ワシントン(CNN) ロシア政府の工作員として米国への政治介入などを図った疑いで、米司法省がロシア人の女を逮捕していたことが17日までに分かった。
司法省によると、ロシア国籍のマリア・ブティナ容疑者(29)は15日に逮捕され、16日に首都ワシントンの裁判所に出廷した。
同容疑者の逮捕は16日、トランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領がフィンランドの首都ヘルシンキで会談した数時間後に発表された。
法廷文書やCNN取材班によると、ブティナ容疑者は2016年米大統領選の前後約3年間、ロシア政府高官の指示を受けて米国の政治団体に入り込み、対ロ政策の改善などを目指して活動していた疑い。
司法省は高官を名指ししていないが、この人物はロシア中央銀行のアレクサンドル・トルシン副総裁とみられる。トルシン氏は元議員で、今年4月に米政府がロシア政府関係者らに科した制裁の対象となった。
トルシン氏とブティナ容疑者は、共和党を支持する有力ロビー団体の全米ライフル協会(NRA)を通して共和党指導部や政財界の要人らに近付いたとみられる。トルシン氏はかねて、ロシア人でNRAの終身会員になっているのは自分とブティナ容疑者だけだと自慢していた。
2人はNRAの人脈を使い、大統領選の共和党候補だったトランプ氏とプーチン氏の間に裏ルートを設けようとしたこともある。この試みについてはCNNがすでに報じていた。
ロシアによる政治介入をめぐっては、マラー特別検察官も捜査を進め、先週ロシアの情報要員12人を起訴したばかり。ロシア政府は米大統領選前にさまざまな手段で米国の政治に影響を与えようとしていたことがうかがえる。
ブティナ容疑者の弁護士は16日の声明で、同容疑者がロシア政府の工作員だった事実はないと主張した。弁護士によれば、ブティナ容疑者はワシントンにあるアメリカン大学の大学院修士課程で国際関係を学び、優秀な成績で修了した。
連邦捜査局(FBI)は今年4月、ワシントンにあるブティナ容疑者のアパートを家宅捜索していた。同容疑者は当局に協力し、上院情報委員会でも証言したり、マラー氏の聴取に応じると申し出たりしてきたにもかかわらず、事前予告なしに突然逮捕されたという。
本人も昨年4月、米紙ワシントン・ポストの取材に対し、「米国人との人脈づくりについて、政府当局者から接触されたことは一度もない」と主張していた。