絶対の機密保持を目指して――オバマ大統領のブラックベリーを作った男

「ブラックベリー中毒」として知られるオバマ大統領。手にしているのは・・・

2014.07.27 Sun posted at 17:47 JST

ニューヨーク(CNNMoney) 米国家安全保障局(NSA)がオバマ大統領専用スマートフォンの製造を依頼されたのは2008年のことだった。

開発を手掛けたNSAの元技術部長リチャード・ジョージ氏は、「皆、本当に大変だった」と当時を振り返る。大統領用のスマートフォンには絶対の機密保持が求められるためだ。

オバマ大統領の要請を受けたNSAは研究室を設立。数十人の専門家が集まり数カ月にわたって改良を重ねた。端末の内部に手を加え、通信の安全を脅かす要素をすべて取り除く作業を行った。ジョージ氏は、アルゴリズムの検査や端末の設計などを手掛けた。

この結果、大統領専用のブラックベリーは実に味気ないものになった。例えば、人気の携帯端末向けゲーム「アングリーバード」はプレーできない。機能を極力そぎ落とし、少しでも情報漏れの危険のある機能もすべて排除したためだ。

ジョージ氏によると、オバマ大統領は、側近と連絡を取る手段として携帯電話を欲しがったようだ。同大統領が「ブラックベリー中毒」であるのは周知の事実だったが、スマートフォンモデルにすることを選択したのはNSAのほうだという。

大統領の端末がハッキングされるわけにはいかず、開発には多くの労力が必要だった

こうして完成した大統領専用スマートフォンがどのような機能を持っているのか、正確なところは秘密にされている。テキストメッセージや電子メールを送ることが可能かどうかさえ、NSAでは明らかにしてない。

当時、大統領がみずからの端末を通じて直接に連絡を取ることができた電話は、わずか10台。それでも、開発は楽ではなかった。

通信を秘匿化するため、電話の受け手とかけ手の側で同一の暗号化アルゴリズムを共有するか、ゲートウェイを利用して通信をいったん暗号化したあと解読する必要があったからだ。比喩的にいえば、同一の秘密の言語によって電話同士がやり取りするか、あいだに一種の翻訳者を介在させなければならなかった。

モバイル端末自体は2008年以前から存在していた。だが、仮に当時の各国の首相がスマートフォンを持っていたとしても、ポケットに入るような小型の端末ではなかっただろうというのがジョージ氏の推測だ。同氏は「まるでレンガのよう」だったのではないかという。

ジョージ・W・ブッシュ前大統領やクリントン元大統領も専用携帯電話を持っていたかもしれないが、やはり重い大型端末であった可能性が高く、自分で実際に携帯していたとは想像しがたい。

ジョージ氏はロシア政府との間のホットラインの開発にも参加したという

当時、90年代から2000年代初期にかけて広く使われていたのは、STU-Ⅲと呼ばれる機密通信用の固定電話だ。外見はごく普通の電話だが、特別な回線が接続されている。

他にもジョージ氏は、米大統領とモスクワのロシア政府を直通で結ぶ緊急ホットライン、通称「レッドホン」の開発にも参加している。同氏のチームが暗号化アルゴリズムを決めた。ロシア側に最高機密のアルゴリズムを知らせるわけにはいかず、どのアルゴリズムを使うべきか、頭を悩ませた。

さらに、レッドホンは緊急連絡用なので、いかなる時でも確実に機能する必要がある。同氏は「そこが難しいところだった。携帯電話ならば、使用時に機能するかそこまで心配しなくても済む。自分たちが怒られるだけだ。だが、ホットラインが機能しないようなことがあれば・・・」と振り返る。

ちなみに、ジョージ氏本人が使っている端末はブラックベリーだが、契約期間が終われば変更するつもりだという。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。