豪総選挙、与党・労働党が勝利して政権維持 反トランプ感情の試金石
豪総選挙、与党・労働党が勝利へ
ブリスベン/シドニー(CNN) オーストラリアで3日、総選挙が行われ、アンソニー・アルバニージー首相率いる与党・労働党が勝利して、政権を維持する見通しとなった。野党・保守連合(自由党・国民党)にとっては厳しい審判が下った。米国のドナルド・トランプ大統領による通商政策など世界的な混乱が続く中、有権者は変化よりも安定を選んだ形だ。
今回のオーストラリアでの中道左派政権の続投は、カナダでもマーク・カーニー首相率いる自由党が勝利した流れに続くものとみられる。選挙区を失ったピーター・ダットン自由党党首の敗北は、カナダ保守党のピエール・ポワリエーブル党首の落選を想起させる。
オーストラリアはカナダと違って主権の脅威には直面していないものの、トランプ氏による世界規模での関税や政策の変更によって、オーストラリア人の米国への信頼は傷ついている。
直近の推計によれば、労働党は定数150の下院で少なくとも87議席を確保した。
アルバニージー氏は午後10時ごろ、シドニーの労働党の集会で、「世界が不確実性に直面するいま、国民は楽観と決意を選んだ」と語り、歓声を浴びた。
一方、首相就任を目指していたダットン氏は、20年以上守ってきたブリスベン郊外の地盤を失った。ダットン氏は、自由党が全国で痛みを味わっていると敗北を認め、「ここから立て直す」と述べた。
各国はアルバニージー氏へ祝意を寄せ、米国のルビオ国務長官は豪州を「価値ある同盟国」と称賛。英国のスターマー首相も「遠距離の友情こそ強固になり得る」と述べた。
選挙戦では、トランプ氏との関係構築の能力が争点の一つとなった。トランプ氏と電話会談できていないとの批判に対し、アルバニージー氏は過去に「温かい対話」を交わしたとし、トランプ氏を信頼しない理由はないと語った。

選挙戦での敗北を認めたたピーター・ダットン自由党党首/Pat Hoelscher/AP
ダットン氏は当初優勢とみられていた。だが、専門家によれば、政策の失敗や方針転換に加え、トランプ氏による国際秩序に対する破壊的なアプローチの影響も受けた。
アルバニージー政権はこの3年にわたり、中国との関係改善を進め、前政権で課された関税撤廃を実現。太平洋島嶼(とうしょ)国との関係修復にも成果を上げた。国内ではインフレ下の生活費高騰対策が不十分との批判も受けるが、アルバニージー氏は今後、減税や医薬品の値下げ、初めて住宅を購入する人への財政面での支援、住宅危機緩和のための住宅建設などを進めると約束している。