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世界を席巻する「ブサカワ」のぬいぐるみ、中国発のラブブ

ラブブの最新シリーズ「ビッグ・イントゥー・エナジー」のブラインドボックス=4月25日、バンコク

ラブブの最新シリーズ「ビッグ・イントゥー・エナジー」のブラインドボックス=4月25日、バンコク/Kochakorn Jaroensap-olarn/CNN

バンコク(CNN) アジア各地の人が先ごろ、世界中で消費者の熱狂を巻き起こしているコクレクターズアイテム「ラブブ」を手に入れようと、ショッピングモールやオンラインストアに殺到した。

北欧民話に着想を得たラブブは、歯が印象的なふわふわのフィギュアで、通常は手のひらサイズの「ブラインドボックス」に入っている。新作の発売に合わせ、バンコクからクアラルンプールまで各地の都市で人だかりができた。オンラインでも販売され、瞬く間に売り切れた。

ラブブの生みの親は香港生まれオランダ育ちのイラストレーター、カシン・ロン氏。ロン氏の「ザ・モンスターズ」シリーズに登場するラブブと仲間の生き物は2015年の誕生以来、熱心なファンを大勢獲得してきた。だが、セレブの支持を得てラブブの人気に火がついたのは、ここ1年のことだ。K―POPの人気グループBLACKPINK(ブラックピンク)のリサはラブブ愛をたびたび公言していて、最近もティーン・ヴォーグの動画で「ラブブは私の赤ちゃん」と語っている。

「ビッグ・イントゥー・エナジー」と題された新作では、愛や希望、幸せといった「感情」を表現する6種類のビニール製ぬいぐるみペンダント(と1種類の「シークレット」フィギュア)を扱っており、それぞれ新カラーで展開されている。

アジア各国での新作ラブブの値段は13~16ドル(約1890~2330円)。先月25日の発売直後には、一部のペンダントが米国の転売サイト「StockX」で最高90ドルで転売されていた。

バンコクのショッピングモール「セントラルワールド」では、ラブブの正規販売業者である「ポップマート」の支店が開く前から、数十人のファンが列をなしていた。事前予約の時間枠があったにもかかわらずこの混雑ぶりだ。

「ビッグ・イントゥー・エナジー」を買うためポップマートの店舗に殺到するファン=25日、バンコク
「ビッグ・イントゥー・エナジー」を買うためポップマートの店舗に殺到するファン=25日、バンコク
オーストラリアのコレクター、ローレンス・ユウさんが自身のコレクションを披露する様子/Lawrence Yu/@yunovaa_
オーストラリアのコレクター、ローレンス・ユウさんが自身のコレクションを披露する様子/Lawrence Yu/@yunovaa_

大学生のカモルワン・ポフファさん(21)は新作を手にするのが待ちきれなくなり、早めに家を出た。CNNの取材に「もう2年近くラブブを追いかけている」と語る。

「初めて見たときはちょっとブサイクだなと思った。でもSNSでひっきりなしに目に入ってくるし、友だちが夢中になっているので、私も追いかけている」(ポフファさん)

やはり列にいたオーストラリア出身の観光客エミリー・ジョンさん(27)は、帰国便に乗る前に一か八かでモールを訪れたものの、手ぶらで帰る結果になった。「並ぼうとしたけど、登録が必要だとは知らなかった」という。

ハタイラス・メクボリストさん(53)は、六つのペンダントが入ったボックスセットを購入。「幸運」と名付けられた一つを自分用に残し、残りは転売することに決めた。紫色のペンダントが「喉(のど)から手が出るほど欲しかった」と語った。

マイというニックネームの別の転売客(匿名希望)は、少数の仲間を率いて可能な限り大量購入していた。他国の顧客に転売すれば、小売価格の倍の値段で売ることも可能だと話す。

ラブブ(女の子という設定だ)が一躍世界的な人気を博したのは最近だが、その種は10年前から蒔(ま)かれていた。関連商品の正規販売を手掛ける中国玩具企業、ポップマートによると、最初はロン氏の絵本3部作「ザ・モンスターズ」に描かれた妖精の世界の背景にひっそり登場する脇役だったという。

ウサギのような耳と大きな丸い目、いたずらっぽい笑みが特徴のラブブ。同社のウェブサイトでは「心優しく、いつも手助けをしたいと思っているが、うっかり逆効果になってしまうことも多い」と紹介されている。

ロン氏(52)は以前、香港紙の明報に対し、エルフやトロール、妖精が登場する北欧民話に夢中になった幼少期に着想を得たと語っていた。ロン氏は幼少期にオランダへ移住し、シンプルな絵本を通じてオランダ語を学んだ。

ファンたちは、ラブブのぬいぐるみを服やバッグに留めてアクセサリーアクセントにすることが多い(先日のパリ・ファッションウィークでもそうした姿が目撃された)。ぬいぐるみがファン主催の交流イベントに持ち込まれたり、オンラインのマーケットプレイスに出品されて転売されたりすることもある。

日本が長年支配してきたコレクター市場で存在感を示す中国のポップマートは、ブラインドボックス方式でラブブを販売して成功を収めた。開封するまで中身が分からず、その点も魅力を高めている。「ザ・モンスターズ」シリーズは同社で最も売れているフランチャイズで、昨年の売上高は30億元(約600億円)に達した。

TikTokのようなSNSには、若いファンたちがハラハラしながらボックスを開封し、喜びを爆発させたり、時に落ち込んだりする動画があふれる。リアーナやBLACKPINKのロゼのようなセレブが一段と熱狂に拍車を掛けている。

BLACKPINKのリサは先月23日、インスタグラムのストーリーで、最新作の中からピンクと黄色のタイダイ柄のもふもふしたラブブを披露した。リサがファンであることを明かしたのは1年ほど前で、キャンプ服姿の大きなラブブを抱きしめる写真が拡散した。リサの支持がラブブ人気に火を付けた、特にポップマートで最大かつ急成長中の海外市場である東南アジアでは追い風になったとの見方が多い。東南アジアにおけるポップマートの年間売上は昨年619%増え、24億元を超えた。

ラブブのキャラクターに会うのを待ちわびている様子のタイのファン=24年7月1日/Narong Sangnak/EPA-EFE/Shutterstock
ラブブのキャラクターに会うのを待ちわびている様子のタイのファン=24年7月1日/Narong Sangnak/EPA-EFE/Shutterstock
茶色のラブブのぬいぐるみを付けたオレンジのエルメスのバッグを持ち歩くゲスト=25年3月8日、パリファッションウィーク/Raimonda Kulikauskiene/Getty Images
茶色のラブブのぬいぐるみを付けたオレンジのエルメスのバッグを持ち歩くゲスト=25年3月8日、パリファッションウィーク/Raimonda Kulikauskiene/Getty Images

原文タイトル:Labubu: The ‘kind of ugly’ plush toy that has taken the world by storm(抄訳)

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