トランプ政権下の経済、10のグラフで読み解く

(CNN) トランプ政権が始まった2017年、経済は順調だった。

雇い主は76カ月連続で雇用者数を増やし――これは当時の最長記録だった――失業率はたったの4.7%と10年ぶりの低い水準だった。企業利益は過去最高に近く、株価も同様だった。全体的には国内総生産(GDP)が年率約2.5%で成長、世界最大の経済国としては適度な数値だった。

ただ、すべてがバラ色だったわけではなく、連邦政府の債務は1950年代以降で最大のレベルに膨れ上がっていた。それでもほとんどの数値が示していたのは、経済は堅調という否定しがたい事実だった。そしてトランプ氏にとって、経済がそこからさらに成長を続けたのは幸運だった。

そして、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を迎える。

以下に示すのは、レーガン政権以降の各政権下で、経済がどのように推移したかを示す10の指標だ。まず、各政権が異なる環境の中でスタートしたことは心に留めておいた方がいいだろう。ジョージ・W・ブッシュ政権の1年目はドットコムバブル崩壊と9・11米同時多発テロの影響を受けた。オバマ政権は住宅ローン危機や金融危機に端を発する大不況の中でスタートした。

こうした危機はあったものの、近年のほとんどの大統領は任期中に経済成長を実現してみせた。トランプ政権の場合は新型コロナウイルス感染症(Covid―19)への政権対応が特徴となるだろう。それは健康上の危機であると同時に経済危機でもある。

以下のグラフを見ながら、トランプ政権下の経済推移を過去の政権と比較してみよう。


雇用者数

2020年までトランプ政権1期目は堅調な雇用者数の伸びを示していた。だが、パンデミックがわずか2カ月で米国の雇用を15%消し去った。5月以降は経済が回復してきているが、それでも失った数の半分ほどにとどまる。トランプ氏はどの政権よりも雇用の減少の点で最悪の状況のまま選挙に臨む。

対照的に、オバマ政権1期目の同時期は就任時より0.4%高い状況だった。政権開始当時は雇用者が月に何十万人も解雇する状況だったが、その後雇用の回復が本格化した。


失業率

トランプ氏は就任時、オバマ氏から米国の歴史上最も強い労働市場を引き継いだ。だが、新型コロナウイルスがそれに終止符を打った。失業率は14.7%に跳ね上がり、就任時より10ポイント高くなった。その後いく分数値は改善したが、9月時点でまだ高い水準にとどまる。これほどの失業率の増加に直面した大統領はこれまでにいない。


所得の中央値

トランプ氏は中間層の所得が自身の任期中にどれほど増えたのかについて話したがる。そして、それは最初の3年間本当だった。今年9月発表の国勢調査局のデータによると、2019年の世帯所得の中央値は6万8703ドル(現在の為替レートで約715万円)で、16年の金額からインフレ調整後で5800ドル、率にして9%の増加となった。強い労働市場が所得の上昇を助け、より多くの人がフルタイムで、通年で働くようになった。20を超える州が最低賃金を引き上げ、低所得層の所得も上昇した。

20年のデータはまだないが、パンデミックが大きく影響することは確実だろう。景気刺激策の1200ドルの小切手や失業保険給付の一時的な週600ドル増額の施策により、パンデミック下でも所得が増えた家庭もあるだろう。だが多くの人は家計のやりくりに苦労している。特に店を失ったり、長期の失業状態にあえぐ人々はそうだ。


S&P500

最長の強気の市場はオバマ政権が誕生して間もなく始まり、トランプ政権でも継続した。投資家はトランプ氏が2017年に実施した法人税減税を好感。中国との貿易戦争の影響も懸念されたものの、株価は記録破りの上昇を2020年まで続けた。だが同年のパンデミック開始で、S&P500は約1カ月で34%下落。その後夏の終わりには回復し、10月28日時点でトランプ政権開始時より44%高い水準となっている。素早い回復はトランプ氏にとって明るい兆しと言えるが、同時期のオバマ政権は75%、クリントン政権は63%の上昇率だった。


住宅価格

住宅市場はパンデミック下でも劇的な減退を経験しなかった数少ない市場の一つだ。記録的な低金利とリモートワークの増加は、都市の居住者が郊外の住宅を購入する動きへとつながり、多くの地域で住宅価格が上昇している。立ち退きや差し押さえの猶予を含めた幅広い措置も、苦境にあえぐ家計が当面の間危機をやり過ごすのを助けている。こうした支払いの猶予された請求書は最終的には何百万もの家計にふりかかり、住宅市場に痛みを与えることになる。だが現時点では、住宅価格はトランプ氏就任時から21%増となっている。


