言葉による子ども虐待、身体的虐待と同じくらい深刻な心の傷痕に 英調査
(CNN) 子ども時代に受けた言葉による虐待は、大人になってからも身体的暴行と同じくらい深刻な傷痕を心に残しかねないという研究結果が発表された。
5日のBMJオープンに掲載された論文によると、子ども時代に身体的虐待を受けた人は虐待を受けなかった人に比べ、大人になってから心の健康問題を訴えるリスクが50%高いことが分かった。一方、言葉による虐待を受けた人のリスクは60%高かった。
英イングランドとウェールズで身体的虐待を受けた人の割合は、1950~79年生まれが20%だったのに対し、2000年以降に生まれた人は10%と半減していた。一方、言葉による虐待は増えている。
米国では疾病対策センター(CDC)が実施した若者のリスク行動に関する実態調査で、60%以上が感情的虐待を経験したことがあると回答。31.8%は身体的虐待を受けたことがあると答えた。この調査では言葉による虐待の代わりに感情的虐待という言葉を使っている。
今回の最新調査では、イングランドとウェールズで実施された7件の調査をもとに、成人2万人あまりのデータを分析。子ども時代の経験と大人になってからの心の健康状態の関係を調べた。
論文を発表した英リバプール・ジョンムーア大学のマーク・べリス教授はこの研究結果について、「子ども時代の言葉による虐待は、身体的虐待が引き起こすのと同じくらい長く続く深い傷痕を残し得る」と指摘する。
言葉による虐待とは
身体的虐待が減る一方で言葉による虐待が増えている現状は、この問題について認識を高めることの必要性を物語っていると専門家は指摘する。
厳しい言葉と虐待にあたる言葉の間の線引きは難しい。ロンドン大学キングスカレッジのアンドレア・ダニーゼ教授(今回の調査とは無関係)によると、虐待には子どもを責めたり、侮辱したり、叱ったり、批判したり、脅したりすることも含まれる。
例えば「人を怖がらせたり、屈辱を与えたり、軽蔑したり、蔑視したりする意図で侮辱的な言葉や発言を使うことについて考えてみてほしい」とダニーゼ氏は言い、「あの子はできるのに、なぜあなたにはできない?」「いつも間違えてばかりだね」「バカだね」「役立たず」といった言葉も虐待になり得るとした。
「子どもにかけられた辛辣(しんらつ)で侮辱的な言葉は、その後も長く続く影響を及ぼす。発達段階の子どもは『そうか、そうでないか』を固定的に考える」と同氏はメールで述べ、「子どもたちは言葉を文字通りに受けとめてしまう」と指摘する。
子どもは自分の身近にいる大人の言葉に頼って自分自身のことや世界のことを学んでいる。従って、肯定的であれ否定的であれ、言葉の力は非常に大きいとダニーゼ氏は解説し、「言葉による虐待を受ければ、自分自身と世界の中の自分の役割に関する子どもの理解が歪(ゆが)められてしまいかねない」と話している。