感染拡大でも規制緩和を模索、韓国やオーストラリアでコロナ撲滅戦略放棄の動き
韓国・ソウル(CNN) 新型コロナウイルスのデルタ変異株が猛威を振るう中、韓国などアジア太平洋の各国で、コロナ撲滅の戦略を放棄して規制緩和を模索する動きが相次いでいる。
韓国は、同国で最大規模となった4度目の感染拡大を抑え込もうとしている。韓国疾病予防管理庁(KDCA)によると、過去24時間で報告された新規の国内感染は2100件を超えた。
ソウル首都圏は最も厳しい「レベル4」の規制がかけられ、5人以上の人が集まることが禁止されている。当局は、今月17日から始まる秋夕(中秋節)の連休で状況が悪化しかねないとして危機感を強める。
しかし症例数が最近になって増加したにもかかわらず、文在寅(ムンジェイン)大統領府は8日、国民のワクチン接種が進めば規制を解除する可能性があると発表した。
大統領府はKDCAの鄭銀敬(チョンウンギョン)長官の話として、成人の80%、および60歳以上の人の90%が2回のワクチン接種を済ませれば、全土で日常生活の規制を緩和できる可能性があるとした。
韓国保健省の当局者は、現在の接種率から判断すると、10月下旬には目標を達成できる可能性があるとの見方を示した。7日現在、成人の約71%が1回目の接種を、約42.6%が2回目の接種を済ませている。
パンデミック(世界的大流行)が始まって以来、韓国で確認された新型コロナウイルスの症例数は26万7470例、死者は2343人となった。
シンガポールやオーストラリアも、感染撲滅に重点を置くことをやめ、入院や死亡を抑えるために成人のワクチン接種率を増やす計画を発表している。
ただ、シンガポールは世界で最もワクチン接種率が高い国の1つであるにもかかわらず、規制解除後に症例数を低く抑えることが難しい状況にある。シンガポールでコロナ対策を担うローレンス・ウォン氏は6日、重症者数が増え続けた場合、再び規制を導入しなければならなくなるかもしれないと警告した。
オーストラリアのニューサウスウェールズ(NSW)州は9日、脱ロックダウン(都市封鎖)に向けた計画を発表した。州都シドニーで報告された新規の感染数は1405例に上り、同国の1日の数字としてはパンデミックが始まって以来、最多だった。
シドニーなどNSW州の大部分は、感染力の強いデルタ変異株の流行を受けて6月下旬からロックダウンに入っている。ビクトリア州メルボルンや首都キャンベラでも感染の拡大を抑え込むため、何百万もの市民が長期のロックダウンに耐えてきた。
NSW州のグラディス・ベレジクリアン首相は9日、成人の70%が接種を完了すれば、2回の接種を受けた市民は自宅待機命令に従う必要がなくなると語った。
NSW州ではこれまでに、成人の42.7%が2回目のワクチン接種を受けている。ベレジクリアン州首相は、目標の70%にいつ到達できるかについては明言を避けながら、「その次の月曜」には規制が解除されるとの見通しを示した。
オーストラリア連邦政府は各州に対し、ワクチン接種率70%の目標に達した時点で経済活動を再開するよう促している。8日にはダン・テハン貿易相が、早ければ来月にも国際ワクチンパスポートの開発を始めると発表した。