食品価格

もし最近のスーパーでの買い物で価格が高いと感じていたら、それはパンデミックで食品価格が突然上昇したことが要因だ。長い目で見ると、食品価格は比較的安定している。現時点と同じタイミングで過去のレーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ、クリントン、ジョージ・W・ブッシュの各政権を見てみると、食品価格は既に9%以上上昇していた。それがトランプ政権では6.1%、オバマ政権では5.9%にとどまっている。インフレ率の低い時代を反映した数値と言える。


個人消費支出

個人消費は米国の屋台骨であり、そう簡単には揺るがない。パンデミック開始時には大幅に支出が切り詰められたが、一度景気刺激策の小切手や失業保険給付の上乗せの支援が行われれば、5月や6月には再び財布のひもが緩むのも早かった。物品への小売り支出は素早く戻り、特にオンラインの小売りはそうだった(一方、散髪や旅行、レストランでの食事といったサービス支出はパンデミック開始以前の水準よりだいぶ低いままだ)。早い立ち直りは見せているものの、トランプ政権下の消費支出の現時点の伸びは、過去の5つの政権に比べ低い水準となっている。


製造業の雇用者数

米国の製造業の雇用者数がピークを迎えたのは1979年だ。その後クリントン政権を除いて誰も任期中に雇用者数を増やせていない。それだけに、トランプ氏の製造業での雇用を取り戻すとの公約は難題だった。だが、トランプ政権の最初の3年間は製造業の雇用者数がある程度増える結果となった。だが、2020年のパンデミックでそうした進捗(しんちょく)が吹っ飛んだ。9月時点で製造業の雇用者数は、トランプ氏就任時と比べて16万4000人、率にして1.3%減となった。ただ、レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ、オバマ、ジョージ・W・ブッシュの各政権ではさらに大きな雇用減となっていた。グローバリゼーションとIT産業の隆盛が米国の製造業の雇用を減少させていた。


連邦政府債務の対GDP比率

連邦政府の債務が米国の経済規模と比べてこれほどの高水準になったことは第2次世界大戦以降なかった。だが、それはトランプ政権だけが要因ではない。大規模な減税に踏み切ったレーガン政権下でも債務は増え、大不況の中で景気刺激策を打ったオバマ政権ではさらに急上昇した。

トランプ氏の就任時、債務はGDPの約76%に達していたが、2020年半ばには105%に到達。就任時からは29ポイントの上昇となった。経済学者は好況時に債務を減らし、不況時には財政出動すべきだと主張することが多い。だがトランプ政権下ではどちらの時期でも債務の増加が見られた。その多くは新型コロナウイルス流行への対応資金が要因だが、それ以前の時期については法人税の減税と国防支出の増加といった施策が債務の増加につながった。


GDP

経済活動の指標として最も広範なものとなるGDPは、国内で生産されたモノとサービスの価値を測定する。インフレ調整後の値で年率2~3%の成長率となることが多い。トランプ政権の最初の3年間は全てこの範囲に収まったが、2020年は大きく下落した。まだ年間の数値はわからないが、第2四半期は1947年の統計開始以来最悪の落ち込みとなった。29日に発表された第3四半期は落ち込みを部分的に回復した。

多くの経済学者は、企業や労働者がこの経済の落ち込みから回復するには数年かかると予測している。

(注)

GDPのグラフは各大統領の就任前年の第4四半期と比べた変化率を示している。所得の中央値のグラフは各大統領の就任前年と比べた変化率を示している。失業率と連邦政府債務の対GDP比率のグラフは、それらの数値が率を示すものであるため、就任時からの変化をパーセントポイントで示している。その他のグラフはすべて、各大統領が就任した1月からの変化率を示している。住宅価格のグラフにレーガン大統領のデータがないのは、データが入手可能なのは1987年以降でありレーガン氏の任期全体を評価できないため。

(出所)

非農業部門雇用者数(労働統計局)
失業率(労働統計局)
実質家計所得中央値(国勢調査局)
S&P500(リフィニティブ)
S&Pケース・シラー住宅価格指数
消費者物価指数の食品価格(労働統計局)
実質個人消費支出(経済分析局)
雇用者数の製造業部門(労働統計局)
連邦債務の対GDP比率(行政管理予算局)
実質GDP(経済分析局)

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