寄生虫の「マインドコントロール」が影響か、群れを離れるオオカミ 米研究

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猫に寄生するトキソプラズマ原虫が、オオカミの行動にも影響を与えている可能性がある/Kira Cassidy/NPS

猫に寄生するトキソプラズマ原虫が、オオカミの行動にも影響を与えている可能性がある/Kira Cassidy/NPS

(CNN) オオカミは群れをつくる動物で、メスのリーダーとそのパートナーが率いる家族の中で生活する。生涯を通じて群れにとどまり、狩りや子育てを手伝うオオカミがいる一方、中には集団から離れて自分のパートナーを見つけ、自ら群れをつくる個体もいる。

こうした行動には性格の特異さや子どもの頃に形成された家族関係など、多くの要因が絡んでいるが、新たな研究の結果、群れの力学に影響を与える意外な要素が明らかになった。「マインドコントロール」を行う寄生虫がハイイロオオカミをリスクの大きい行動に駆り立てていることが分かったのだ。

研究チームの調査結果によると、トキソプラズマ原虫と呼ばれる寄生虫に感染した米イエローストーン国立公園のハイイロオオカミはそうでない個体に比べ、生まれついた群れを離れるか、群れのリーダーになる可能性が高い。

猫を飼った経験のある人なら、トキソプラズマ原虫によって引き起こされる感染症「トキソプラズマ症」について聞いたことがあるかもしれない。猫の腸にはトキソプラズマ原虫の生殖に必要な酸が過剰に含まれていることから、この原虫のライフサイクルは猫と密接な関係を持つ。まずトキソプラズマ原虫が猫の腸内で繁殖し、猫はふん便と一緒に原虫のオーシスト(卵のような単細胞)を排出する。

他の哺乳類や鳥がこれらのオーシストに汚染されたものを食べたり飲んだりすると、猫以外の動物にも感染が拡大する。ただ、他の動物の腸にはトキソプラズマ原虫の生殖に必要なリノール酸がないため、原虫はネコ科動物の体内に戻る方法を見つける必要がある。

そこで、トキソプラズマ原虫は中間宿主の脳や筋組織に入り込み、猫に食べられる可能性を高めるような行動を取る。このメカニズムについてはまだ解明されていないが、最もよく知られているのはげっ歯類の例だ。複数の研究によると、トキソプラズマ原虫に感染したネズミは猫に対する生まれつきの恐怖心を失い、猫の尿の臭いを避けなくなる。恐怖心を失ったマウスは猫の格好の餌食になり、新たにトキソプラズマに感染した猫は知らぬ間に同じプロセスを繰り返すことになる。

進化の過程で生き残るという点では、トキソプラズマ原虫は猫やその獲物に最適化されているのだが、他の動物が巻き込まれた場合も似たような行動の変化が起きる。人間も影響を受ける場合があり、ビジネス上のリスクを冒す行動や運転中の逆上、統合失調症などの行動変容とトキソプラズマ原虫との関係が指摘されている。

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