ANALYSIS

荒れる南シナ海、米海軍は問題続きの「沿海域戦闘艦」に白羽の矢<上>

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南シナ海での定期航行中にパナマの掘削船の近くを通過/Petty Officer 2nd Class Brenton US Navy

南シナ海での定期航行中にパナマの掘削船の近くを通過/Petty Officer 2nd Class Brenton US Navy

LCSの1隻あたりのコストは約3億6000万ドル(約400億円)。全長118.1メートルのフリーダム級と128.5メートルのインディペンデンス級の2種類があり、いずれも40ノット(時速約74キロ)を超えるスピードを出せる。

LCSをより手ごわい存在にするため、海軍は太平洋を拠点とする艦の火力を増強し、「ネイバル・ストライク・ミサイル(NSM)」を搭載した。海面すれすれを飛ぶ巡航ミサイルのNSMはレーダーによる探知が難しく、敵の防衛網をかいくぐる機動ができる。

LCSの当初の設計に火力が追加されたことで、太平洋において理想的な艦船になったと、マーツ氏は指摘する。

米海軍協会ニュースが報じた中国政府の20年の調査文書によると、中国軍はこの改修を見逃していない。

中国船舶設計研究所(MARIC)がまとめた同文書ではLCSについて、「低価格や高速性能などの特徴により、将来の武器分散戦術において強力な道具となる可能性がある」としている。

「武器分散」とは、空母打撃群のように火力を1カ所に投入するのではなく、多数の散らばった部隊に分散させることを意味する。

ただ、専門家からは、中国人民解放軍(PLA)海軍との紛争でLCSに何ができるのか疑問視する声も上がる。中国海軍はここ1年で米海軍を抜いて世界最大の海軍となり、急速な近代化により能力面においても恐らくほぼ同等になった。

元米海軍大佐で今はハワイ太平洋大学の教官を務めるカール・シュスター氏は、LCSは「戦闘でPLA海軍と対峙(たいじ)した場合、長くは持ちこたえられないだろう。LCSはそうした環境を念頭に建造されたわけではなく、ミサイルが飛来する状況ではスピードも役に立たない」との見方を示す。

パシフィック・フォーラムの非滞在型フェロー、ブレイク・ハージンガー氏は、マーツ氏はLCSの対中国の有効性を過大評価しているのではないかと指摘した。

「世界最大の海軍が搭載ミサイル8発の沿海域戦闘艦を恐れるだろうか。私にはそれは分からない」(ヘルジンガー氏)

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