OPINION

不人気とされるバイデン氏、それでも民主党から有力な対抗馬が現れない理由

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北アイルランドへ向かう前、アンドルーズ空軍基地で記者団の質問に答えるバイデン氏/Jim Watson/AFP/Getty Images

北アイルランドへ向かう前、アンドルーズ空軍基地で記者団の質問に答えるバイデン氏/Jim Watson/AFP/Getty Images

(CNN) 米国のバイデン大統領は先々週、アイルランドで人気の的だった。英雄として歓迎を受け、大々的に演出された祖先の土地への帰還を果たした。

一方、米国では問題を抱える。本人の職務能力への支持率が40%台前半というのは、普通に考えれば危険信号だ。誰であれ現職の大統領が再選に向けた活動を始めようとする上で、安心できる状況ではない。さらなる不安材料は、極めて重要な無党派層の間での支持率に表れている。世論調査にもよるが、現状は20%台半ばから30%台半ばといった水準にとどまる。

週内にも再選出馬を正式表明するとみられているバイデン氏には、そうするだけの相当な実績がある。それでも経済や本人の年齢及び能力についての不安は根強く、事態は行き詰まっている。仮に大統領選に勝てば、2期目の就任式は歴代大統領で最高齢の82歳で迎えることになる。

民主党支持者の間でさえ、バイデン氏にまつわる調査は明確さを欠く。10人中8人はその仕事ぶりを評価するものの、再選出馬を望む声は全体の半分に満たない。同氏を民主党で最強の候補者とみなす回答はわずか44%だ(それでも過去数週間で改善した上での数字となっている)。

とはいえ、エメラルドの島(アイルランドの異名)から戻った時点で、バイデン氏が民主党の候補者指名を獲得するのはほぼ確実だった。予備選で有力な対抗馬になる存在が皆無だからだ。2人の候補者が名乗りを上げてはいたがそのうちの1人、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は、神聖な家系を受け継ぐ身でありながら誤解に基づく無責任な反ワクチン理論でそれを汚している。もう1人は作家でスピリチュアルの教えを説くマリアン・ウィリアムソン氏だが、進歩派の活動家でもある同氏は2020年の大統領選に出馬して大敗した。両者とも、手ごたえのある競争相手になるとは考えにくい。また大統領の側での不手際や健康不安、独立系の富豪による出馬の意向といった予期せぬ事態を別にすれば、今後そのような相手が現れる気配もない。

では予備選での実質的な挑戦者不在は、単純に当人の幸運によるものなのか?

大部分において、答えはノーだ。

まず、そもそも現職は圧倒的に有利なため、他の候補者は対抗する気をそがれている。大統領は全国規模で政治資金を調達できるネットワークの他、最高の権力とプラットフォーム、その職務にまつわる象徴を手にしている。また自身の党組織を支配下に置いてもいる。

苦境にある大統領に対してすら、有力な対抗馬が現れるのは稀(まれ)だ。パット・ブキャナン氏は右派のポピュリストとして1992年にジョージ・W・H・ブッシュ氏に挑んだが、目標を果たせなかった。(結果的にブッシュ氏再選の見通しに悪影響を及ぼすことにはなったが)。マサチューセッツ州の上院議員だったテッド・ケネディー氏も直近で現れた強力な対立候補であり、実際80年の大統領選ではジミー・カーター氏の再選出馬にとって脅威となったものの、最終的には勝利に届かなかった。

恐らく予備選での戦いを視野に入れる中、バイデン氏はかねて党内の進歩派の歓心を買うことに余念がない。民主党の予備選での難関は、概してこの層から出現する。同氏の際立った内政上の実績であるインフレ抑制法には、進歩派にとって重要かつ積年の目標が複数含まれていた。歴史的な気候変動対策のパッケージや、長く求められてきたメディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険)に力を与える施策がそれだ。これによりメディケアは市場での影響力を大幅に向上させ、製薬会社と薬価引き下げのための交渉を行えるようになった。また高齢者向けのインスリンには月額35ドルの上限を設定。医療保険制度改革法の強化と拡充に向けた複数の措置も盛り込んだ。

