OPINION

新型コロナ封じ込め、独裁は民主主義にまさるのか

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米国での感染初期にトランプ氏が見せた楽観姿勢には、厳しい批判の声も上がった/Evan Vucci/AP

米国での感染初期にトランプ氏が見せた楽観姿勢には、厳しい批判の声も上がった/Evan Vucci/AP

答えは単純にノーである。専制政治が厳格な措置を多くの国民に対してより容易に課すことができるのは間違いないが、開かれた社会の方が疫病の蔓延(まんえん)を予防しやすいということもまた否定し得ない事実だからだ。

武漢における初期の感染拡大の規模を隠蔽(いんぺい)することで、中国はその抑圧的な政策を実行に移す。実際この措置によって、新型コロナウイルスは1つの都市に根を張り、続いて省全体に定着した。そこからものすごい速さで感染を広げ、今や地球上のほぼすべての国で猛威を振るうまでになっている。すでに詳細が報じられた通り、中国の研究者らは武漢で未知の病原菌に感染した患者がいると警告を発していた。しかし当局はこれらの研究者を拘束し、非難を浴びせ、その口を封じたのだった。

中国の独立系メディアによると、新たなウイルスの存在を確認した研究所に対しては「検査を停止してサンプルを破棄し、情報を隠蔽するよう」命令が下ったという。一般に流れる情報は前向きな内容でなくてはならず、いかなるものであれ体制のイメージを損なう可能性のある情報は受け入れられないのだ。医師の李文亮氏は関連する情報を拡散しようとしたところ、うわさをまき散らしたとして拘束され、当該のウイルスによる感染症にかかって先月死亡した。

一方、米国でも、新型コロナ対策におけるもっとも重大な失策のいくつかが、文字通り独裁主義的な衝動の結果として生じたのは偶然ではない。そこでは事実の封殺や情報の操作が行われていた。トランプ大統領が数カ月を費やし、米国民に対して心配いらないと言い続けていた時、同氏はウイルスが国民の間に自由に広まるのをほとんど黙認していたも同然だった。それが危機をより深刻なものにしたのだ。天然痘の根絶に貢献した疫学者のラリー・ブリリアント氏は、トランプ氏の虚偽の発言について「選挙で選ばれた役職者のものとしては、これまでの人生で目にした中で最も無責任な振る舞い」と批判した。

つまり、民主主義の下ではパンデミックが防げないということなのだろうか? もちろんそうではない。民主主義には有能で信頼できる指導者が必要だという話だ。

とはいえ、ひとたびパンデミックが起これば、独裁者の方が容易に厳格な対策を施行できるのは事実だ。今回の危機を認識した中国は、高圧的なキャンペーンを立ち上げて隔離や移動制限を行った。一部の住民は隔離センターへの収容を強いられたほか、当局による威圧的な対応に関する報道もあった。

こうした手法は功を奏したようだ。中国政府によれば国内での新たな感染者は現時点でごくわずかな人数にまで減少した。

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