米国が経済制裁を再開、イランに及ぼす影響は?

トランプ政権が再開した経済制裁はイランにどのような影響を与えるのだろうか/CNN Illustration/Getty Images

2018.08.08 Wed posted at 16:39 JST

(CNN) イラン核合意から離脱したトランプ米政権による対イラン経済制裁が再開された。7日に始まった第1弾では、イランによる米ドルや金、貴金属の購入が禁止される。経済制裁はまた、通貨リアルによる取引や自動車産業にも大きな影響を与えそうだ。経済制裁の再開は短期的、長期的に、イランに対してどのような影響を及ぼすのだろうか。

世界の大部分は11月に始まる第2弾の石油やガスに対する制裁に注目しているが、第1弾の制裁も脆弱(ぜいじゃく)なイラン経済に対して、多くの人たちが現在予想しているよりも大きな打撃となりそうだ。

トランプ大統領が核合意からの離脱を宣言して以降、通貨リアルは暴落している。リアルの下落は、イラン経済を待ち受ける混乱についての最良の経済的指標といえそうだ。

イランは外界に向けて完全に開放されていない最後の主要な新興市場だ。8000万人の消費者を擁し、人々の教育水準は高く、貴金属など天然資源も豊富だ。

米国による経済制裁は、少なくともトランプ大統領の任期が残っている間は、潜在力を発揮しようとするイランの取り組みにとって大きな打撃となるだろう。

イランは自国に巨大な消費市場を持っており、3億人規模の消費者を擁する中東や北アフリカでは主要な工業国だ。経済制裁は、原材料や主要部品へのアクセスを制限することで、イランの鋼鉄やアルミ、自動車といった産業に打撃を与えるよう計算されている。

過去数カ月の間に米国が経済制裁の再開に言及しただけで、2015年の核合意後に築き上げてきたあらゆる活気が勢いを失っている。

15年のリセッション(景気後退)後、イラン経済は16年に12.5%の成長を記録した。今年も堅調な伸びを示すとみられている。国際通貨基金(IMF)の試算によれば、今年の経済成長率は4%だ。しかし、これは、米国が核合意から離脱する前に計算されたものだ。

トランプ氏は大統領選期間中から核合意離脱を公約として掲げていた

核合意後は欧州の主要企業が数十億ドル単位の契約を次々と結んでいった。しかし、資本調達と法人株主による投資の両方の観点から米金融街は重要であり、欧州企業は経済制裁第2弾のリスクに直面することはできない。

米国はイランの指導層と一般の人々との間に不和を引き起こし、最終的には政権交代を目指していると信じている人は多い。米政府は政権交代について否定している。

通貨リアルの暴落は一般のイランの人々にとっては大きな打撃だ。失業率は上昇し、特に若年層が厳しい状況に陥っている。輸入品のコストのせいでインフレも進んでいる。断続的な経済制裁が何年も続いていることでインフラへの投資が不十分なため水や電気が不足している。

ハメネイ師を最高指導者とする政治体制は、穏健派とみられている政府と強硬派の軍とのバランスを取ろうとしている。人々からの圧力を受けるのは今後もロハニ大統領ということになるだろう。

米政府に対して強い不信感を抱いている強硬派が勢いづくのは間違いない。強硬派はまた、国内のあらゆる場所に勢力を伸ばしていることから、イランが世界経済に対して完全に開かれた場合には失うものが最も多い存在でもある。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。