EU離脱は英国の貿易を「深刻に抑制」、今後悪化の恐れ
ロンドン(CNN) 英国の欧州連合(EU)からの離脱が英国とEU間の物品貿易に「深刻かつ継続的な抑制効果」をもたらしていることが分かった。英アストン大学の研究者が17日に発表した報告書で明らかになった。
研究者は2021年から23年における英国のEU向け年間物品輸出について、EUに加盟していた場合よりも17%低かったと推定している。ほとんどの部門の輸出は21年以降減少しているという。英国のEU離脱は20年12月24日に確定した。
報告書は「(EU離脱の)悪影響が時間の経過とともに強まっており、23年は過去数年よりも貿易の減少が顕著になっている」とし、報告書の内容は短期的な混乱ではなく、今後も続くと見込まれるより深い構造的変化を反映していると述べている。
この研究結果は、7月の総選挙で政権を奪還した労働党政権の最優先事項である経済成長の促進にEU離脱が投げかける課題を浮き彫りにしている。
スターマー首相は今週、来月発表する政府の来期予算で経済成長を優先すると述べる一方で、EU市場や関税同盟への再参加は否定した。
公式統計によると、物とサービスがおよそ半分ずつを占める輸出は英国の国内総生産(GDP)のほぼ3分の1に相当し、物品の輸出先の48%はEUだ。
報告書は、EUに輸出される英国製品の種類が急減していることを示しており、食品や衣料品などの業界の中小企業はコスト増と煩雑な手続きのために輸出を断念することが多いという。
この研究の筆頭著者は、EU離脱後の貿易協定は英国とEUの貿易に「大きな障壁をもたらした」と指摘する。
研究者は、貿易関係を改善するために政府が農業などの分野で「セクター別」協定を優先し、デジタル技術を使用して通関手続きを合理化するほか、EUとの規制のすりあわせを緊密に行うことを提言している。
この報告書は、EU離脱が英国経済に与えた悪影響を示した最新の研究だ。英国のシンクタンクによると、EU離脱によって16年の国民投票から昨年7月までの間に英国のGDPは2~4%の打撃を受けたと推定されている。
経済予測を作成している政府機関は、長期的な英国のGDPについてEUに加盟し続けた場合と比べ、4%減少するとみている。
なお、英政府によると、EUへの物の輸出は減少しているもののサービスの輸出は過去最高を記録しており、3月までの1年間で1720億ポンド(約32兆円)に達した。