店頭に並ぶ日焼け止め、安全かつ効果的なのはわずか25% 米報告書
なぜ日焼け止め選びに失敗するのか、皮膚科医が解説
(CNN) 米国の店頭に並ぶ日焼け止めのうち、有害な太陽光線から安全かつ効果的に肌を保護できるのはわずか4分の1に過ぎないことが分かった。20日に発表された日焼け止めに関する年次報告書で明らかになった。報告書は2025年に販売開始予定の2200種類以上の日焼け止めを分析している。
07年から毎年報告書を作成している消費者団体EWGの最高科学責任者代理、デビッド・アンドリュース氏は、報告書の基準について「日焼け止めの有効成分が紫外線A波(UVA)と紫外線B波(UVB)の両方からバランスよく保護する能力のほか、製品に含まれる有害な化学成分を考慮している」と述べている。そのうえで、消費者に第1候補として推奨できる商品は500点ほどだったという。
ケミカルタイプに関する懸念
日焼け止めには、ケミカルタイプとミネラルタイプの2種類がある。ケミカルタイプは、化学反応によって紫外線をエネルギーとして吸収し、熱として発散させながら肌に浸透する。
米食品医薬品局(FDA)が19年に発表した試験では、ケミカルタイプの日焼け止めを1日使用しただけでもアボベンゾンやオキシベンゾンなど七つの化学成分が皮膚から血流に吸収されることが明らかになった。
これら七つの化学物質の血中濃度は、塗布後に日ごとに増加し、1週間後もFDAの安全基準を上回っていた。そのうち二つの化学物質(ホモサレートとオキシベンゾン)は、21日目でもなお安全基準を超えていたという。これらの化学物質は、一度血流に入ると、排水を介して水路に入り込み、サンゴ礁や水生生物を脅かす恐れがある。
ただし、オキシベンゾンは、思春期の男子のテストステロン値の低下や、男性ホルモンの変化、妊娠期間の短縮などとの関連性も指摘されているが、日焼け止めに使われる割合は劇的に減少しているという。
ミネラルベースの日焼け止めの安全性
ミネラルベースの日焼け止めは皮膚に吸収されるのではなく、太陽光線を物理的に偏向させて遮る。酸化亜鉛と二酸化チタンは、ミネラルタイプの日焼け止め成分としてFDAが承認しており、海洋生態系に悪影響を与えることはないという。
一方で一部のミネラル製品には、紫外線防御効果(SPF)を人工的に高めることを目的とした化学的な「ブースター」が含まれている可能性があると報告書は指摘している。
化学ブースターを使用すると、有効成分濃度が低下し、消費者の安全を犠牲にしかねない。また、溶剤であるサリチル酸ブチルオクチル(BOS)などのブースターの中には化学的な日焼け止め成分と同様に紫外線を吸収するものもあるという。
これらは主に、製品の肌触りを高め、ミネラルタイプ特有の白浮きを軽減する溶剤として宣伝されている。
アンドリュース氏によると、BOSは、FDAが安全性データの必要性を指摘しているケミカルタイプの12種類の成分の一つであるオクチサレートと構造的に類似しているが、BOSは有効成分として規制されておらず、これらの成分と同等の安全性評価を受けていない。
FDAは19年に日焼け止めの安全基準を厳格化した。また、スプレー式日焼け止め製品についてもエアロゾル化した化学物質が肺の奥深くに吸入されないことを証明するようメーカー側に求めたが、実施されていないという。
「FDAが数年前にエアロゾル化粧品を試験した際、一部の製品には肺の奥深くに吸入され、健康被害につながる可能性のある非常に小さな粒子が含まれていることが判明した」とアンドリュース氏は話す。「同じ懸念はスプレー式日焼け止めにも当てはまる」
しかし、吸入によるリスクがあるうえ、スプレーで均一かつ適切に塗布することは難しいにもかかわらず、スプレー式日焼け止めは消費者の間で依然として人気がある。今回テストした日焼け止めの26%はスプレー式だったという。
オーストラリアの研究では、微風下でもスプレー式日焼け止めのかなりの部分が吹き飛んでしまうことが明らかになっている。
FDAは19年の提案において、日焼け止め製品のSPF上限を60とすることも求めた。60を超える効果は極めて小さく、消費者に誤った印象を与える恐れがあるというのが理由だが、これもまだ実現されておらず、消費者はこうした製品を購入し続けているとアンドリュース氏は訴えた。