政治的混乱から半年、大統領選の投票始まる 韓国
ソウル(CNN) 半年前から続く政治的混乱と不確実さ、分断を経て、韓国の有権者は3日、新たな大統領を選ぶための投票を開始した。有権者は、昨年12月に戒厳令を宣言して民主国家を混乱に陥れ、弾劾(だんがい)・罷免(ひめん)された尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領の後任を選ぶことになる。
今回の選挙は格別に重要だとみられている。韓国は米国の同盟国であり、アジアの経済・文化大国だが、尹氏の弾劾裁判とその後の暫定政権で6カ月間漂流してきた。この間、トランプ米大統領の「貿易戦争」と世界的不況の懸念が重なる中で韓国経済は低迷した。
有権者の前には「国を立て直す」と約束する2人の有力候補が立つ。一人は暗殺未遂を生き延び、複数の裁判を抱える人権派弁護士出身の改革派、もう一人は反体制活動家から転じた保守派の閣僚経験者だ。選挙結果は3日深夜から4日にかけて判明する見通し。
主要候補の一人が、進歩(革新)系最大野党・共に民主党の李在明(イジェミョン)前代表(60)。貧しい家庭で少年工として働きながら学費を稼ぎ弁護士に。その後政界入りすると、市長、知事を歴任し、2022年大統領選では尹氏に僅差(きんさ)で敗れた。24年1月には街頭演説中に首を刺される暗殺未遂に遭った。
選挙戦では、大統領の戒厳令発動権限の制限や、大統領任期を現行の1期5年から2期各4年へ改憲する政治・経済改革を訴える。
保守系与党・国民の力の金文洙(キムムンス)氏(73)氏は、大学時代に労働運動で除籍・収監されたことがある。後に保守政党に合流し、雇用労働相を務めた経験を持つ。
与党は当初、金氏を擁立したが、前首相の韓悳洙(ハンドクス)氏への乗り換えを画策。金氏が法的手段で対抗し最終的に候補に復帰した経緯から、党内は依然分裂気味で世論調査でも李氏を追っている。
このほか、保守系野党・改革新党の李俊錫(イジュンソク)氏ら第三勢力や無所属候補も出馬している。
焦点となっている課題は
有権者の最大の関心事は、低迷する経済と上昇する生活費だ。若年層の失業率が上昇したほか、個人消費が低迷。今年1~3月期には経済が予想外のマイナス成長となった。
その一因は、トランプ氏による貿易戦争だ。輸出依存型の韓国経済は大きな打撃を受け、米国向け輸出は4月上旬に米国の関税が発動されて以降急減した。
両国政府は関税問題で協議を重ねているが、国内の政治的混乱が交渉を遅らせており、新たな韓国大統領が選出されるまで実質的な合意は難しいとの見方が強い。
このため主要候補はいずれも経済対策を前面に掲げ、物価の安定や住宅・教育・雇用の機会改善を約束している。