中絶関連の罪で10代娘と母訴追、警察がFBから2人のやり取り入手 米

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ネブラスカ州議会議事堂/Adobe Stock

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ニューヨーク(CNN Business)  米ネブラスカ州で18歳の女性とその母親が、人工妊娠中絶に関連する罪に問われている。警察は2人がフェイスブックのメッセンジャーでやり取りした内容を入手して、違法な中絶薬の使用や胎児の遺体を隠す計画を裏付ける証拠として提出していた。

裁判書面によると、同州ノーフォーク警察は4月下旬、セレスティ・バージェス被告(18)の流産に関連して、セレスティ被告と母のジェシカ・バージェス被告に対する捜査を開始した。2人が訴追された後も警察は捜査を続け、2人が交わしたメッセージなどの情報を入手。このメッセージには、中絶薬や証拠隠滅に言及する内容があったとされ、その内容が証拠として裁判書面に記載された。

警察は、胎児の遺体を掘り起こした結果、中絶後に焼かれた可能性をうかがわせる熱傷の痕跡が見つかったとしている。

この裁判が始まったのは、人工妊娠中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」を覆す米最高裁判決が6月に言い渡される前だった。しかし専門家などは、最高裁判決を受けて司法当局が中絶禁止法を執行する目的で個人情報を利用するケースが増えることを危惧しており、その問題が浮き彫りになった形だ。

専門家らは、例えば誰かが人工妊娠中絶を行ったり手を貸したりしたかどうかの裏付けとする目的で、検察がIT企業に対して位置情報や検索履歴、通話記録などの提出を求める捜索令状を執行する可能性があると指摘する。バージェスさんの事件は、現行法の下で既にそうした事態が起きていることを見せつけた。

捜索令状の裏付けとされた宣誓供述書によると、当時17歳だったセレスティ被告は当初の調べに対して予想外の死産だったと主張し、母親と一緒に胎児を埋葬したと話していた。警察の取り調べの最中にセレスティ被告が流産の日を確認しようとフェイスブックのメッセンジャー画面をスクロールしていたことから、警察はほかにもこの事件に関するメッセージがあると考えて、捜索令状を取った。

弁護側はコメントを避けている。

捜査当局は6月7日、捜索令状に基づきフェイスブックの親会社メタに対してセレスティ被告とジェシカ被告のアカウントに関する情報提供を請求。フェイスブックは2日以内に、2人のアカウント情報や画像、音声および映像記録、メッセージなどを含むデータを提供した。このデータには、死産の2日前にセレスティ被告が母親とやり取りしたメッセージが含まれており、ここから2人が錠剤を受け取り、その使い方や「証拠」の扱いに関する計画を立てていたことが分かったとされる。

メタの広報は9日、バージェスさんの事件に関する報道についてツイッターに投稿した声明で、「最高裁判決前の6月初旬に地元司法当局から受け取った令状の中に、中絶に関する言及は一切なかった」と強調した。メタは同日、公式サイトへの投稿で「裁判書面によると、警察は当時、死産の胎児の違法な焼却と埋葬に関する訴えについて捜査していた」としている。

その後検察側は6月16日に新たな捜索令状を取り、インターネット検索や中絶に使った医薬品の購入などに関する証拠を請求。セレスティ被告とジェシカ被告の端末13台が押収された。

2人は6月、それぞれ人骨に関する違法行為の罪や他人の死を隠蔽(いんぺい)した罪、虚偽情報の罪で訴追された。2人とも無罪を主張しており、年内に公判が予定されている。

警察が2件の捜索令状に基づきデータを入手した後、ジェシカ被告は違法妊娠中絶の教唆と、医師以外の人物が中絶を行った罪でも訴追された。これに対しても無罪を主張している

ネブラスカ州は最高裁判決以前からある州法で、妊娠20週目以降の中絶を禁じている。セレスティ被告が流産したのは28週目ごろだった。

今回の事件は、SNSで交わしたダイレクトメッセージなどの個人情報が、中絶禁止法の執行のために利用されかねない現実を浮き彫りにした。2018年にはミシシッピ州の女性が、自宅での流産に関して殺人罪で大陪審に起訴された。捜査当局は「中絶薬の購入」といったインターネット検索結果を根拠としていた。その後起訴は取り下げられている。

6月の最高裁判決後、アマゾンやアップル、グーグル、メタ、マイクロソフトなどの巨大IT企業はほとんどが、人工妊娠中絶関連の訴追につながり得るデータの提供を捜査当局に求められた場合、どう対応するかについて、コメントを避けている。

ただ多くの場合、こうした企業にとって法に基づく情報請求に応じる以外の選択肢はほとんどない。IT企業は全般的に、現行法に沿っている限り、政府機関のデータ請求には従うと説明してきた。最高裁判決を受け、中絶規制の新しい州法を制定する州が増える中、中絶捜査に関連したデータの請求にIT企業が抵抗するのは難しくなるかもしれない。

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