OPINION

今こそ米国は自らの「ネーション・ビルディング」を

9・11から20年、米国の「ネーション・ビルディング」は明確な成果を出せていない/ROBERTO SCHMIDT/AFP/AFP via Getty Images

9・11から20年、米国の「ネーション・ビルディング」は明確な成果を出せていない/ROBERTO SCHMIDT/AFP/AFP via Getty Images

(CNN) 驚天動地の9・11同時多発テロが米国本土で起きるのを目の当たりにした後、我々の多くが抱いたのは、もう以前と同じではいられないだろうという感覚だった。世界の秩序が何らかの形で変わってしまった。米国人たる我々もそうだ。

やがて数千人の米軍兵士がアフガニスタンへ派遣されることになったが、果たすべき一連の目標は実体を伴わず、たいていの場合、あの遠い国で長きにわたり苦しむ人々にとって十分理解できるものではなかった。それどころか米国の一般大衆や、米国および同盟国の指導者たちですら、そうした目標を明確にはとらえていなかった。

ジョー・バイデン大統領が8月16日に断言したところによれば、米軍のアフガニスタンにおける任務はあくまでも対テロ作戦に特化したものであり、「決してネーション・ビルディング(国の建設)を想定したものではなかった」。この主張は、9・11当時のジョージ・W・ブッシュ大統領並びに上院議員だったバイデン氏自身による発言と矛盾する。その後副大統領となった同氏は、オバマ政権下で考えを変えた。

キース・マギー氏
キース・マギー氏

9・11から20年近くを経て、多くのアフガン人が絶望に打ちひしがれる中、アフガニスタンの政権は再び強硬路線のイスラム主義勢力、タリバンの支配下に置かれている。彼らはほとんど疑いの余地なく、自ら掲げる苛烈な形のシャリーア(イスラム法)を改めて導入するだろう。無秩序で、時に暴力的な様相も呈した米軍のアフガン撤退の後、この敗北(としか言いようがない)は一つの共通認識を引き起こすはずだ。つまり、我々は自分たちの統治システムを単純に他国に押し付けることはできないという認識。あまりにかけ離れた文化や歴史、信仰体系、将来展望、野心を持つ国々に対して、それは不可能なのだという実感だ。

バイデン氏が米軍を撤退させたのは正しかった。歴史が示すように、我々は海外でのネーション・ビルディングという落とし穴にはまってきた。もし民主主義のもたらす恩恵を擁護したいなら、おそらく米国は内側に目を向けた方がいい。自分たちの国をしっかりと築き上げるべきだろう。

今こそ米国は真の決意を胸に、先頭に立って模範を示さなくてはならない。当然、先頭に立つ資格などと言うものがあればの話だが。それでも強く、安定した民主主義が最高の統治形態だと信じるのなら、まずは自分たちが他国を引き付けるだけのものを確実に手にしている必要がある。過去20年、我々は自らの民主主義を守る取り組みに失敗してきた。その結果、現在直面しているのは憂慮すべき水準にまで達した両極化と、有権者に対する投票抑制だ。

筆者は何も圧政の下で苦しむ世界中の人々に背を向けろと言っているのではない。ただ長期にわたる軍事介入と、誤った認識に基づくネーション・ビルディングの試みは問題の答えにならない。

米国はその膨大な富と影響力を活用し、国際舞台で有益なことをいつ、どこにおいても可能な限り行うべきだ。それを達成するためには、慎重に対象を絞った気前の良い財政支援を困窮した国々に向けて提供し、外交力と実際の行動の両方を通じて自由や平等、人権など、同盟国と共有する価値を広める必要がある。

我々には、安全な避難場所を迫害から逃れる人々に提供する能力もある。難民は迎え入れ、新たに生み出すのを止めよう。彼らは結局のところ、我々自身の国を建設するうえでのかぎになる。

なるほど、米国のような国を建設するのは終わりの見えない仕事だ。その計画が目指すのはより良質で平等な社会を作り出すことであり、それにはすべての市民が政治信条や肌の色、信仰、経済的地位にかかわらず、生きた民主主義を育てていく決意を固める必要がある。手元にある建築ブロックのうち、大切なのは3つだ。

第一に、個々人を民主的プロセスに最初の段階から取り込むことが極めて重要になる。地元議員の選出に加え、地域及び全国の審議会への参加も呼びかけるべきだ。例えば市民議会のようなクラウドソースに基づく構想では、無作為抽出で集まった人々が全住民に関わる問題について話し合う。

最近の市民議会の事例としては、アイスランドやフランス、カナダ、ポーランドで開かれたものがある。それらが示すように、人々を信頼して情報を与え、話し合う場所と時間、さらに実際に影響力を発揮する機会を提供すれば、彼らは合意点を見出し、革新的な手法で問題を解決することができる。

第二に、公平な投票権も優先事項とする必要がある。ひどいことに米国では、今なお多くの州でそれが欠如した状態が続いている。

直ちに行動を起こし、ここからの巻き返しを図るべきだ。極度に貧しく、最も不利な立場に置かれた米国人からこれ以上投票権を剥奪(はくだつ)するのを止めなくてはならない。まずは米上院で関連する法案を通すことから始めよう。

ネーション・ビルディングに重要な最後のブロックは、公民教育だ。2018年、米シンクタンク「アメリカ進歩センター」のサラ・シャピロ氏とキャサリン・ブラウン氏は、ほとんどの州で公民や米政府に関する授業が半年間しか義務付けられていないことを突き止めた。10の州では公民を必修科目としておらず、授業のカリキュラムとして地域の課題解決を盛り込んでいる州は皆無だった。地域の課題解決は、市民参加のスキルと手段を身に着けるうえで科目の中の重要な構成要素となる。

子どもたちに対して我が国の民主主義を理解し、その恩恵を享受しつつ大切に育ててほしいと願うなら、現状の改善は必須だ。

米軍撤退の期限の日、バイデン氏はこう語った。「アフガニスタンに関する今回の決定は、単にアフガニスタン一国についてのものではない。大規模な軍事行動によって他国を作り変える時代に終止符を打つためのものだ」

おそらく我々が自問しなくてはならないのは、自分たちの国を作り変える取り組みに着手するべきかどうかではなく、果たしてそれをせずに済むのかどうかという点だろう。民主主義による堅固な政治システムの保証なくして、いったい何が我々を独裁主義の過激論者たちによる支配から守ってくれるというのだろうか?

もし我々が自らの怠慢によってその火を消してしまうのなら、我が国の民主主義が世界を導く光としての役割を果たすことはできないのである。

キース・マギー氏は神学者、政治顧問、社会公正学者。英ニューカッスル大学で社会公正専攻の実務教授を務めるほか、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン米国政治センターの上級フェローでもある。ボストン大学の客員研究員だった2014年に社会公正研究所を設立し、現在も独自研究の拠点としている。人種や宗教、政治学を考察した著書がある。記事の内容はマギー氏個人の見解です。

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