深刻な宇宙ごみ問題、ロシアの対衛星ミサイル実験が追い打ち

ロシアのミサイル実験で大量の宇宙ごみが発生しISSの乗組員は緊急避難を強いられた/NASA/Getty Images

2021.11.18 Thu posted at 20:30 JST

(CNN) 世界の大国が英グラスゴーでの国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を終えた数日後、もうひとつの環境緊急事態が発生した。今度の現場は宇宙だった。

ロシアは15日、自国の人工衛星の一つに向けてミサイルを試験発射。数千個の宇宙ごみが発生し、国際宇宙ステーション(ISS)の乗組員が緊急避難する事態となった。

この対衛星実験は米当局者により、今後長年にわたって宇宙活動に脅威を及ぼす可能性のある「無謀で危険な行為」と非難され、科学界からも非難の声が相次いだ。

米宇宙軍によると、今回の実験で生じた追跡可能な宇宙ごみは1500個あまり。これらの断片はISSに滞在する乗組員7人(ロシア人2人を含む)や、地球に重要な通信サービスを提供する他の人工衛星に危険を及ぼす。

ただし欧州宇宙機関(ESA)によると、新たに生じた宇宙ごみ以外にも、地球を周回する宇宙ごみは9600トンあまりに上る。

旧ソ連が初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げてから60年以上を経て、宇宙のごみ捨て場は拡大する一方だ。専門家からは、気候危機に直面する地球と同様、宇宙も人類の活動の影響を受けていると警鐘を鳴らす声が上がる。

英サウサンプトン大学のヒュー・ルイス教授は「地球の海におけるプラスチックの蓄積と、地球周回軌道上のごみの蓄積はよく似た問題とみなすことができる」と指摘する。

宇宙ごみはCOP26の首脳級会合では交渉の俎上(そじょう)に上がらなかった。

宇宙ごみはソフトボール程度の大きさでも人工衛星を損壊させる恐れが十分にある

空のごみ捨て場

夜空に見えることはないが、地球の周回軌道上には数億個のごみが存在する。これらごみは古い衛星の一部や機能停止した衛星全体、ロケット本体からなる。

米航空宇宙局(NASA)による1月の報告書によると、地球を周回する宇宙ごみのうち、少なくとも2万6000個はソフトボール以上のサイズがある。これは人工衛星を損壊させるのに十分な大きさだ。また、ビー玉程度の大きさで宇宙船を破損させうる断片が50万個以上、塩の粒ほどの大きさで宇宙服に穴を空ける可能性のある断片が1億個超ある。 

こうした断片同士が衝突することで、より小さな宇宙ごみが一段と増える可能性もある。

宇宙追跡サービスのレオラブスによると、ロシアのミサイル実験で生じた宇宙ごみは高度440~520キロの範囲に広がっている。

この高度あたりの宇宙ごみは「気がかりだが、多くの意味で恩恵でもある」とルイス氏は語る。同氏の説明では、こうした宇宙ごみは基本的に「降り注ぎ」、地球の大気圏に再突入する際に「燃え尽きる」という。

ただ、ロシアの最近のミサイル実験により、人工衛星による「障害物の衝突回避行動は大幅に増える」。そう指摘するのはESAに所属する宇宙ごみの専門家、ティム・フロフラー氏だ。

フロフラー氏はまた、通信や気象予報、全地球測位システム(GPS)のような人工衛星に依存するサービスの重要性にも言及した。

人々が日々の生活で宇宙ごみの影響を直接感じることはないかもしれないが、社会が「地上の膨大なサービスのインフラとして宇宙に依存する」例は増えているという。

「もし宇宙ごみの量が今後どんどん増えていけば、人類全員による宇宙の将来の利用が脅かされる」(フロフラー氏)

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