世界で最も持続可能なスキーリゾート10選
(CNN) すがすがしい山の空気を吸い込み、自然なままの山頂を見渡すだけで、スキー休暇の魂を揺さぶるような楽しさがよみがえる。
しかし、スキーを楽しむためのさまざまなインフラは、すでに地球温暖化の厳しい圧力にさらされている自然環境の犠牲の下に運営されている。
多くのスキーリゾートは、リゾートの存続に関わる気候危機の脅威を認識しており、大半のリゾートが、より持続可能な未来を願い、環境への影響の軽減に取り組んでいる。
今回は、環境保護に積極的なスキーヤーたちに最適なスキーリゾートをいくつかご紹介する。
バルディゼール、フランス
39台ある圧雪車の燃料には、100%再生可能な水素化植物油(HVO)を使用/Andy Parant/Val d'Isère Tourism
フランスを代表するスキーリゾート、バルディゼールは最近、省エネルギー、リサイクル、地域のイニシアチブなど、20の持続可能な開発のベストプラクティス(最良の事例)が認められ、隣接するティーニュとともに、権威あるフロコン・ヴェール(緑の雪の結晶)のラベルを獲得した。
同リゾートのリフトは2012年から100%グリーンエネルギーで運営されており、オリンピック用のケーブルカーステーションのファサード(正面部分)や屋根に設置されたソーラーパネルからも電力が供給されている。
また同リゾートに39台ある圧雪車の燃料は、廃脂肪や使用済み植物油から作られた水素化植物油(HVO)を使用しており、これにより二酸化炭素(CO2)排出量を90%削減している。
同リゾートは30年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」を目指しており、町を走るバスの燃料をディーゼルからGTL(天然ガスの液体燃料化)燃料に変更し、さらに25年までに電気バスの台数を15台に増やす目標を掲げている。
ツェルマット、スイス
町を走る電気バスは10台。定員は30~80人/Einwohnergemeinde Zermatt
マッターホルンのふもとに位置する歴史的なスキーリゾート、ツェルマットは、長い間ガソリン車の乗り入れを禁止しているが、町の中心部まで電車で行くことができ、チューリッヒやジュネーブの空港に向かう鉄道もある。
町で走行が可能なのは小型の電気バスのみで、圧雪車の燃料も一酸化炭素排出量が11%少ない、硫黄を含まないディーゼル燃料を使用している。
また新しい3Sロープウェーのステーションに設置されたソーラーパネルの発電量は約35世帯の電気使用量に相当し、年間23.4トンものCO2を削減する。
標高3883メートルにある展望台、マッターホルン・グレッシャー・パラダイスの建物に設置された太陽光発電システムは、その建物の年間の暖房、照明、換気に必要なエネルギーを生み出している。
レッヒとツルス、オーストリア
長年、王族やスターたちに愛されてきた高級リゾート、レッヒは、オーストリア最大のスキーエリア、アールベルクの中心に位置する。
この地域の家庭や企業の98%は、地元のウッドチップを使用する有名な再生可能バイオマス暖房システムを利用している。
またレッヒとツルスのスキーリフト、山のレストラン、造雪施設は、100%オーストリアの水力発電で稼働しており、さらに太陽光発電、ソーラー、エネルギー回収システムによって補充されている。
レッヒから少し高い場所にあるオーバーレッヒには独創的なトンネルがあり、その中を走る電気自動車でホテルやシャレーから荷物、物資、廃棄物を運ぶため、町には車両の通行が一切ない。
ラークス、スイス
2008年以来、スイスの水力発電所から電気を調達しているラークス/Adobe Stock
スイスで2番目に大きなスキー場であるラークスは、必要なエネルギーをすべて気候にやさしい地元の供給源から調達し、エネルギーを自給自足できる初のアルプスリゾートになるという大きな野心を抱いている。
同リゾートは、08年以来、スイスの水力発電所から電気を調達しているが、再生可能エネルギーは、ラークス、フリムス、ファレラ、トリン、サゴクンにまたがる広大な地域の電力需要のわずか4分の1しか生み出せず、残りの4分の3は、気候に悪影響を与える暖房と輸送用の可燃燃料が占めている。
そこで地元の住民で環境に関するビジョンを持つレト・フライ氏は、地元の風力、太陽光、水力、バイオマスの可能性を最大化することにより、電気の消費者から供給者に移行したいと考えている。
具体的には、持続可能な材料の使用、ソーラーパネルの追加、石油ベースの暖房からの脱却により、既存の建物の改修や脱炭素化を行ったり、電気を使った移動手段の促進やエネルギー効率の高いオンデマンドのスキーリフトの導入などを計画しているという。
ピュハ、フィンランド
ピュハは2008年以来、炭素排出量を90%削減した/Pyhä Ski Resort