バイデン氏が署名した巨額のインフラ法案は組合労働者を喜ばせた。超党派での本格的な銃規制法も数十年ぶりに成立。同性間や異人種間の結婚を連邦法の下で保護する婚姻尊重法も成立させた。

人工妊娠中絶や銃規制といった問題で共和党が自分たちの意見に固執したことも、バイデン氏には追い風となった。こうした状況は民主党の支持層を結集させるのに寄与した。

第二に、組織的な方法でバイデン氏は戦いの舞台を一変させ、挑戦者が割って入りづらい状況に持ち込んだ。民主党全国委員会(DNC)における同氏の支持者らは、本人の勧めに従い防御壁を設置した。つまり投票によって2024年初めの党予備選のカレンダーを変更。同氏が楽に勝てるとみられる州を優先する形に変えた。

かくして正式なカレンダーから完全に追いやられた形となったのがアイオワ州の党員集会だ。従来はそこから選挙戦が始まるが、バイデン氏の20年予備選における同州での成績は4位と、厳しい結果に終わっていた。そこで今回の日程では、サウスカロライナ州を最初の舞台に設定。ここはバイデン氏の地盤で、前回は黒人と中道派の白人有権者により、低迷する選挙戦の巻き返しに成功していた。同州での勝利を契機に、大統領就任へ一気に弾みがついた格好だ。

20年に5位と惨敗を喫したニューハンプシャー州は、予備選のカレンダーの2日目に予定されているが、この日はネバダ州でも予備選がある。同州でのバイデン氏は比較的優位に立つとみられる。DNCの計画では、やはりバイデン氏にとって有利なミシガン州とジョージア州がこれに続く。しかしながら、こうした日程変更の全てが確定したわけではない。(アイオワ州の党員集会を別にすれば)長年全米の予備選の口火を切る州とされてきたニューハンプシャー州は、DNCの意向を無視して24年の日程を前倒しにし、伝統あるその地位を守ろうとしている。ジョージア州の共和党も、予備選実施を早める日程変更を阻止する可能性がある。

最後に、トランプ前大統領の存在だ。同氏の出馬は、民主党の中でバイデン氏を勢いづかせる効果をもたらしている。

法律上のトラブルが山積しながら、トランプ氏は自身の執念深い支持基盤に支えられ、24年の共和党の指名獲得レースでトップを走り続けている。多くの民主党員にとって、不祥事が多く起訴までされた前大統領は簡単に打ち負かせる相手に見えるが、彼らは既にこの道をたどってきている。大統領への返り咲きまであと一歩のところに迫ったトランプ氏の不気味さは、恐怖の対象であると同時に民主党を一つにまとめる役割も果たす。

バイデン氏の支持者らの主張はこうだ。事態の重要性を考えれば、民主党には予備選で対立したり新参者に指名を獲得させたりする余裕はない。従って、バイデン氏が今後どれだけ持ちこたえられるのかについて懸念はあるものの、また一部進歩派の間で長く不安の声が上がってはいるものの、民主党の同胞は一つにまとまり、高齢ながらも実績の保証された自分たちのリーダーを支えていく公算が大きい。再度トランプ氏を止めるための最善の策として。

本人の年齢と体力を巡る疑念は、大統領選で成功を収め、トランプ氏をホワイトハウスから退けた4年前から取り沙汰されていた。それに耐え抜いたバイデン氏は新たな選挙戦に臨むに当たり、別の著名なアイルランド系米国人の政治家の知恵に依拠している。

その政治家とは、ボストン市長を務めた故ケビン・ホワイト氏だ。同氏はバイデン氏も好んで引用する以下の言葉を残している。「私を全能の神と比較しないように。私と並ぶ別の選択肢と比較するように」

デービッド・アクセルロッド氏はCNNの政治担当シニアコメンテーターで、「The Axe Files」の番組司会者。オバマ政権時代の大統領顧問であり、08年と12年の大統領選ではオバマ陣営のチーフストラテジストを務めた。記事の内容は同氏個人の見解です。

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