親中国のネット工作活動、新型コロナによる米国の分断利用 報告書
ワシントン(CNN) 中国政府にくみするネット上の影響力行使の活動が米国人を標的に定め、新型コロナウイルス感染症の流行による分断を利用し、米国内で物理的な抗議活動を動員しようとしている。米情報セキュリティー企業マンディアントと米検索大手グーグルの専門家による最新の報告書がそんな警鐘を鳴らしている。
両社の専門家らによると、工作活動は当初、2019年に香港で展開された民主派の抗議活動をおとしめることを企図していた。その後、「7つの言語と少なくとも30種類のソーシャルメディアプラットフォーム、および40以上のウェブサイトおよび掲示板で展開される世界規模の作戦」に拡大。ロシアが16年の米大統領選の前後に展開した偽情報による工作活動と類似していると指摘されている。
事情に詳しいある情報筋によると、米当局者らは、この工作活動が中国政府と関連していると考えており、作戦の展開を監視しているという。20年の米大統領選の最中には米当局者が、偽情報を拡散するために工作活動が用いられているかどうか監視していた。だが最終的に、中国政府は報復を招きたくなかったため、そうした動きを避けたと推測されている。
マンディアント・スリート・インテリジェンスのジョン・ハルキスト副社長はCNNの取材に対し、その数カ月後に専門家らが、世界各地で「活動が爆発的に拡大」するのを観測したと説明。また米国内で物理的な抗議活動を発生させようとする動きにより、工作者らが非常に深刻な脅威であることが実証されたと指摘した。
報告書は、「物理的な動員への直接的な呼びかけが、これまでの活動に比べて重大な進展をみせている。中国の領土外における現実世界での活動を誘導する意図が生まれていることを示唆している可能性がある」と説明。「この企てはいかなる成功も収めていないようだが、このネットワークによって有機的な関わりが後にさらなる程度で実体化する場合に備え、そうした企てを専門家らが監視し続けることが決定的に重要と我々は考えている」とした。
実例として今年4月、アジア系米国人に対して、米国内における人種をめぐる不正義や「ウイルスの起源に関する偽情報」に抗議するよう数千件のフェイクアカウントで呼び掛けられたことを、専門家らは目にしていた。こうした投稿が抗議活動の動員に成功した証拠を専門家らは見つけていないものの、「こうした活動の背後にいる行為者は、どんなに限定されたやり方であれ、米国内の事象に影響を与える直接的な手段を模索し始めた可能性があると、この件は警鐘を鳴らしている」と、報告書は指摘している。
グーグルの脅威分析グループのディレクターを務めるシェーン・ハントレー氏は、「過去2年以上にわたり、我々はこうした脅威の行為者が、彼らの公開する各種のコンテンツから、脅威を増幅させるために用いる戦術まで、進化していくのを目にしてきた」と説明。「だが、このネットワークの最も重要な特徴は、依然としてその規模と持続性であり続けている。関与のレベルが低いにもかかわらずだ。それゆえ私たちは、このネットワークから発信される偽情報を特定・削除する積極的アプローチ策を取っている」と述べた。
さらに同氏は、「行為者らが関与を強めていく実験を継続していくと我々は予測する。コミュニティー内の人々に呼び掛けて引き続き行為者を追跡させ、工作活動に光を当て、工作者らに対抗する行動を取るよう促していく」と話した。