米AI企業トップ、技術の進展が招く大量失業に警鐘
AIがもたらす雇用の消滅、業界大手のCEOが語る
(CNN) 学者やエコノミストらは長年にわたり、人工知能(AI)の急速な進展が雇用の大量喪失を引き起こし、世界経済に甚大な影響をもたらすと警鐘を鳴らしてきた。今やそうした懸念の声が、当該分野の企業からも寄せられる状況となっている。
29日、米AI企業アンスロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)はCNNのインタビューに答え、AI技術に関連する失業率の急増は政治指導者や各企業が予想するよりも早く起きると警告。現状でそうした事態への準備は整っていないとの見方を示した。
アモデイ氏が28日にアクシオスに語った認識によれば、アンスロピックをはじめとする各社が開発を急ぐAIツールによって、向こう1~5年間でエントリーレベルのホワイトカラー職の半分が消滅し、失業率を最大20%にまで押し上げる可能性がある。
業界を牽引(けんいん)するアンスロピックが販売するAI技術は、人間の典型的な労働時間に匹敵する1日7時間近くの稼働が可能だという。世界経済フォーラム(WEF)の最近の調査によれば、AIの自動化を受けて雇用主の41%が2030年までの従業員削減を計画している。
ただ一部の専門家は、今後AIが自動化するのは特定の作業であって仕事全体ではないと指摘。高度に複雑化した作業は依然として人の手を必要としており、現時点でのAIによる代替には懐疑的な見方も出ている。
それでも大手AI企業トップの意見として、アモデイ氏のコメントは注目に値する。同氏のCNNとのインタビュー内容を以下にまとめた。
エントリーレベルのホワイトカラー職が危機に
アモデイ氏は、「文書を要約する、多数の情報源を分析して報告書にまとめる、コンピューターのコードを書く」といった業務はAIで行えると指摘。現在のAIは「頭のいい大学生と同程度に有能」だという。
その上で同氏は、近い将来エントリーレベルのホワイトカラー職の半分がAIによって消滅し、失業率が最大20%にまで上昇する可能性があると予測する。
各企業で自社製品が大規模に導入されれば、当該のAI企業には巨額の利益がもたらされるが、アモデイ氏はそれを踏まえてAI企業への課税の検討にも前向きな姿勢を示している。
事態は想定より早く進展
人の手による仕事が失われていく時系列について具体的に設定しているわけではないとしつつ、アモデイ氏は「世間一般や政治家らが現状を十分に認識しているとは思わない」と述べた。
人々が確実に順応するための適切な政策を準備する必要があるが、行動は今すぐ起こさなくてはならないと同氏。無策のままそうした事態を迎えることはできないと強調した。
AIはもはやただのチャットボットではない
アモデイ氏によれば、人間は間もなく「ほぼ全ての知的作業で」、自分たちを凌駕(りょうが)するAIとの対決を迫られるようになる。最終的に、AIによる自動化から無事でいられる人間は誰もいなくなるだろう。自分のようなCEOであってもいずれはそうなると、同氏は指摘する。
実際にそれが起きた場合、「我々は社会をどのように秩序立てるのかについて考えなくてはならない」(アモデイ氏)
現状多くの人々は、AIを人間の能力の増強に使用している。それは完全に人間を代替する自動化とは異なるものの、双方の差は急速に狭まりつつある。アモデイ氏によれば現時点では6割の人がAIを人間の能力の増強に、4割の人が自動化に、それぞれ使用しているという。
人間にできること
アモデイ氏は、人間がAIの使い方を学ぶことが重要だと述べた。
「テクノロジーがどこへ向かうのか、理解する方法を身に着ける必要がある。準備を整えていれば、順応できる可能性は格段に高まる」
またAIシステムが間違いを犯し、意味をなさないコンテンツを生成する場合には人間がそれに気付くことが重要だとも指摘。そうしたAIの挙動に対しては、人間の立場から批判的に考察するべきだと言い添えた。