ウクライナ侵略で潤う米欧軍需産業、ロシアの脅威で「戦後」も好況か
ロンドン(CNN) 3年目に入ったロシアによるウクライナ侵略の「特需」を受けるような形で西側諸国の国防関連企業の業績が好調となっている。欧州などの地政学的な脅威も拡散する様相を示しており、軍需産業の活況はウクライナ戦争後も続く見通しとなっている。
ロシアがウクライナ内への部隊の送り込みを始めた2022年2月24日の前日となる23日以降、米欧の上位の軍事企業5社の株価は全て上昇した。欧州のBAEシステムズ、タレスにラインメタル、米国のロッキード・マーチンとノースロップ・グラマンの5社で、いずれもウクライナへの兵器を送るか、その旨の契約に合意していた。
金融関連企業「リフィニティブ」のデータによると、ドイツのラインメタルの株価は侵攻以降、315%増を記録。BAEシステムズは105%増を得ていた。
西側諸国の政府はウクライナへ弾薬、戦車や戦闘機を引き渡す考えで、それだけ縮小する在庫分の補給にも動いている。国防費をさらに数十億米ドル単位で積み上げる意向も表明している。
北大西洋条約機構(NATO)の一員でもあるカナダと欧州諸国の昨年の国防費は前年比で11%膨らんだ。NATOのストルテンベルグ事務総長は「かつてない増加幅」と誇示。スウェーデン加入が決まる前の31加盟国のうち18カ国が今年には国内総生産(GDP)比で少なくとも2%を達成する見込みで、14年に設けられたこの目標値を実現する加盟国数では最多になると予想されている。同年にはロシアがウクライナ南部クリミア半島を強制併合する危機を迎えてもいた。
ロンドンに拠点があるシンクタンク「RUSI」の幹部はCNNの取材に、増大する国防費は民間部門の受注拡大を意味すると指摘。少なくとも今後10年余にわたってロシアが脅威を及ばさないとみることは難しい情勢にあるとし、特にこれは欧州にあてはまるとも述べた。
スウェーデンの軍事関連企業「サーブ」のヨハンソン最高経営責任者(CEO)は「過去2年は劇的な展開を見せた時期だった」と総括。生産能力を強化するために数十億ドルを投じ、従業員数は22年が始まった後、3600人増やしたとした。CNNの取材に今年はさらに2000人の新規雇用を明かした。同社の収益は昨年、30%も伸びていたという。