米議事堂襲撃、13日の公聴会が導く7つのポイント

13日に行われた公聴会の様子。スクリーンにトランプ前大統領の映像が映っている/Al Drago/Bloomberg/Getty Images

2022.06.14 Tue posted at 18:15 JST

(CNN) 昨年1月6日に発生した米連邦議会議事堂襲撃事件を調査する下院の特別委員会は13日、今月2度目となる公聴会を開催した。今回詳細が明らかになったのは、当時のトランプ大統領周辺の人物らがどのような形で2020年の大統領選での敗北を同氏に告げていたかについてだ。

そうしたやり取りがあったにもかかわらずトランプ氏は聞く耳を持たず、自身の弁護士のルディ・ジュリアーニ氏とともに選挙が盗まれたとする虚偽の主張を信じ込むに至った。

今月2度目の公聴会の要点を以下にまとめる。

突然の証人欠席にも迅速に対応

委員会は12日、公聴会の証人としてトランプ氏の陣営の責任者だったビル・ステピエン氏本人が証言すると発表し、傍聴人らを驚かせた。しかしステピエン氏は13日午前、妻が産気づいたとして突如公聴会を欠席した。

この予定変更に委員会は戸惑ったものの、無難に対応した。ただ公聴会自体は45分の遅れを余儀なくされた。

議員らと委員会のスタッフは事前にステピエン氏個人による宣誓証言の動画を準備していた。公聴会でたっぷり流れたその動画の内容は、同氏とトランプ氏との会話に関する新たな詳細を明らかにするもので、大統領に対し、投票日の夜に早々と勝利宣言しないよう助言したことなどが含まれていた。

ある意味で、今回の結果から民主党議員の運営する委員会は、より大きな力を発揮して国民に向けたステピエン氏の証言内容をコントロールすることができた。ステピエン氏本人が公聴会に出席していれば、トランプ氏をいくらか擁護したり、委員会に対して何らかの反論を行った可能性もあった。しかし実際のところ委員会は、公聴会で再生する宣誓証言の動画を自分たちで選び取れたのであり、その内容をトランプ氏にとって最も不利になるものに絞り込んでいた。

長い宣誓証言

委員会はウィリアム・バー元司法長官の長い宣誓証言動画も再生した。その中でバー氏は、トランプ氏による不正選挙の主張がなぜ「偽り」なのかを詳細に説明。以後も自身が不正を確信するだけの事実が全く見つかっていない理由について詳述した。

そのうえで当時の心境を振り返り、「いささかがっくりさせられた」と発言。もし本当に不正選挙が行われたと信じているとしたら、トランプ氏の考えはすっかり現実離れしてしまっている、そう思ったからだと語った。

宣誓証言の動画はトランプ氏の長女のイバンカ氏やその夫のジャレッド・クシュナー氏のものも流されたが、こうしたトランプ氏周辺の人々が証言のため公聴会に出席することはなかった。流れた内容は委員会による抜粋だった。

不正を突き止めようとする動きがなかったわけではない。バー氏はトランプ氏に不正を否定する助言を行う数週間前、物議をかもすメモによって検察当局者らに対し、選挙犯罪の訴えを調査することを認めていた。票の承認が行われる前でのこうした動きを受け、当時は司法省の幹部の一人が辞任する事態も起きていた。バー氏は不正を探したものの、それを発見してはいなかった。

虚偽を暴く最高位の閣僚に

任期中はトランプ氏寄りの行動が目立つとして民主党議員らに叩かれていたバー氏だが、この2週間はさながらリベラル派の新たな英雄と化し、トランプ氏の20年大統領選にまつわる虚偽を盛んに暴露、糾弾している。

これまでのところ、民主党が運営する委員会の流した証言者の動画の再生時間は、バー氏の宣誓証言が最も長い。委員会は1年がかりの調査の一環として1000人を超える人々から聞き取りを行っている。今回の動画再生を受け、バー氏はトランプ政権の中で選挙結果の正当性を認める閣僚として最高位の人物となった。

13日の公聴会で、バー氏はトランプ氏が支持する不正選挙にまつわる複数の主張を取り上げ、否定した。具体的にはミシガン州デトロイトでの違法な「票の廃棄」、投票集計機メーカーのドミニオン・ボーティング・システムズが自社の集計機で行ったとされる全国規模の票の操作、その他の陰謀説だ。

バー氏は誰に促されるでもなく、映画「2000 MULES(仮訳:2000人の運び屋)」の批判にも踏み込んだ。同作品を制作した右派の活動家、ディネシュ・ドソウザ氏は重罪で有罪判決を受けた人物で、20年の大統領選が盗まれたものだと主張している。(13日の宣誓証言の中で、バー氏は映画を一笑に付し、証拠が「完全に欠如している」と述べた)

