iPhone登場から10年、アップル関係者が語る誕生秘話
秘密厳守
iPhoneは2007年のマックワールドで正式デビューを果たすまで、アップル本社で極秘プロジェクトとして扱われた。iPhoneの開発が始まったのは2004年末。プロジェクトには数百人の従業員がかかわった。
アップルはこのプロジェクトのために1つのフロアを割り当てて、防犯カメラと従業員のバッジ読み取り装置を完備した。この施設は「パープルドーム」と呼ばれ、扉の外に出たらこのプロジェクトのことを口にしてはいけない、というルールが徹底された。
従業員は、同僚にも家族にも、自分の仕事のことを話せなかった。強いプレッシャーと長時間労働に耐えかねる従業員もいた。自分の子どもに会えない時間が一番長いのは誰かをめぐって言い争いになった従業員が、オフィスの扉を乱暴に閉めて錠を壊してしまったこともあった。修理業者を呼んで開錠してもらうことができなかったため、フォーストール氏やグリニョン氏ら従業員が交代で、金属バットを使って扉をたたき続けたという。
日の目を見なかったアイデア
iPhoneが完成するまでには、幾つもの試作品が失敗に終わった。ダイヤル式の電話のように、数字とアルファベットが並んだダイヤルを搭載するアイデアもあったという。
キーボードをなくすことについても相当の論議があったが、最終的にはこれが成功に結び付いた。「ハードウェアのキーボードにするか、ソフトウェアのキーボードにするかは最大の決断だった」。アップル元幹部のトニー・ファデル氏はそう振り返る。「ハードウェアキーボードの良さは決して出せない。しかしハードウェアキーボードがない分、それ以外のメリットが実にたくさんあった」