(CNN) 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏がマレーシアの空港で殺害された事件で、正男氏が死亡時に、殺害に使われたとされる猛毒の神経剤「VX」の解毒剤を所持していたことが2日までに分かった。マレーシア国営メディアが伝えた。
国営ベルナマ通信によれば、マレーシアの裁判所で今週、正男氏が空港でVXとされる物質をなすり付けられた際、リュックに解毒剤のアトロピンを12回服用分所持していたとの証言があったという。
被告の弁護士も報道内容をCNNに確認。政府の毒物学者が先月29日、警察から提供された他の複数のサンプルとともにアトロピンを鑑定したと法廷で証言したことを明らかにした。
同弁護士は法廷証言の内容として、正男氏は錠剤の形でアトロピンを所持していたと明かしたが、ベルナマ通信は、正男氏が持っていたのはアトロピンを入れた「ガラス製の小瓶」だったとしている。
米病院薬剤師会(ASHP)によれば、アトロピンは「化学神経剤にさらされた際や殺虫剤中毒時に身を守る第一の手段」を提供するものだという。
豪シドニー大の薬学専門家は、「誰かが神経剤で襲ってくると分かっている場合、アトロピンは所持しておきたいと考えるであろう主要な薬物だ」と解説した。
正男氏は中国のマカオにある自宅に戻る途中、クアラルンプール国際空港でVXをなすり付けられたとされる。監視カメラの映像には、インドネシア人とベトナム人の女2人が正男氏に歩み寄り、同氏の顔に手をこすりつける様子などが映っている。
マレーシア当局はこの2人について、北朝鮮の工作員からVXを正男氏の顔になすり付けるよう訓練されていたと主張。一方、被告はテレビのいたずら番組への出演だと思っていたとして殺意を否定。北朝鮮側も暗殺への関与を再三否定している。
金正男氏、殺害時にVX解毒剤を所持