米大統領専用機の彩色変更を認めず トランプ前大統領が提案も
(CNN) 米国のバイデン政権当局者は12日までに、トランプ前大統領が提案していた大統領専用機「エアフォースワン」の機体の彩色変更がもはや廃案の扱いになったことを明らかにした。
技術的な問題のほか、時間的な余裕やコスト面を考慮しての決定とした。彩色変更を受けた調査で問題点が判明したことが要因になったともした。
トランプ氏は、明るい青色の模様が入っている同機を赤、白や濃い青色を組み合わせた彩色にすることを要望。現職大統領による同機の模様替えの提案はケネディ元大統領以来のことだった。
ただ、調査で濃い青色は軍用機の性格もあるエアフォースワンの電子工学システムに支障を与えかねないことが判明。地上に待機する当局者との間で盗聴対策などが講じられた安全な通信システムの保持が可能かどうかへの懸念を抱かせてもいた。
CNNの取材に応じた米空軍の報道担当者によると、濃い色彩を大統領専用機の底部に使った場合、少数の部品に現在適用される温度の適正水準を超える恐れが指摘されたという。
新たなエアフォースワンの2機の製造は米航空機大手ボーイングが請け負い、747型機を機材にしている。ただ、この製造過程でもコストがかさむ一連の問題が噴出。同社は以前、新型コロナウイルスの感染拡大も絡み、高度な技術が求められる軍用機製造に従事出来る治安対策上の許可を得た作業員が十分に確保出来ていない現状を認めてもいた。
また、機内内装を手がける下請け業者との対立も表面化。結局、業者の交代も迫られ、製造工程がさらに遅れる事態となっていた。
この中でボーイング社のカルフーン最高経営責任者(CEO)は今年4月、総額39億ドルだった新たな大統領専用機の製造契約への調印は、被っている損失額を踏まえれば、同社にとって失敗だったとの認識を表明。2018年に結んだ契約内容に、「社がおそらく受け入れるべきではなかった非常に特殊な一連のリスクを担う条件」が盛り込まれていたことも明らかにした。
この契約についてはトランプ前大統領が自ら実現に向けて積極的に行動し、ホワイトハウスでボーイング社首脳らとの会談も開いていた。
ボーイングや米政府監査院(GAO)の報告書によると、新たなエアフォースワンの引き渡しの時期は遅れ、26年になる可能性がある。現在運用している大統領専用機の2機は1990年の製造で、25年までの退役を想定していた。