バー氏はトランプ氏の擁護する言説は「馬鹿げていて」「素人臭く」、「現実とかけ離れている」と指摘。こうした言い回しは、民主党議員のトップらがトランプ氏の選挙不正にまつわる主張について長く用いてきたものと酷似している。

一方で、バー氏は依然として強硬な保守派でもある。ほんの2~3週間前にはFOXニュースのインタビューに答え、トランプ氏とロシアの関係を巡る調査について、いくつか事実と異なる主張を展開していた。

証言動画に登場した(左から)イバンカ氏、ステピエン氏、クシュナー氏

正当性を告げられても虚偽の主張を広めたトランプ氏

13日の公聴会で主要な焦点の一つとなったのは、次のような見方を強調することだった。すなわちトランプ氏並びに同氏の同調者の一部は、選挙で不正が行われたとする虚偽の主張を、正当性がないと直接告げられてからもなお広め続けたという見解だ。

委員会によれば、トランプ氏はバー氏やステピエン氏を含む側近らから不正の主張には根拠がないことを再三告げられていた。トランプ氏が支持した不正疑惑のケースは数え切れないほどあったが事実無根で、選挙が盗まれた証拠にはならないと、これらの側近は訴えていたという。

バー氏は宣誓証言の中で、ドミニオンの投票機にまつわる主張に特に言及。多くの人々に影響を及ぼす衝撃的な内容であり、最も不快に感じる部類の主張だったと明かした。

それでもトランプ氏と同調者の一部は、こうした虚偽の主張を21年の1月いっぱいを通じて支持し続けた。委員会はこの点を取り上げ、選挙結果を覆そうとする不誠実な試みがなされたことを示そうとした。

「チーム・ノーマル」とジュリアーニ氏とのにらみ合い

委員会が強調したところによれば、大統領選から数日後、トランプ氏に助言を与える人々は2つのグループに分かれた。不正の主張を虚偽だとする「チーム・ノーマル」と、根拠のない選挙不正の言説を推すジュリアーニ氏につくグループだ。

ステピエン氏は委員会が流した動画の中で、「自分がチーム・ノーマルの一員とみなされることは気にならなかった」と証言した。

委員会によれば、大統領選の晩に2つのグループは意見が割れた。ステピエン氏らが勝利宣言するのは早いとトランプ氏に告げる一方、ジュリアーニ氏は勝利宣言するよう述べていたという。

委員会はまた、トランプ氏の陣営の報道官を務めていたジェイソン・ミラー氏の宣誓証言も流した。この中でミラー氏は、大統領選の晩、ジュリアーニ氏が酒を飲みすぎていたと証言。完全に酔っぱらっていたが、トランプ氏と話していた時にどの程度の酔い方だったかは分からないとした。

動画の中で宣誓証言を行うバー元司法長官(中央右)

陣営の財務に関する調査の詳細も公開

委員会はまた、トランプ氏による選挙にまつわる虚偽が巨額の資金を生んだ経緯についても明らかにした。これらの資金は同氏の選挙陣営や選挙後に設立された政治活動団体によって集められた。

委員会によれば、選挙不正に絡めた資金集めの取り組みの結果、同氏と同調者らには2億5000万ドルの資金が寄せられたという。

委員会は裁判所を通じて、連邦議会議事堂襲撃とつながりのある銀行記録などの財務書類を調査。13日の公聴会で、こうした記録を今後どのように使用する計画なのかを初めて示唆した。

入手した財務書類の膨大な詳細は明らかにしなかったが、それらは次回以降の公聴会で公開される可能性がある。

不正と暴力の関連付け

選挙にまつわるトランプ氏の虚偽の暴露に焦点を当てた2時間の公聴会は、21年1月6日に起きた議事堂襲撃事件の暴力に立ち戻って幕を閉じた。

委員会のベニー・トンプソン委員長が紹介した動画からは、事件当日にワシントンへ行き、議事堂に侵入した人々が選挙についての虚偽を信じてそうした行動に出たことが見て取れる。

動画の中でトランプ氏の支持者らは、ドミニオンのソフトウェアやトランプ氏の票がカウントされなかったといった根拠のない主張を信じていたと語った。

暴力への回帰は今後の公聴会でも引き続きテーマとなる公算が大きい。今週には、トランプ氏が司法省やペンス副大統領(当時)に圧力をかけた一連の行動について公聴会で取り上げる予定。

ガーランド司法長官は13日、委員会の主催する公聴会をすべて視聴する計画だと述べた。議事堂襲撃に絡む刑事事件を扱う検察官らも同様に視聴しているという。ガーランド氏には民主党議員らが一段の圧力をかけ、議事堂襲撃に関連した刑事裁判をトランプ氏とその同調者に対して起こすよう迫っている。

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