飛行機から列車への移行を模索する欧州、その現状は?

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ドイツ鉄道とルフトハンザは鉄道と航空機を組み合わせた旅を提供している/ulian Stratenschulte/picture alliance/Getty Images

ドイツ鉄道とルフトハンザは鉄道と航空機を組み合わせた旅を提供している/ulian Stratenschulte/picture alliance/Getty Images

この結果に対しては、気候問題に懸念を示しながら実際は何もしないのと同じ、との批判の声が上がっている。

「フランスの短距離飛行禁止措置は象徴的な動きではあるが、(温室効果ガスの)排出量の削減にはほとんど効果はない」と語るのは、より環境にやさしい輸送手段を推進する団体、欧州運輸・環境連盟(T&E)の航空担当ディレクター、ジョー・ダルデンヌ氏だ。

T&Eの試算では、禁止令により廃止となる3路線を航行する航空機の温室効果ガス排出量は、フランス本土から離陸する全ての航空機の排出量のわずか0.3%で、フランスの国内線(フランス本土の国内線のみ)に限っても全体の3%にすぎない。

フランス当局が廃止しようとしていた5路線の排出量を含めると、これらの数値はそれぞれ0.5%、5%となる。

それでも全体に占める割合はさほど大きくはない。しかし、現在、世界の総炭素排出量に占める航空業界全体の排出量の割合は約2.5%だが、航空機が排出する他のガスや水蒸気、飛行機雲を考慮すると、気候への影響はもっと大きいと推定される。

さらに航空業界は今、急成長しており、将来は温室効果ガスの排出量が最も多い産業の一つになる見込みだ。EUによると、欧州では2013年から19年にかけて航空業界の排出量が前年比で平均5%ずつ増加したという。

制限はさらに続く

欧州で超短距離路線に対し、強硬な姿勢を取るのはフランスが初めてではない。

20年にオーストリア政府は、同国を代表する航空会社オーストリア航空を救済したが、鉄道で3時間未満で移動可能な区間のフライトを全廃するという条件を課した。

実際に廃止されたのはウィーンとザルツブルクを結ぶ路線のみだったが、同路線の廃止にともない、同区間の列車が増便された。

オーストリア政府はまた、オーストリアの空港から出発する飛行距離が350キロ未満のすべてのフライトに30ユーロの税金を課した。

欧州の他の国々も短距離路線の削減を検討しているとされており、スペインも、列車で2時間半未満で移動可能な区間のフライトを50年までに廃止する計画の概要を示した。

欧州地域航空協会(ERA)など、多くの航空宇宙業界団体の依頼で22年に作成された報告書によると、飛行距離が500キロ未満の路線を航行するフライトをすべて別の公共交通機関に切り替えると、EU内の総炭素排出量を最大で5%削減できる可能性があるという。

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