の見通しも改善するかもしれない。だがここ数週間、新たな火種が持ち上がりそうな兆候が見えている。そのひとつが、憲法上の中絶の権利を最高裁判所が覆したことに対し、政府の初動が遅かったことだ。保守派判事による多数意見の草案が米政治専門紙ポリティコによって公表されてから、数週間が経過していた。

中絶問題に対するホワイトハウスのつまづきは、中間選挙後に始まる再選に向けた選挙戦でバイデン陣営の運営の機敏さに疑問を抱かせる結果ともなった。現職大統領としての再選出馬には、1回目の選挙とは異なる、全く新しい困難が待ち構えている。最高司令官は国内外の政務を全うしながら、疲労困憊(こんぱい)となる全国遊説もこなさなければならない。どんな大統領でもこなすだけで精一杯だが、選挙の年に81歳をむかえる大統領ならなおのことだ。そうした理由から、バイデン氏が最終的には24年大統領選への見通しを見つめて、出馬を断念するだろうという考えが一部の戦略家の間でいまだに残っている。もしバイデン氏がジョンソン元大統領をまねているのなら、これは辛らつな皮肉となるだろう。まねた部分は国内の改革プログラムという分野ではなく、落ちゆく政治的見通しの中で1期終了後の再選を狙わないという決断になるためだ。

それでもバイデン氏には、民主党に対してすべての流れを変えるであろう切り札が残っている。トランプ氏が早々に選挙運動を展開すれば、バイデン氏は対立候補となる可能性が高い人物との強烈な対比を再び見せつけることができるだろう。民主党員のほぼ全員、そしてさらに大勢の米国人が恐怖心を抱く人物だからだ。

例えば、ニューヨーク・タイムズの調査によると、24年の大統領選挙がバイデン対トランプになった場合、民主党員の92%がバイデン大統領に投票すると答えている。

本稿はCNNのスティーブン・コリンソン記者による分析記事です。

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