ウクライナでの戦争、長期的結果を左右する重大局面に到達 西側当局者

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ロシア軍とウクライナ軍が戦うセベロドネツクから黒煙が上がる=9日/Aris Messinis/AFP/Getty Images

ロシア軍とウクライナ軍が戦うセベロドネツクから黒煙が上がる=9日/Aris Messinis/AFP/Getty Images

ソ連の兵器を好む傾向

米国当局者は、西側の武器は今も前線に送り込まれていると強調する。だが兵器不足を伝える地元の報道や、前線にいるウクライナ関係者からの苛立(いらだ)ち交じりの要請からは、果たして供給ラインが効果的に機能しているのかという疑問がわき上がる。ウクライナは重砲だけでなく、弾薬などの基本的な物資さえも求めている。

情報筋によると、ウクライナでは既存の装備に適合する旧ソ連の弾薬が底をついても、兵士をNATO規格の西側の装備へと移行させるのに障壁が存在するという。第一に、こうした装備の訓練は時間を要し、戦場から必要な兵士を奪う形になる。

米国の諜報に詳しい情報筋によると、ウクライナは不慣れな西側装備をあえて使用しないというケースもあるという。例えば、数百台のスイッチブレード・ドローンが供与されているものの、一部の部隊は使い勝手のよい民間ドローンに爆発物を搭載して使用することを選んでいる。

今月に入ってバイデン政権は新たな軍事支援を発表した。それにはウクライナが何週間も前から要請していた、大量のロケット弾やミサイルを撃ち込むことができる高機動ロケット砲システム(HIMARS)も含まれている。軍事支援発表の直後から少数のウクライナ兵が訓練を始めたものの、訓練終了までに3週間かかるため、いまだ戦闘では使用されていない。国防総省の高官も、装備が「まもなく」ウクライナで使用されるだろうと言うばかりだ。

一方で、世界各地に現存し、ウクライナに供与できるソ連時代の弾薬は数が限られている。米国は古い備蓄のある国々にウクライナに渡せる物資を把握するように要請しているが、容赦ない砲弾戦で「ソ連製の弾薬が地球上から一掃されつつある」と米国関係者は言う。

米国は戦場でのロシアの損失を明確に把握しているものの、ウクライナの戦闘力の評価には始めから苦労してきた。関係者も認めているように、西側の武器が国境を越えてウクライナ側に渡ったあと、どこへ流れて、どの程度効果的に使われているのか、米国もはっきり把握できていない――それにより、情報機関が戦況を正確に予測することは困難で、ウクライナへの再供給のタイミングや方法に関する政策決定もややこしくなっている。

バイデン政権の高官は、ウクライナで弾薬や武器が不足しているのかとの質問に対して、米国が「(ウクライナの)消費率や作戦のペースの把握」に努めていると答えつつ、「知るのは難しい」とも語った。ただ、米国や西側諸国より提供された大砲をウクライナが多用しているのは明らかで、修理のためにそれらの多くが国境を出入りしている。

こうした盲点が存在する理由のひとつは、ウクライナが西側に全容を明らかにしていないからだと西側関係者は言う。戦闘は比較的ロシアに近い、非常に狭いエリアに集中しているため、他の地域と比べて西側の情報機関からは状況が見えにくい。

「戦術レベル、特に戦闘の大半が起きている場所での戦術レベルについて言えば、我々の側からはるか遠く離れたロシアに近い場所で、双方が非常に接近した、密度の濃い状況になっている」とNATO関係者は語る。「東部の戦闘状況を事細かに把握するのは困難だ」

そして、この重要な局面でのウクライナ軍のパフォーマンスも予想しがたいとNATO関係者は付け加える。死傷者の数が増える中、急きょ訓練した民間志願兵が戦場に送られているためだ。こうした兵士の戦闘でのパフォーマンスは未知数だ。

「人員確保も大事だが、果たして彼らに戦う準備はできているのか。それも(状況を左右する)要因の一つになるだろう」(NATO関係者)

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