ステロイド薬に新型コロナの死亡リスク低下させる効果 英国で治験

「デキサメタゾン」が新型コロナの死亡率を低下させるとする研究結果が発表された/Yves Herman/Reuters

2020.06.17 Wed posted at 10:20 JST

(CNN) 関節炎やアレルギーなどの治療に幅広く使われているステロイド薬の「デキサメタゾン」に、重症の新型コロナウイルス感染症患者の死亡率を低下させる効果があることが分かったとして、英オックスフォード大学などの研究チームが16日に記者会見を開いて発表した。

この結果はまだ医学誌などには発表されていない。しかし研究にかかわっていない専門家も、画期的な成果として評価するコメントを寄せている。

発表を行ったのは、新型コロナウイルス治療について研究している英国の研究機関、リカバリー・トライアルの研究チーム。病院に入院して人工呼吸器を装着されている患者を対象とした臨床試験では、死亡リスクが3分の1低下する効果があったとしている。

臨床試験にかかわったオックスフォード大学のマーティン・ランドライ教授はこれについて、「非常に有望な結果」と位置付ける。人工呼吸器ではなく酸素吸入を受けている患者についても、リスクが5分の1低下することが分かったという。

一方で、入院していても肺が十分に機能していて人工呼吸も酸素吸入も必要としない患者については、効果は確認できなかった。

今回の臨床試験は、入院していない患者は対象としていない。ランドライ教授は「まだ疑問は残っている」と述べ、自宅で療養している患者が自分でデキサメタゾンを服用すべきではないと強調した。

臨床試験は、病院に入院している新型コロナウイルス感染症の患者を無作為に抽出して約2100人にデキサメタゾンを投与し、約4300人には一般的な治療を行った。

デキサメタゾンは1日に6ミリグラムずつ、最大で10日間、注射または経口で投与した。デキサメタゾンを投与された患者に今のところ重大な副作用は確認されていない。

デキサメタゾンは一般的に、関節炎や重度のアレルギー、ぜんそく、特定のがんなどの治療薬として使われる。胃の不調や頭痛、めまい、不眠、うつなどの副作用が出ることもある。価格は低いもので約8ドル(約860円)。米国では既に、一部の患者の治療に使われている。

研究チームは今回の結果を受け、英国で人工呼吸や酸素吸入を必要とする新型コロナウイルス感染症患者については、これを標準的な治療法とすべきだとの見解を示した。ただ、リカバリー・トライアルは引き続き他の治療法についても研究を続ける意向。

英政府の科学顧問、パトリック・バランス氏は、リカバリー・トライアルのニュースリリースの中で、「デキサメタゾンが新型コロナウイルスの死亡率を低下させることのできる最初の薬であることが、今回の臨床試験で示された。安価で広く流通している医薬品であることから、特に期待が大きい」とコメントしている。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。