ANALYSIS

従業員切望の週4日勤務制、ついに雇用主も無視できない時がやって来た

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
1週間のうち4日勤務して3日休むという働き方に注目が集まりつつある/Adobe Stock

1週間のうち4日勤務して3日休むという働き方に注目が集まりつつある/Adobe Stock

ニューヨーク(CNN Business) 「大退職時代」から得た重要な教訓が次第に明らかになってきた。それは、週に1日仕事を減らすことだ。

米国では現在、記録的な数の労働者が仕事を辞めている。8月には430万人、9月には440万人が退職した。各業界では経営者が人材を確保しようと、賃上げやインセンティブ(動機付け)を提供するものの、なかなか雇用には結びつかない状況だ。

だが、新たに行われた調査では、それほど極端ではないものの、まだ一般的ではない解決策が支持されていることが分かった。週4日勤務制だ。

金融大手ジェフリーズは、最近仕事を辞めた米国の若年層(22~35歳)に対し、元雇用主は退職を引き止めるために何をすれば良かったかと尋ねたところ、32%の人が「週4日勤務制を提案してくれたら残った」と答えた。これは、「賃上げしてくれたら辞めなかった」と答えた43%に次いで、2番目に多い回答だった。

この調査では、回答者の80%が週4日勤務制を支持していることも明らかになった。残りの20%のうち、短縮に反対したのはわずか3%で、17%は「どちらでもない」と答えた。

学士号を持つ従業員が退職した理由の第1位は「燃え尽きたと感じた」だった。

広がる支持

週4日勤務制は目新しいものではない。だが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)とそれに伴う仕事量の増加によって、週4日制の推進派は再び活気づいている。

カリフォルニア州選出のマーク・タカノ下院議員は今年の夏、現在の週40時間労働モデルを成文化した1938年施行の「公正労働基準法(FLSA)」を改正し、標準的な労働時間を週32時間に短縮する法案を提出した。タカノ氏は先月、パンデミックによる職場規範の変化を30年代の社会経済の激変になぞらえた論評を発表した。

タカノ氏は「世界的に見ても、国内的に見ても、私たちは現在、似たような状況にある」「人々は古いやり方には戻りたくない」と指摘した。

同氏はまた、週4日勤務制の導入が一夜にして起こることはないが、人々が予想するよりも早く実現するかもしれないと話した。

週40時間労働は、20世紀初頭に労働運動家たちが苦労して勝ち取ったものだ。これは、労働者がより権限を持ち、労働組合化への取り組みが強まっている現在の労働市場に類似する部分がある。

週4日勤務制を支持する実験は数多く行われている。アイスランドで行われた実証実験がしばしば引き合いに出されるが、この実験では労働者の賃金を下げずに労働時間を短縮したところ、圧倒的な成功を収めたという。また、認識されたストレスやバーンアウト(燃え尽き症候群)など、さまざまな指標において、労働者のウェルビーイング(幸福や健康)が劇的に向上したことが分かった。

2019年には、日本マイクロソフトが週4日勤務制を試験的に導入したところ、労働生産性が40%近く上がったという。

ソフトウェア・データエンジニアリング会社のエレファント・ベンチャーズは昨年8月、パンデミック期間中における従業員のバーンアウトの予防策として、週4日勤務制を試験導入した。注目すべきことに、同社は1日当たりの労働時間を10時間にして、勤務日数を週4日に圧縮したが、週休3日が非常に好評だったことから、これを恒久的なものにした。

なぜこれほど時間がかかるのか

経済学者のジョン・メイナード・ケインズは1930年、労働時間は徐々に短縮され、2030年ごろまでには週15時間労働になるだろうという有名な予測を発表した。この予測によると、月曜日と火曜日に出勤したら、残りの5日は休みになるという。だが、とりわけ給与所得者の労働時間は増える一方だ。

では、何が原因なのだろうか。

専門家らはさまざまな解釈をしてきたが、大企業は自社の利益に影響を及ぼすような変化には特に消極的だ。生産性が安定していても、少ない勤務時間に対して同じ報酬を支払うことに、経営者らが急いで同意するとは考えにくい。

ペンシルバニア大学ウォートン・スクールのピーター・カッペリ経営学教授は「週4日勤務制は、ほとんどの雇用主にとって得にならないため、普及するとは思えない」と述べている。同氏は、同じ人が毎日より長い時間手当てを行うことが大事な看護などの分野においては、週4日勤務制は意味をなすが、勤務時間が従来の9時~17時の職場では、10時間のシフトに対応するメリットはほとんどないと説明した。

経済学者のベン・ハニカット氏は、文化的な背景もあると主張している。同氏は6月にアトランティック誌で、20世紀初頭まで「仕事と富には目的地があった。それは人間の生活をより豊かに、充実させることだった」と述べている。だが最終的には、仕事をすること自体が人々のアイデンティティーの一部になっていった。

もちろん、単なる惰性もある。労働者にとって、自分が育ってきた環境とは異なる時間的な枠組みを想像するのは難しい。

「Analysis」のニュース

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]