クリミアを捨てるロシア人観光客、人気行楽地に迫る戦争

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ウクライナ軍の無人艇、クリミア橋攻撃の瞬間

(CNN) クリミア半島で休暇を過ごすロシア人観光客はこの9年あまり、自国がウクライナに戦争を仕掛けていることをさほど意識せずに済んだ。日光浴用の折り畳みベッドを置いている場所が占領地だということも――。

しかし、ウクライナの反転攻勢が進行する中、もはやクリミア半島は2014年のロシア併合以降に観光客が慣れ親しんできた安全地帯ではなくなっている。

最近のクリミア半島は相次ぐ攻撃にさらされており、8月24日にはウクライナ特殊部隊による海からの急襲、25日にはドローン(無人機)攻撃を受けた。クリミアとロシア本土やウクライナ南部をつなぐ複数の橋もここ数カ月、繰り返し攻撃を受けている。

ウクライナはこのうち一部については関与を認めており、レズニコウ国防相はさらなる攻撃を続けると警告した。

相次ぐ攻撃を受け、ロシア人観光客は予定の見直しを迫られている。クリミアの旅行代理店で管理職を務めた経験があるロシア人女性、スビトラーナさんはCNNに対し、治安情勢が原因で仕事が枯渇したと語った。

スビトラーナさんは欧米メディアの取材に応じた影響が及ぶのを恐れ、名字を伏せるよう求めた。今年初夏にクリミアを離れ、ロシアのサンクトペテルブルクに引っ越したという。

「先日クリミアを再訪した。近いうちに全てが終わり、紛争終結に向けた合意が成立するとの期待からだった。だが、4カ月滞在してみて、すぐに終わることはなさそうだと気付いた」

「観光は完全に消滅した。昨年の時点で減っていた観光客は今年、完全に姿を消した。昨年は戦争開始に伴い予約をキャンセルする動きが広がったが、今年は予約さえもなかった」(スビトラーナさん)

クリミア経済は観光業が頼みの綱だ。そのためロシアが任命した地元当局は、相次ぐ攻撃にもかかわらず旅行客に来訪を促している。クリミアのリゾート観光省はこの夏、ロシア人観光客向けに新たな相談窓口を開設。ホテルと協力して、治安の問題で到着や出発が遅れる場合も、追加料金の支払いやキャンセルを行わずに済むよう対応している。

ツアー運営会社やホテルも観光客を誘致するため、大幅割引や無料サービスを打ち出している。ロシア旅行産業連合によると、今夏のクリミアのホテル価格は需要減から昨年比で3割下落した。

ただ、値引きの効果は出ていない。ロシアが据えた行政府によると、8月の平均予約率は40%にとどまり、ホテルの部屋の半数以上は夏を迎えても空室のままだった。

スビトラーナさんによると、それでもクリミアで休暇を過ごす人は低予算のプランを組み、野営したり格安ホテルや民宿に泊まったりしている。高級リゾートに滞在する余裕がある人は、他のより安全な行き先に向かっているという。

クリミアにいた時間は楽しめなかったと、スビトラーナさんは振り返る。「本当にうんざりした。ひっきりなしに上空を飛ぶ軍用機、街中に常時展開する軍隊、負傷者、おびえた目で逃げる貧しい人たち。軍の装備に押しつぶされそうになったことも2回ある」と語り、車が装甲兵員輸送車に衝突しかけた経験を振り返った。

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