フィンランド・ラップランド地方の中心に位置する小さなスキーリゾート、ピュハは、11年にカーボンニュートラルを達成した。
リフト、スノーメーキング、ゲレンデの照明用の電力を水力と風力に切り替え、さらに建物の暖房用にバイオ燃料と地熱を利用することにより、08年以来、炭素排出量を90%削減した。
また21年には圧雪車の燃料に再生可能なバイオディーゼルを導入し、温室効果ガスの年間排出量をガソリン車230台分に相当する600トンの削減に成功したという。
ジャクソンホール、米国
2019年にリフト、施設等の動力を100%グリーンエネルギーに切り替えたジャクソンホール・マウンテンリゾート/Jackson Hole Mountain Resort
米国有数のスキーリゾートであるジャクソンホール・マウンテンリゾートは、19年にリフト、施設、ベースの運営の動力を100%グリーンエネルギーに切り替えた。現在、電力は隣接するアイダホ州のホースビュート風力発電所とワイオミング州の2つの水力発電所から供給されている。
また同リゾートのスキー場は、環境のベストプラクティスを確保するために、材料を含め、すべての開発を見直すと公約している。
さらにリゾートの運営者は、カーボンフットプリントを減らすためのさらなる取り組みとして、製品、設備、食品、商品の全体にわたって持続可能性を確保するために購入戦略の見直しを行っている。
ビッグスカイ、米国
ビッグスカイは2021年1月の時点で100%のカーボンフリーを実現したと主張/Adobe Stock
ビッグスカイは、モンタナ州のローンピークを中心とする巨大なスキーリゾートだ。
1973年にわずか4基のリフトでオープンしたこのリゾートは、エネルギー消費を相殺するためのカーボンクレジット(二酸化炭素の排出権)の購入により、2021年1月の時点で100%のカーボンフリー(温室効果ガスの排出量ゼロ)を実現したと主張している。
同リゾートを運営するボイン・リゾーツは、北米の4大リゾートオーナー企業の1社で、他の3社、アルテラ・マウンテン・カンパニー、ベイル・リゾーツ、POWDRとともに、再生可能エネルギーへの移行、廃棄物の削減、気候アドボカシーへの従事に取り組む共同気候憲章に合意した。また全米スキー場協会(NSAA)の「持続可能なゲレンデ」プログラムにも参加している。
ビッグスカイは、自ら取り組む「フォーエバープロジェクト」の一環として、30年までの完全なカーボンニュートラルの実現を目指している。
クーシュベル、フランス
リフトやスノーメーキングには100%グリーンエネルギーを使用/Thomas Coex/AFP/Getty Images
フランスの高級スキーリゾート、クーシュベルは、広大なトロワバレーの一端に位置する。
ゲレンデに空港がある点は環境保護の点でマイナスだが、リフトやスノーメーキングに100%グリーンエネルギーを使用するなど、他の分野で補っている。
丘の中腹にある多くの貯水池が必要な水を供給し、さらにスキー場には炭素を吸収する木が、1946年の開設当時よりも多く生えているという。
その他にも、機能の改善によって使用されなくなったリフトインフラを撤去したり、リサイクル可能なスキー板の開発など、地球を守るための先駆的プロジェクトに取り組む新興企業を毎年表彰する取り組みを行っている。
ウィスラー、カナダ
ウィスラーを所有するベイル・リゾーツは、2030年までにリゾート全体の「フットプリントの正味ゼロ」を公約/George Rose/Getty Images
カナダ最大のリゾート、ウィスラーは、これまでに持続可能性に関する数々の賞を受賞している。
ウィスラーとブラッコム山の間を流れるフィッツシモンズ川を使った水力発電プロジェクトは、冬季のリフト、営業施設、人工雪の製造に十分な電力を生み出している。
ウィスラーを所有するベイル・リゾーツは、2030年までにリゾート全体のエネルギーと廃棄物に関して「フットプリントの正味ゼロ」の達成を公約している。
アスペン、米国
アスペンの運営企業は、契約する電力会社に対し燃料の100%再生可能エネルギーへの切り替えを呼び掛けている/Jakob Helbig/Image Source/Getty Images
米コロラド州にある世界的に有名なスキーリゾート、アスペンは、同リゾートで4つのスキー場を運営するアスペン・スキーイング・カンパニーが契約する地元の電力会社に、発電の燃料を石炭から100%再生可能エネルギーに切り替えるよう説得するために15年に及ぶキャンペーンを行った。アスペンは30年までに実現したいとしている。
また炭鉱から発生するメタンを電気に変換するプラントに500万ドル以上を費やしたり、1991年には他社に先駆けて、建築物の環境性能評価システム(LEED)に基づくグリーンビルディング(環境に配慮した建築)のスキームを開発した。