膨大なCO2排出源、コンクリートを環境に優しくする取り組み

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バーニー・シャンクス氏(左)とサム・ドレイパー氏はカーボンニュートラルなコンクリートの開発を進めている=英インペリアル・カレッジ・ロンドン/Helene Sandberg

バーニー・シャンクス氏(左)とサム・ドレイパー氏はカーボンニュートラルなコンクリートの開発を進めている=英インペリアル・カレッジ・ロンドン/Helene Sandberg

(CNN) この世界はコンクリートでできている。耐久性があり、安価で、ビルにも橋にもトンネルにもよく使われている建設資材だ。だが至る所にあるがゆえに、環境に与える影響もばかにならない。

コンクリートは砂や砂利などの骨材を水と混ぜて製造し、セメントで接合される。コンクリートのカーボンフットプリント(製造から廃棄までの過程で出る二酸化炭素の量)で、最も大きいがこのセメントだ。

とくによく使われているのがポルトランドセメントで、石灰を窯で焼成して製造する。英シンクタンクの王立国際問題研究所(チャタムハウス)によると、2021年のセメント製造量は40億トンを超え、製造過程で排出された二酸化炭素は全世界の排出量の8%を占めた。建設業の脱炭素化が叫ばれる中、世界各地で環境に優しいコンクリートの製造方法の研究が行われている。

「コンクリートは素材として素晴らしく、頼もしい存在なので、あらゆる場所で取り除くのは困難だろう」と言うのは、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの博士課程で学ぶサム・ドレイパー氏だ。「可能であれば木造建築への移行もありうるが、コンクリートは多くのインフラで必要とされている。そしてコンクリートの製造には、ある種のセメントが必要だ」

ドレイパー氏は同僚研究員のバーニー・シャンクス氏と共同で、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)なコンクリートを可能にするセメント製造法を考案した。

2人が考案した方法は、カンラン石という豊富に存在する鉱物を、マグネシウムとシリカに分解するところから始まる。生成されたシリカは、コンクリートで使われるポルトランドセメントの35~45%を直接置き換えることが可能だ。マグネシウムのほうは二酸化炭素と結合して炭酸マグネシウムに変化した後、建設資材として焼成粘土レンガや石膏(せっこう)ボードの代替品などに使われる。

ドレイパー氏いわく、製造過程で発生した二酸化炭素は、大気中に排出する代わりにセメント工場の煙突から回収できるため、この方法で製造されたコンクリートはカーボンニュートラルになる。また炭酸マグネシウムは安定した炭素貯留先になる。

「炭素隔離の観点から言えば、建設業の利点のひとつは巨大でかさがあることだ。おかげで大量の二酸化炭素を貯留できる」とドレイパー氏は言う。

「建物は長持ちするものが多いので、長期的にしっかり炭素を隔離できる。排出された二酸化炭素を燃料などに再利用するのも良く、循環利用になるが、燃料を燃やしたとたんにCO2が排出される。建造環境なら二酸化炭素を長期間封じ込めることができる」(ドレイパー氏)

20年から実験を進めてきたドレイパー氏とシャンクス氏は、21年にセラテック社を立ち上げた。近くインペリアル・カレッジからの正式な独立分離を控えており、週に数トンのセメントを製造できる大型実験施設の建設に向けて民間資金を募ることが可能になる。

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