飛行中に男性が心臓発作の症状、心臓専門医と小型機器が救命の一助に

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機内で男性を助ける心臓専門医のTJ・トラッド氏/Cura for the World

機内で男性を助ける心臓専門医のTJ・トラッド氏/Cura for the World

(CNN) 米オクラホマ州の心臓専門医、TJ・トラッド博士は先月、アフリカ東部ウガンダからの飛行機の中で熟睡していたところ、「医者が必要な人がいる」とチームのメンバーに起こされた。

トラッドさんは助けを求めている乗客のもとに駆け寄った。汗を流し、胸の痛みを訴える男性はトラッドさんに目を向けると「私は死ぬんですか」と質問した。

「少なくとも、今日じゃない」。トラッドさんは男性にそう答えた。

トラッドさんは目の前の男性が心臓発作を起こしていると考えた。昨年、心臓発作を乗り越えたトラッドさんにとって、その痛みはよく知ったものだった。

トラッドさんはまた、もしこれが心臓発作なら、男性の命を救うのに役立つかもしれない道具が手元にあることも分かっていた。トラッドさんは自身が設立した団体「CURA・フォー・ザ・ワールド」のウガンダでの医療ミッションから帰国する途中で、薬と医療機器を持っていた。

トラッドさんは心臓発作を経験して以来、心電図(ECG)を計測する機器を常に携帯していた。クレジットカードほどの大きさのこの心電計は症状を理解するうえで、重要な道具となるだろう。

あとは仕事に取り掛かるだけだった。

仮設の救急室

4月29日、KLMオランダ航空のアムステルダム行きの便が出発してから3時間後、トラッドさんは緊急対応モードに突入した。

男性は胸の痛みは10段階で「10」だと答えた。

「今すぐ、着陸を?」。トラッドさんは、男性の妻が不安そうにトラッドさんに尋ねたのを思い出した。

トラッドさんはまず、オランダ人の夫婦と近くの乗客、乗務員を落ち着かせる必要があることに気が付いた。

「我々の訓練は非常に多岐にわたるので、船長として周囲の人たちを落ち着かせる訓練を受けているようなものだと思う」

トラッドさんは座席の列を挟んで仮設の救急室を作り、男性を飛行機用の枕を使って横たえ、足を高く上げて、心臓への血液の環流を図った。

血糖値と血栓の合併症を除外した後、12誘導心電図を使って男性が心臓発作を起こしているかどうかを測定した。そしてすぐに、心臓発作の治療で一般的に使われる5種類の薬を処方した。

トラッドさんが使った「KardiaMobile」/Cura for the World
トラッドさんが使った「KardiaMobile」/Cura for the World

トラッドさんはその後、個人用の心電計を使って男性の不整脈を観察した。トラッドさんは昨年の心臓発作以来、再発の場合に備えて、心電計「KardiaMobile」を財布に入れて持ち歩いている。

心電図は男性が心臓発作の症状を示していることを確認するのに不可欠だった。トラッドさんによれば、心電計によって、その後3時間にわたって不整脈を継続的に観察することができた。

男性が心電計に親指を置くと、心臓の活動に関するデータがブルートゥース(無線通信)でトラッドさんのアプリに送信された。

トラッドさんによれば、薬を服用してから45分以内に男性の胸の痛みと心拍数は改善し始めた。

適切な場所に適切なタイミングで

トラッドさんは自身の心臓発作のため、2024年2月に予定されていたウガンダへの医療ミッションに参加することができなかった。結果として、トラッドさんは今回治療した男性と同じ飛行機に乗ることになった。

トラッドさんは、心臓発作のおかげで、まさに適切な場所に適切なタイミングで居合わせたと語った。

「私は全ての出来事に理由があると信じている。本当にそう思う」

こうした状況のなか、機長はKLMの地上の医師と話した後、チュニジアに迂回(うかい)するかどうか質問した。トラッドさんは男性の容体について、アムステルダムにたどり着けるくらい安定していると保証した。

男性の容体は残りの2時間の飛行中、安定していた。着陸間際に胸の痛みが再発したが、薬を追加投与することで治まった。

男性の妻はCNNの取材に対し、トラッドさんと看護師が男性の容体の悪化を防ぎ、「忘れられない仕事」をしてくれたと語った。

着陸すると男性はトラッドさんに感謝し、妻は「とても、とても強く」抱きしめたという。

「彼女から『あなたは私たちの空の天使だ』と言われた」。トラッドさんはそう振り返った。

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