琥珀に完全な姿で保存、9900万年前の花を発見 ミャンマー

琥珀の中に完全な状態で保存されているのが見つかった花の1つ/Shuo Wang

2022.02.04 Fri posted at 07:07 JST

(CNN) 恐竜たちの足元で花開き、琥珀(こはく)の中に完全な状態で保存されているのが見つかった花々から、現在の南アフリカに自生する被子植物の一部は9900万年の間変化していないことが示唆される。そのような内容の研究が先月31日、科学誌「ネイチャー・プランツ」で発表された。

現在ミャンマーが位置する地でかつて開花した2種類の花は、被子植物がどのように進化したのかについて明らかにする可能性があるという。

花の命ははかなく、開花して果実へと姿を変えた花々はその後、消え失せる。それゆえ太古の花々の姿は化石としてうまく残らないことから、今回発見された花々、および花々が携えてきた歴史はとりわけ貴重なものと言える。

論文の著者である、英オープン大学環境・地球・生態システム科学部のロバート・スパイサー名誉教授は、「花に比べて葉は一般的に、数多く生成されるとともに、はるかに頑丈であり、保存の点でより優れた力を潜めている。葉は寿命が尽きると『そのままの姿』で散る一方、花々は実へと姿を変え、種子の散布過程の一環として、食べられたり分解されたりする」と説明。

南ア・ケープタウンの植物園に現在自生するフィリカ属の植物

中国・シーサンパンナ熱帯植物園でも客員教授を務めるスパイサー氏は、「(今回発見された)注目すべき花々は、現代の近縁種とほぼ同一のもので、大きな差異は本当にない」と述べた。

被子植物の進化と拡散は、多くの生物たちを我々が今日認識しているような姿に形づくった点で重要な役割を果たしたと考えられている。またそれが、昆虫や両生類、哺乳類、鳥類の多様化を引き起こし、究極的には海中の生命に比して陸上の生命がより多様化する最初の画期となった。

「被子植物は他の植物類よりも素早く増殖し、授粉媒介者としばしば親密な『協業関係』にあるケースといった多種多様な花の形態、つまり複雑な繁殖のメカニズムを備えている。これが多くの動植物双方の共進化を促し、生態系を形作った」と、スパイサー氏は語った。

琥珀の中に保存されていた花2種はそれぞれ、今日南アフリカを原生地とするフィリカ属の花々と同属とされる。

今回の発見は、被子植物の進化の初期段階を解明するヒントにもなり得るという

謎が解けた?

被子植物は白亜紀(1億4500万年前から6600万年前の期間)の化石に突然登場する。それ以前の地質時代には明確な祖先となる系統が見当たらず、「進化論」で有名なチャールズ・ダーウィンを困らせた。

ダーウィンが唱える自然選択説では、進化上の変化は長い時間かけてゆっくりと進むものとされる。これと直説矛盾する現象のように見えたため、ダーウィンはこれを「忌まわしい謎」と呼んだ。

スパイサー氏によれば、被子植物の正確な出現時期はわからないものの、この琥珀に保存された初期の花には謎を解明するヒントがあるという。

この標本は、火災の多い地域の花に見られる特徴と同じ特徴を有している。フィリカの全150種類が自生する南アフリカのフィンボス地域もそうした地域だ。今回発見された中には、一部が焼けた植物を閉じ込めている琥珀もあった。

スパイサー氏は「この初期の花の全詳細が琥珀に保存されており、それはまさに被子植物が世界に広がり始めた時期のものだ。それが示すのは季節的な乾燥環境へのすばらしい適応であり、植物が頻繁な野火に遭っていたことを裏付ける」と語る。

さらに「もし多くの初期の花が半乾燥地域で火災に遭っていたのなら、被子植物の進化の初期段階が化石の記録にほとんど出てこない理由がわかる。化石は通常、そうした半乾燥の環境では形成されないからだ」と述べた。

スパイサー氏は、火災は長期にわたり頻繁に起きていたと見る。進化の過程で、花が火災に対応できる形になり、焼けた土地で生き延びる種を生み出す形態になっていったとの考えだ。フィリカの場合、花は細枝の先に集まった葉によって守られている。

今日見られる多くのシダ類や裸子植物、一部の被子植物は恐竜時代に発達した。スパイサー氏は、今回発見された花の一つは、ほぼ同一の現存する種があるとわかった初の被子植物の化石になるとみている。

恐竜時代の琥珀の化石はミャンマー北部のカチン州の地層にしか見つかっていないが、近年、琥珀の産地で人権侵害に関する倫理的懸念が持ち上がっている。古脊椎(せきつい)動物学会は、軍が一部産地の実権を握った2017年以降にミャンマーから調達した琥珀について、研究を一時停止するように呼びかけている。

スパイサー氏は今回の琥珀は16年以前に地元の販売業者から入手し、当時の規則に基づき合法的に手に入れたものだと述べている。

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