大使館にこもって7年、記者が語るアサンジ容疑者の「変貌」

7年を過ごしたエクアドル大使館から連行されるアサンジ容疑者/Jack Taylor/Getty Images

7年を過ごしたエクアドル大使館から連行されるアサンジ容疑者/Jack Taylor/Getty Images

(CNN) 内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者、ジュリアン・アサンジ容疑者がロンドンで逮捕された。多くの人と同様、記者が逮捕時の動画を最初に目にしたのはツイッターを通じてだった。

衝撃を受けたのは、すっかり年を取ったその風貌(ふうぼう)だ。長身を警察官に折り曲げられるようにして、7年間滞在したエクアドル大使館から引きずり出されていく。打ちひしがれ、進退きわまったようなその表情は、かつて見られた自信や大胆さ――そしてしばしば感じさせた抜け目のなさ――とは程遠い。記者の知る活動家の姿はそこにはなかった。

ただ外見はともかく、一筋縄ではいかない本人の性格は今も変わらないのではないだろうか。記者はそれを2010年に行ったインタビューで目の当たりにした。スウェーデンでの性的暴行疑惑について質問した際、アサンジ容疑者は不快感をあらわにし、ピンマイクを外して立ち去ってしまったのだ。

記者が最後にアサンジ容疑者と会ったのは、同容疑者がエクアドル大使館への亡命を申請してすぐのころだった。健康に問題はなく、先の見通しについても楽観的だった同容疑者は、大使館内から引き続きウィキリークスを運営できると考えていた。まさかこれほど長期にわたり大使館に滞在することになるとは思っていなかっただろう。

大使館内の同容疑者の部屋には窓がなく、照明器具を使用して自然光の代わりにしていた。最初の数週間はシャワーさえ用意されていない状態が続いた。本人曰く、宇宙船の中で暮らしているようなものだったという。

同容疑者の健康や孤独を心配した友人らは、運動器具を購入して送ったり、子猫をプレゼントしたりした。パメラ・アンダーソンさんやレディー・ガガさんのような有名人が訪問して大きな話題になることもあったが、大使館の外では警察が24時間体制で監視する状況が続いた。それが容疑者本人の心身にどれほどの苦痛をもたらしたかは察するに余りある。

大使館の建物は小さく、いくつかの部屋と机程度の設備しかない。世間に名を知られた亡命申請者が長期にわたって避難できるようにはつくられていない。アサンジ容疑者が大使館側に敵意を募らせ、破壊的な行為に及んだとする報道もあったが、それがどの程度のものだったのかは伝わってこなかった。エクアドル政府は今、「大使館の壁に排せつ物をこすりつけた」と主張している。いずれにしても、このような受け入れがたい状況が7年近くも継続したというのは驚くべきことだ。

アサンジ容疑者の逮捕に際して、エクアドルのモレノ大統領は同国の決定について声明を発表。「アサンジ氏の無礼で攻撃的な振る舞い、彼の仲間の組織のエクアドルに対する敵対的で脅迫的な宣言、そして特に国際条約の違反がアサンジ氏の亡命を維持できない状況へと導いた」と説明した。

また、アサンジ容疑者自身にもこの決定を招く要因があったと言及。許可されていない電子機器などを設置し、防犯カメラも遮るなどの行為で「エクアドルの我慢は限界に達していた」とも述べた。

記者がアサンジ容疑者に大使館での籠城を選んだ理由を尋ねるといつも返ってきた答えは、最初の逮捕状が発布されたスウェーデンでの性的暴行容疑は心配していないという内容だった。公訴期限が過ぎ、スウェーデンの検察官が最後に大使館でアサンジ容疑者に質問する機会を得た後、捜査は中止された。

同容疑者が懸念していたのは、スパイ容疑での米国への強制送還だった。有罪となった場合の最高刑は終身刑となる。スウェーデンの捜査は「ハニートラップ」だと見ていた。

思い出して欲しい。アサンジ容疑者とウィキリークスは、告発者のチェルシー・マニング元陸軍2等兵から提供された何万件という秘密文書を公開してきた。それは民主党全国委員会の電子メール漏洩やロシア疑惑、トランプ大統領の「ウィキリークス大好き」発言よりも前の話だ。そしてこれらの文書を単独では公開せず、ニューヨーク・タイムズやガーディアン、シュピーゲルと文書の精査や公開で協力してきた。

これは前例のない出来事であり、今日のウィキリークスを作ったと言える。アサンジ容疑者は米国政府が自分を追及し、大陪審が秘密裏に起訴してくると確信していた。

そして、それは少なくとも部分的には、正しい判断だったように見える。

米国政府はアサンジ容疑者に対する訴追を進めているが、それはスパイ容疑ではなかった。司法省が開示した昨年3月の訴追内容はコンピューターへの不正侵入の共謀だった。マニング2等兵がパスワード保護をすり抜け政府の秘密文書にアクセスできるように支援した疑いだ。最大で5年の禁錮刑が科される可能性がある。

アサンジ容疑者はいつも、もし米国政府が彼を訴追してくるなら、それはドミノ倒しのようにニューヨーク・タイムズやガーディアンなど公共の利益のために告発者と協力したジャーナリストらの訴追へとつながると主張してきた。そして今後、彼の法律チームは間違いなくその点を主張してくるだろう。

ロンドンのウェストミンスター治安裁判所の審問で、裁判官はアサンジ容疑者を「私欲から抜け出せないナルシスト」であり、保釈の条件に違反したと述べた。

アサンジ容疑者がナルシストと呼ばれたことに対してどんな思いを抱いているかはわからない。ただ確かなのは、私が会った当時の彼は自分を高く評価し、目的のためなら手段を選ばず、抜け目なく世の中を動かそうとする人物だった。

だが、これはあなたがアサンジ容疑者を好きになれるかどうかの問題ではない。彼に対する訴追は、告発者が秘密情報を入手し公開することへの教唆や共謀に関するものだ。これは我々全員、そして我々の情報へのアクセスに影響を与える法廷闘争になる。今起きていることは全て、今後何年も続く先例となる。

本記事はCNNのアティカ・シューベルト上級国際特派員によるものです。

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